日本海へ

新田次郎の「孤高の人」という本を読んで、ボクは少し山に興味を持ったのです。結局この小説の中での加藤文太郎は独りではなく、ふたりで山に行って遭難死しました。一般的に単独行のほうが危険だと言われているのですが、実はパーティーでの山行のほうがもっと危険だという場面もあるようです。(「国家の品格」というベストセラーを書いた藤原何某という人は、この新田次郎の息子です)

ひとりが好きというのではなくて、ひとりのほうが楽ということもあるのかもしれません。はじめての旅もひとりでした。冬の宮崎には、中学3年生のときでした。この旅の1泊目は都農駅での駅泊でした。寒かった記憶だけがあります。2日目は延岡、野宿する勇気なんてものが失せていました。結局は映画館で一夜を過しました。児湯郡木城町の新しき村を訪ねたのもその日でした。その訪問がこの旅の目的ではなかったのですが、その頃から、少なからずともそういった自給自足の生活に憬れていました。

家出みたいなものだったのでしょうね。家が嫌いだったということではなくて、田舎に住んでいる自分の自意識みたいなものが嫌いだったのかもしれません。

その春、今度は鳥取砂丘に行きました。「さんべ3号」だったか、そんな名前の急行列車に乗って鳥取駅だったか、いえ米子駅に着いたのが夜遅かったので、その日は駅の近くの旅館の布団部屋みたいなところへ寝させてもらいました。なんと言ってその従業員が出入りする部屋に泊めてもらったのか、どうも思い出せないのですが、きっと少年のボクを見て旅館の人がその部屋をすすめてくれたのだろうと、考えています。

その時の旅の想い出は、その布団部屋で過した夜のことと、さんべ号から見た日本海、そして鳥取砂丘で、ひとりで山を歩くときの感じに似ていて、人の気配を感じさせないものなのです。はたしてボクは、その旅でどれほど人との会話をしたのだろうかと考えています。高校受験を終えたボクは、多分それだけで疲れていたのだろうし、少し病んでいたのかもしれません。それが人との会話を避けさせていたのかもしれません。もうその頃から、人と話すのが苦手になっていたのかもしれません。ひとりが好きというのではなくて、ひとと話すのが苦手ということなのかもしれません。

それでも、さんべ号の車窓から見えた日本海のことを、今でもよく憶えています。列車が海辺を通るときに、今にもその列車ごとボクをのみ込みそうな重くて深い色の海。海の上を走っているような錯覚。そして線路の傾きと目の前の海。それはボクの知らない言葉で表現されたほうが、とても納得のいく海なのでしょうが、今のボクにもその時のボクにも「あの海」としか言えない海があったのです。そしてその海はボクの記憶の中にあって、たまに思い出したりするのです。

その何年か後、ボクは石川、福井と「あの海」の続きの海を見に行きました。もうボクは大人と言われる年齢になっていました。その時と同じルートで、さんべ号に乗って、同じ海を見に行くということはしませんでした。なぜなんだろうか、なんて考えていますが、きっと、理由なんてものはなくて、あの時の続きをと言う感じで、ドラマの続きを見るような感じで、ボクは何年かに一度「あの海」をそして「あの海の続き」を見たいなんて思っているのだろうと、考えています。

季節は初秋、というか晩夏で、あの日の重々しい海に野路菊の白色が見えた季節とは違うのですが、きっと夏の終わりの少し疲れた、ちょうどボクのような海に会えるのではないかと思っています。

あ、そうそう、明日は日本海に行きます。

思い出というのは心の傷みたいなもので、本当は修復できないのだけれども、どこかで修復願望があって、その続きを見たいと思うのだろうし、出来ることならばもう一度なんてことも思っているんだろうと…。

悲しみ本線日本海~♪

寝ます。

7件のコメント

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    こんばんは。
    小さなバッグに忍ばせて持ってきているようです。本人も気になるのか、少し遠慮がちみたいですね。ま、気づいても誰も言わないかも知れないですね。どうなんだろ?
    そうそう、エビフライカレーみたいのも高いですよね。最近は冷やし中華とサラダ、それともう一品とか、ミニカレーにサラダが昼食メニューです。
    工場の食堂なんだから、ボロ儲けはいけませんよね。

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    こんにちは。
    ご飯だけ持ってきておかず一品で食堂で食べる・・
    良い方法ですが、食堂の人に言われたりしないのかなぁ。昔、寮の食堂で「ごはんですよ」でごはんと味噌汁だけ頼んで食べていた人が注意されていたのを見たことがあるので。
    しかし、工場食堂で「かつカレー630円」を見たときは、さすがにあきれてしまいました。

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    なりさん、こんにちは。
    女の人の一人旅も多くなっているのでしょうが、さすがに野宿しているひとは見たことないですね。
    ご実家は九州でしたか。この記事の写真も九州、菊池のものです。車で九州までだと、高速を使っても10時間はかかるかもしれないですね。車での旅のほうが、時間の制約がなくていいだろうし、いざとなれば車で寝れるから便利かもしれないですね。
    弁当、そういえばご飯だけ持ってきてオカズを一品で食堂で食べている人もいますよ。ま、お腹が空いたらそうすれば良いだけのことかもしれないので、おむすびと卵焼きだけでもいいかもしれないですね。
    社員はあとで半額になるそうです。まあ、そういったことに反発して食堂で食べない人もいるみたいですが、こういったことも改善されるといいのですよね。

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    こんばんは。
    明日は夫が一直の週なので、早く寝ないといけないですが、
    昨日今日とPC触っていなかったので、気になって覗きました。
    私も若い頃に、旅をすれば良かったなぁと思いますよ。
    女は難しいかな?
    私はドライブが好きで、独身の頃は仕事が終わると、
    そこら辺をフラフラ走っていました。
    ストレスが溜まると、高速道路走りに行ったり。
    (ATの軽自動車です)
    盆休みには九州の母の家へ遊びに行きました。
    ‘北海道の道を走ってみたいな’
    と思い始めたら、結婚してしまいました。
    盆休みがあり、その分給料が安くなるので、
    弁当を作って欲しいと夫に頼まれました。
    おむすびと卵焼きでいいと言うのですが、
    男の人の弁当にしてはそれじゃあ淋しいかな?
    今日のおかずの残りを入れる予定です。
    正社員になれれば食事代は半額だと聞きました。
    弁当作らないで楽だったのになぁ‥‥。

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    >ホンダ期間工さんへ
    そうですね。週休二日が完全実施されたのは、ここ10年少し前からですものね。その当時は収入も30万円とかで応募していたと記憶しています。バブル期だったので残業も毎日2時間あったとかで…。
    ホンダでも辞めるひと多いですか?ま、仕事がキツイということもでしょうが、その無言状態も嫌だという人もいるみたいです。おっしゃるように、そのほうが楽だったりするのですけれどね。
    九州でも熊本大津工場があるのですが、たまにしか募集していないみたいです。パートはよく募集しているそうですが…。ヨコハマゴムなんてのも、寮のご飯は良いという噂を聞いたことがあります。ま、トヨタだけが期間工じゃないですからね。
    ボクは、どうなんでしょう。また来るかどうかは…?(^^;
    >白味噌さんへ
    田原はホカ弁もないし、ファミレスもないですから、寮も少し考えてくれればいいのに…。なんせ定食とカレーだけですからね。せめて工場並みの品揃えだと、200円台で一食食べることが出来るのに…。
    静岡ですか。富士山も見たいですね。もう一日分残っているので、来週は…。って、JRは18きっぷで乗れるけれど、豊橋往復が1000円ですからねえ。これも、田原の嫌がられる理由かもしれないですね。

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    横レスですが、ホンと田原の食事代は高いです!!
    不満アリまくりです、前の工場はセットメニューが充実
    してたので、こっちはボッタクリなイメージが強いです。
    ホンダ期間工さんの所は食事代は、全額無料では
    ないのですか?
    ところで一人旅良いですね、自分も給料が出たら静岡方面に
    行きたいです、知らない町を旅したい今日この頃・・・

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    結構みんな簡単にやめるなぁ・・・。
    期間が限られているんだからガマンしろよ、と言いたい。
    20年前は土曜も出勤だったのに。
    5日働けば2日も休めるじゃないか。
    キツくないだろ~。
    期間工って、面白いじゃないですか。
    無駄なしゃべくりはなく、ただ黙々と与えられた仕事をこなす。
    隣のヒトと言葉を交わすことなく1日が終わる。
    そして、また、明日へと。
    こんな生活したことなかったんで新鮮。
    (皮肉とかじゃあないよ)
    食事について:
    ホンダでの食事は満足できるレベルですね。
    A定食は450円、おかず1品(和食、洋食、中華から選択)に
    小鉢2品、もちろん味噌汁付き。
    ごはんは白米か五穀米。「ふりかけ」も可能。
    他にB定食、麺類あり。
    結構うまいっすよ~。
    管理人さんも、次はホンダに。どうですか?

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