桜雨(さくら2016年)

桜雨。満開の花もこの雨で土に還る。純白は踏みにじられ泥まみれになる。やがて虫どもが這いずり回る暗闇の中で腐敗する。

オモイデも哀しい。

いつもの場所、ボクたちだけが花見をしていた場所も、満開になっていて、そのことが春を哀しくさせる。ボクたちは一生懸命アイシアッテいて、それはきっとボクたちを否定するためだったのだろうけれど、いつだって君の言うコイビトだった。ゼンマイジカケのように毎年、一生懸命ハナミをしていた。それもボクたちを否定するためだったのだろうけれど、とにかくボクたちはコイビトだった。

繰り返されること、それがボクたちを哀しくさせる。季節であったり、咲く花であったり、呼吸であったり、そうしてアイだってそうだ・・・。そしてキミのコイビトというコトバも。そのキオクの中に重ねられるオモイデも。

雨が降り続いている。どれほど雨が降ろうとも、なにも変わりはしない。花が散り土に還ったとしても、ボクたちには、いや正確にはボクたちのオモイデには還る場所がないのだし・・・。

明日朝、雨が降っていたら、いつもの場所で、そうしてだれもいない場所で、花見をしようと思っているんだよ。

野依神社のしだれ桜(2016年3月31日)桜雨

野依神社のしだれ桜(2016年3月31日)

桜雨/坂東 眞砂子 | 集英社 ― SHUEISHA ―

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