雪の久万でまた野宿(31日目の3)

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久万高原の絡みつくような闇を抜けて古岩屋荘のフロントにたどり着いた時には「部屋は空いてますか」と言いそうになった。暖かい食べ物と暖かい布団で眠りたいと思っていた。なにがその欲望を押し止めたのか。というと、それは風呂に入れる、という交換条件だったのだろうと思っている。風呂にも入れない状態だと、宿泊という欲望に負けていたのかもしれない。というか、その欲を抑える意味もボクの旅にはなかったのだけれど。現に何泊かはホテルに泊まっていたのだから…。

18時にその古岩屋荘に着いて、そのまま入湯券を購入、2階の浴場に向かった。ちょうどこの日は「温泉祭り」で入湯料が200円だった。ホテルロビーに若い遍路がひとり座っていた。浴場の前がコインランドリーになっている。そこにも若い遍路がひとりいた。時間をそこで過ごして、その後古岩屋荘入り口にある休憩所にでも寝るのだろうと思った。そういったかしこい利用の仕方をする人がいる。ボクには出来ないのだけれど…。

温泉に浸かったあとに食堂に行った。ちょうど宿泊者の夕食の時間で、遍路と思われる人たちが4組、そこにいた。ボクはうどん定食を頼んだ。800円。食堂を出た。身体は綺麗になったのだけれど、その分、身に着けている物の汚れが気になった。まだ乾ききっていない汗がボクの自意識を繁殖させていた。ねぐらを探して出発した。19時10分。闇はさらに粘度を増して身体にまとわりついていた。山間の道は全くの暗闇だった。

国民宿舎岩屋荘のうどん定食
(国民宿舎古岩屋荘のうどん定食)

【公式】国民宿舎 古岩屋荘 / 久万高原町 四国八十八ヵ所霊場まんなかの宿

19時30分、嵯峨山のバス停に着く。四方壁、アルミサッシの窓と入り口だ。ここなら寒さをしのげると、来る時に見ていた。もしそこに先客がいたとしても、その先の久万高原ふるさと旅行村の入り口に休憩所があった。

ザックを下ろし、マットを出した。空気を入れて膨らませた。そしてそれを敷いた。線香を焚いた。それから寝袋を出してもぐり込んだ。寒い夜だった。何度か目が覚めた。まだ日付が変わっていなかった。そして何度か眠った。 そうして何度目かに起きた時に外を見ると、雪が降っていた。道路が白く光っていた。ボクはぼんやりとその風景を見ながら、また眠ろうとした。眠らなければと思っていた。それだけを考えた。眠ろうと。

積もった雪の上に足あとと杖のあと
(久万高原、雪、足の跡と杖の跡)

この日の行程:バス停(喜多郡内子町大瀬中央あたり)~バス停(久万高原町下畑野川あたり)

この日の札所:44番札所大宝寺、45番札所岩屋寺

この日の宿泊:バス停

この日の出費:1,968円(納経代、お賽銭別)

・松山生協久万高原店
ファイバーレーズン 100円
おにぎり弁当 298円
田舎巻き(巻き寿司) 350円
(小計 728円)

・国民宿舎古岩屋荘
入湯料 200円
うどん定食 800円
(小計 1,000円)

・自動販売機
缶コーヒー、紅茶 240円

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