浮津海水浴場の夜(20日目の3)

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その日は暖かかった。秋、晩秋の海も暖かく見えたし、陽気に踊っているようにも思えた。

何もしないまま時間だけが過ぎた。停滞すると決めたら気持ちは少し軽くなった。それでも、天気の良い日に座って海を見ている遍路、その自分に罪悪感を憶えたりもした。それでも時間は確実に流れてゆく。時として全てを取り残してまでも…。

大方キャンプ場の夕日 道の駅が遠く見える
(浮津海水浴場の夕日)

15時になって、ここに泊まることの許可を取らないと、と思い始めた。ちょうど女の人が向こうの道路に見えたので、急いで、そして足の痛みを隠して、「すみません」と近づいていった。

「あの~、ここを管理されている方は、どちらにお住まいなのでしょうか」
「ああ区長さんね、どうしました」
「ここに泊まらせていただきたいと思いまして、代金とかお支払いしたいので…」
「それなら、わたし行って話してくるから、ちょっと待っていればいいわよ」
「あ、そうですか、すみません、遠いのですか」
「ええ、すこしあるからね」
「お願いします」

というような話をしてその奥さんは行ってしまった。

1時間ほどして戻ってきた。
「どうぞお泊まりになって下さい、とのことでしたから」
「お金は」
「お遍路さんからはもらえない、って区長さん言ってましたよ。それにシーズンでもないし」
「ありがとうございます」

と、すこしボクのことやら、これまでの旅のことやらを10分ほど話して、その奥さんは帰って行った。

夕陽が綺麗だった。
そしてなんだか涙が流れてきた。

ボクは海の家の前にテントを張った。屋根が着いている場所だった。これで雨が降っても大丈夫だな、と思った。

17時 日替わり弁当、搗き餅2個の夕食。
何もない夜。寝ているのか寝ていないのか分からない夜。波音の夜。そして哀しみの夜。

テント泊
(遠く四万十方面……)

この日の行程:ホテル海坊主(黒潮町有井川)~浮津海水浴場(黒潮町浮鞭)

この日の札所:なし

この日の宿泊:テント泊

この日の出費:1,100円(納経代、お賽銭別)

・道の駅 ビオスおおがた
日替わり弁当 400円
古代米おにぎりセット 250円
芋天 150円
搗き餅4個 200円
(小計 1,000円)

・自動販売機
カップコーヒー 100円

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