障がい者手帳と障がい者割引について

タクシー業界が解決できないでいる問題のひとつに「障がい者手帳と障がい者割引」がある。

Twitterでも「手帳を見せないなら割り引かない」という話が定期的にTLに流れる。

ということで、障がい者手帳提示による障がい者割引について考えてみた。

手帳を提示することを条件としています

タクシー会社は提示を条件に割引をすることを明示している。

日本交通のタクシーでは、障がい者割引が適用できます。ご乗車時に「身体障害者手帳」「療育手帳」「精神障害者保健福祉手帳」または障がい者手帳アプリ「ミライロID」を乗務員へご提示ください。手帳等のご提示をもって、乗車された区間の「タクシー運賃」を1割引いたします。

障がい者割引について タクシーなら日本交通

昨年から始まった精神障害者保健福祉手帳による運賃割引に対しても愛知県タクシー協会のサイトでは「ご提示してください」としている。

乗車の際、障害者手帳を乗務員にご提示ください。

精神障害者の方に対するタクシー運賃1割引を2021年4月1日(木)より開始します

なぜ提示しなければならないのか。割引という行政サービスを受けるためにである。そして利用されたサービスを可視化しさらに高度化するためである。

さらには、提示することを条件にしないと不正利用が回避できないからであろう。

ただ、この障がい者割引の不正は利用者だけではない。サービスの提供を代わって行う運転手も含まれる。例えばタクシー運賃1,000円を現金でいただき、その後に「障がい者割引」の手続きをすれば100円が浮く。その双方の「浮いた」お金は、そこに住む社会の損失になる。

なさそうでありそうな話なのだが、自治体が発行する福祉券の不正処理事件は実際起きている。不正処理どころか現金化しているという話も聞く。(福祉タクシーチケットの不正? | 貴志信智 公式サイト

「解決できないでいる」と書いたのだけれど、そうではなく「解決しようとしない」のではないのだろうか。

手帳を出さない理由、出させる理由

「安く利用したい」と思う人がいる限り、不正利用はなくなりはしない。いくらモラルを説いてもだ。しかし不正利用する人はごくわずかなはずだ。

不正利用ではなく、提示をためらう、あるいは、拒む理由は

  1. 手帳を忘れた
  2. 持っているが提示が困難
  3. 肢体が不自由な人で見れば分かる
  4. 恥ずかしい
  5. いつも利用している

そういったことだろう。まさか、手が不自由な利用者に対して「手帳を出せ、出さないと割り引かない」なんて言わないですよね?白杖の方も言わないと思うけど…。

運転手が「提示」にこだわる理由は

  1. 正義感
  2. 1割引きが運転手負担だから(損するから)
  3. 不正利用っぽいから
  4. 嫌なタイプのお客様だから
  5. だってルールなんだもん

なんて理由からなんだろう。

7の「割引が運転手負担」はそもそもの問題で、運転手に負担させる会社が悪い。利用者も運転手も被害者だ。

6の「正義感」は、例えば会社が「無理に求めなくていい」としていたとしても、「だって、当たり前だろ」なんて強く言ってしまう人もいる。8、9は、まあ偏見と言えば偏見なんだけれど、「提示が条件」なので正論と言えば正論。

社会的弱者、移動困窮者だから割引がある、という大前提に立てば、(提示しろと)無理言うなよ、と思う。それに1~5の理由ならば、そして会社も「無理に求めなくてもいい」と言うのなら、別に(提示条件を)こだわる必要もないと思うのだが…。

運転手の不正処理について

ついつい魔が差してしまう人もいる、と思う…。

だから「提示」してもらい「番号の記入」をルール化している会社も多いのだろう。全てを解除して「自己申請だけで」となると収集つかなくなりませんか?

タクシーのルールが性悪説により決められることが多いのは、「事業所外の労働で、かつ、営業活動まで運転者にゆだねている」からだ。「煙突」なんてジャルゴンがあるぐらい、ドラレコやGPS-AVMシステムがなかった昔は不正があった。

歩合給での賃金制度もこの「運転手にゆだねている」ことが大いに関係する。不正の遠因……。ついつい、ついつい…。

解決策を考えてください

法人タクシーの場合、運転手負担をすぐにでも止めて「無理に求めなくてもいい」という方向にすればトラブルは減少する。

ただ、それだと本質的な問題解決にならないので、割引方法を変える。福祉券などの助成券も現在の紙チケット方式から変えれば済むことだ。

障がい者手帳の電子化も進んでいる。手帳を「見せる」問題は、見せなければいいので(良いだけの話なので)見せないで割引を受けられるようにする配車アプリとの電子手帳のリンク。

あと、車内での清算で問題が起きるのだから、割引なしで乗車して後日清算など…

まとめると

  1. 電子手帳化と配車アプリとの連携(開発の人頼む)
  2. 清算をタクシーメーター以外でする(後日清算を含めて)
  3. 申請者すべてを割引く(あるいは誰も割引かない)
  4. 双方(利用者と運転手)の利益が相乗するような設計
  5. これこそMaaSとかSaaSの出番だろ(電脳交通さん頼む)
  6. 不正なんて起きないぐらいの高給取りにして(川鍋会長頼む)
  7. 豊橋市のデマンドタクシーは事前登録なので提示なしOK
  8. ……。

ということになるのか。

ミライロの登場

ミライロさんの登場で、もうすぐそこまで来ている。

UDタクシーは登場したのだけれど、ボクたちがもっとUD頭にならないと、そしてUIとかUXなんてことを考えないと、とは思う。もうすでに割引の件でエラーが出ているので、システムチェックをしないと取り返しがつかなくなる、ってことなんだが…。まあ、まずは明日にでも運転手負担の中止と「無理に求めない」ことの実践を。

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