たはらアルプス~蔵王山編~

本地垂迹(ほんちすいじゃく)というのは、日本独特の考え方であるようで、神は本来は仏であるというものです。仏や菩薩が救済のために神の姿になって現れたという説で、本地とは元々の姿である仏や菩薩のことであり、垂迹とは神になって現れることを言います。そして、仏や菩薩が神になって権(かり)に現れた姿を権現と言います。

蔵王山の名前の由来は、平安朝の時代に熊野一族が田原の地に移住し、その守護神である蔵王権現が祭つられたことに始まります。蔵王権現とは、役行者が吉野の金峯山で修業中に現れたといわれている神様で、本地は釈迦、観音、弥勒の三尊だそうです。その守護神である蔵王権現を山頂に祭り、氏神である熊野権現を山腹に祭りました。そしてこの山を蔵王山と名づけたそうです。

標高は250.1メートル。頂上には田原市のシンボルでもある風車と展望台があります。山頂までは権現の森から蔵王自然歩道が整備されていて、約60分ほどで登ることができます。「たはらアルプストレッキングガイド」(田原市発行)によると、登りが約50分、下りが約40分になっています。

公園として整備されている権現の森を出発するとすぐ分岐点があります。右が酒倉池を通るルート、真中が直線ルート、左が三つ岩自然歩道コースです。酒倉池の横を通りなだらかな登りを進むと、少し開けた場所に出ます。そこだけは今まで歩いてきた所よりも明るく、木漏れ日が鳥居の赤と交じり合って、不思議な感じがします。熊野三所権現です。

蔵王山・熊野三所権現

三所権現とは「熊野三山は熊野速玉大社・熊野本宮大社・熊野那智大社の三社からなり、それぞれの神社が祀る神の神霊の総称(または統合された神霊)が熊野神(熊野権現)である。熊野三所権現とも言い、」で、それぞれの神とは 熊野本宮大社 – 家都御子神(けつみこのかみ)熊野速玉大社 – 熊野速玉男神(くまのはやたまおのかみ)熊野那智大社 – 熊野牟須美神(くまのふすみのかみ)です。

そしてふくしば広場で休憩して、蔵王権現、見晴台を通って、山頂展望台に至ります。蔵王権現から見える風車は、やはりそれ自体がなにか神々しく感じます。もしもこの風車が古代からそこにあったとしたら、人びとはこの風車を信仰の対象にしたと思います。それは柱であり、天に通じる御柱を容易に想像させられるからです。

蔵王権現、幟と蔵王山の風車

そういった想像力は、森や山を聖地として神々の存在を信じ、自然に魂の活力を求めた昔の人びとのほうがおおいにあったように思います。今はこの蔵王山には修験者の姿もなく、数人のハイカーが歩く姿しか見えませんが、昔は一年中信仰の場所として賑わっていたことでしょう。

さて、蔵王山頂に着いて少し休憩したあと、下りは三つ岩自然歩道分岐より工兵二十六観音、慰霊碑を通り歩道を権現の森に着きました。
途中西国三十三ヶ所霊場めぐりの仏像が並んでいる。すべての仏に手をあわせることができなかったのですが、次回はそうしたいと思います。

ウォーキングコースの後の登山でしたから、約4時間ほど歩くことになりましたが、心地良い風と空気に触れることができて、やはり山から活力をもらったような一日でした。と、かなり疲れて翌日は寝てましたが…。

蔵王山、西国三十三ヶ所霊場めぐりの道

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA