行く春や・・・(さくら2016年)
2016年4月4日
行く春や……。雨に、オモイデもそこいらじゅうに散ってゆく。
もうひろいあつめる勇気もなくて、ヒキコモリの部屋で、恐る恐るカーテンを開ける。
やっぱり雨は降っていて、カタツムリやらナメクジが喜んでいる。そこいらのオモイデを食ってみる。愛もね。恋もね。食べかすはすべて雨で流れて、排水溝から浄化されて海へ還る。
そうそう還るんだ。すっかり形を変えて、すっかり綺麗になって、すっかりボクたちの形跡をなくし。
すべては消化され浄化され。そしてまた甘辛く煮こまれて、咀嚼され、消化され、そしてオモイデという滓になって、また海へ還る。
そうそう還るんだ。すっかり形を変えて、すっかり綺麗になって、すっかりボクを忘れてしまって、そのうちまた酸っぱく味付けられて、咀嚼され、消化され、オモイデという滓になって、また海へ還る。
そうそう、いったいボクたちのカタチってのはどこにあるんだ。いったボクたちのオモイデはどこに留まるというんだ。
なんて考える余裕もなく、繰り返す。そうそう、もうこうなったらボクを食べて、ついでにキミを食べて、海に還ってしまおうかと思っているんだけれど。
それにしたって、また元の位置に戻ってくるんだから、困ったもんだ。愛もね。恋もね。ガブリと二の腕あたりを噛みついた。
嚙み千切れなかったせいで傷だけが出来た。それでもそのうちまた元の還るんだから食べ放題だ。ガブガブ。愛もね。恋もね。ガブガブ、ガブガブ。
……、鶏食い魚食い目に涙。行く春や……。
豊橋公園(2016年4月4日)