同宿あり(26日目の5)

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宿毛大橋を渡る頃には太陽はもうボクと同じ高さにあって、一日をその朱色の句読点で強引に締めくくろうとしていた。あと30分もすれば、またボクはザックのポケットに入れているヘッドライトを取り出す作業を行う。

宿毛市和田あたりにて コスモスとその向こうに沈む夕日
(宿毛市和田あたりにて またねぐら探し……)

留守を預かってもらっているホッチキスと電話でもめた。荷物が届いていて、その不在通知に気付かないまま保管期限が過ぎていたことに対して、ボクは苛立っていた。そのことに対してというよりも、思い通りにならない毎日への不満も「ついでに」そこを出口にした。荷物がどこからなのか、ということが気になり始めた。差出人がまったく知らない企業からだった。千葉県の美浜…。

あとになって分かったことなのだけれど、イオンの懸賞に当たっていて「トップバリュー詰め合せ」が届いていたのだ。差出人が「イオン」ではなくて、発送を担当する企業名だったのでややこしくなっていた。

その怒りや苛立ちを抱えて、夜の宿毛市内を抜けた。与市明の交差点から国道56号線に出た。登り坂。しばらくして宿毛トンネル。抜けるとまた闇だった。18時。晩秋の夕闇は時間よりも深く感じる。もう20時とか21時の感じがした。少し慌てる。この先まったく何があるか分からなかった。地図上には「野地神社」「レストラン樹里」が記されていた。

少し行くと宿毛珊瑚センターというお土産物屋さんだろう店があり、シャッターは下りて人のいる気配もしなかった。その軒下を借りることにした。19時少し前。それから地面に座り込んで夕食を食べた。途中宿毛市内で何か買えばよかったと後悔した。「国道56号線」何かあるだろうと高を括っていた。

スナックスティック9本入りとジャンボソーセージを食べた。自販機が近くにあった。救われた。ボクは、その非常食を食べ終わると、マットに空気を吹き込み、寝袋をその上に広げてもぐり込んだ。川が近いのか山の中なのか寝袋が結露する。冷えているせいもあるのだろう。すぐに眠ってしまった。そして途中何度か起こされた。

2時、目がさめてポリッピーを食べ缶コーヒーを飲んだ。
3時、今度は歯が痛くて目がさめる。ペットボトルのお茶を買って歯磨き。それから鎮痛剤を飲む。膝の次は歯だ。
4時、顔の横でゴソゴソしているので目がさめる。ムカデだ。そのまま起き上がって金剛杖で潰してしまった。殺生。同宿していたのだろうムカデを殺したことへの罪悪感。

同宿あり。地面に寝るということは、そういうことなのだ。

そのまま起きて自販機のそばのベンチに座った。それから撤収を始めた。まだ夜だった。

宿毛珊瑚センター 5時の風景
(宿毛珊瑚センターの軒下をお借りして寝ました…*現在は閉鎖されています)

この日の行程:道の駅大月~宿毛珊瑚センター(宿毛市野地 国道56号線沿)

この日の札所:39番 延光寺

この日の宿泊:野宿

この日の出費: 3,313円(納経代、お賽銭別)

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