タクシー不足とタクシー規制

タクシー不足とタクシー規制について考えてみます。

というのも、現在問題化しているタクシー不足の原因がタクシー規制にあるという声が多いからです。そういった声は日ごと大きくなり、規制緩和を飛び越え、規制撤廃によるライドシェア、新しい移動サービスを望む声へとなっています。

タクシー規制

そのタクシー不足を招いているとされる規制は次の3つがあります。

  1. 新規参入
  2. 増車
  3. 運賃

新規参入ができないこと、そして既存の事業者も増車ができないこと、この2点がタクシー不足の原因、と言うことなのです。。

適正車両数

適正車両数とはタクシーの特定地域及び準特定地域において適正と考えられる車両数を言います。その適正車両数の算定方法については前回説明した通りです。

適正車両数の算出方法適正車両数の算出方法は次の通りです。 輸送需要量 / (平均総走行キロ * 平均実車率 / 平均延実働車両数) / 365 / 実働率 タクシーの適正車両数は、毎年8月頃に前年度の算定基礎数値を…
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適正車両数の算出方法

 

次の表は、令和4年度の各交通圏(営業区域)において算出された適正車両数と、令和3年度末の実在車両数です。 1 2 3

交通圏 適正車両数 令和3年度末
上限 下限 車両数
東京特別区・武三 17,310 15,387 28,133
名古屋 2,888 2,728 5,337
東三河南部 228 216 445
大阪市域 6,055 5,381 12,535

適正車両数と実車両数

この表が示す通り、適正車両数と実在車両数には大きな乖離があります。例えば、東京の場合1日あたり17,310台のタクシーが適正であると、国交省が公示しています。

ところが、28,133台のタクシーが存在しているのです。つまり11,000台も余剰在庫があるということになります。余剰在庫を抱えているのに、供給不足を引き起こしているのです。

前回の繰り返しになりますが、適正車両数の算出方法にも問題があります。だとしても、乖離率50%のタクシー超過なのです。

規制されていない台数

このように、規制があり増車できないとしても、そもそもタクシー不足ではありません。適正台数よりも50%も超過しているのです。

つまり、台数規制が効いていないのです。

改正タクシー特措法

なぜ効果がないのでしょうか。それは、この特措法「特定地域及び準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法」が、

  1. タクシー事業が供給過剰である(特定地域)
  2. タクシー事業が供給過剰となるおそれがある(準特定地域)

それらの地域に対して

  1. 新規参入及び増車は禁止
  2. 新規参入の審査が厳格化されるとともに、増車は認可制

にして「タクシー事業の適正化及び活性化を推進する」というものだからです。

要するに、(特定地域になれば強制力のある削減措置はあるにしても)「供給過剰になったら増やすなよ」というものだからです。これがこの特措法の特質です。「増やすな」です。

改正タクシー特措法 略図 国土交通省

図1 改正タクシー特措法のポイント4

タクシー車両ではなく労働力の削減

つまり、特措法は、供給過剰になったら台数を制限し、活性化する。言い換えれば、供給不足を起こさせながら、需要を増やす、そのうえで指定解除という方法です。

そのため、急な需要には対応できません。さらに、一部の事業者は台数制限よりも運転手制限をした/します。台数はそのまま、運転手は退職ということが起きました。それは今回のコロナ禍でも同じです。供給過多=運転手を減らす、だったのです。だから、問題が深刻化したのです。

なぜタクシー不足が起きているのか

つまり、運転手不足なのです。

タクシーが足りないのではなく、実働率(稼働率)が低いままなのです。

次の図2は、尾張三河地区の今年4月の輸送実績5

タクシー尾張三河4月度輸送実績 2023年6月14日 トラノーバ

このように、2019年度と比較して実働率が15%〜16%も減少したままなのです。

また、次の図3はボクの定点による過去5年分の対2018年比、その稼働(実働)台数比率です。この数値は1日24時間のうち1回でも営業すればカウントしています。つまり、1日10%強のタクシーが、全く動いていません。そして動いていたとしても24時間動いているわけではありません。

タクシー不足と稼働率 2018年度比稼動台数

このように、ボクの個人的定点観測でも、2018年の80%〜87%程度しかタクシーが動いていません。1台のタクシーを1.5人~2.4人で稼働させると限界稼働率に達します。しかし現在は1台の車両を0.8人程度で使用している状況なのです。

タクシー不足は運転手不足

つまり、タクシー不足は運転手不足ということになります。

タクシー規制が直接の原因ではないのです。そして、タクシー不足を新規参入やライドシェアなどの新しい移動サービスで解決しようとしても、都市部や時間帯では解消されるかもしれませんが、さらなるタクシー不足を引き起こします。

では、どうするのかというと、タクシー不足はタクシーで解決できます。次は、最後の一手について考えてみます。

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