トヨタはなぜ嫌われるのでしょうか？
これほどの雇用と税金を納め、愛・地球博という国際イベントまで成功させ、経済や地域の発展に貢献している企業であるにもかかわらず、なぜトヨタ批評が多いのでしょうか。トヨタの影響力ということを批評する側が計算して、要するにトヨタ批評と言う名の自動車産業批評なのでしょうか。

トヨタ労組は１９年の賃上げ要求を決定しました。１５００円です。新聞テレビの見出しにも、この１５００円という数字が載っていて、「それだけか」なんて思う人もいるでしょうが、これは賃金制度改善分と言われるもので、定期昇給分は別に６９００円ありますから、合計８４００円の昇給となります。

中日新聞ホームページへようこそトヨタ労組、１５００円賃上げ要求決定
トヨタ自動車労働組合（鶴岡光行執行委員長、５万８０００人）は９日、意思決定機関の評議会を開き、２００７年春闘の賃金引き上げ交渉で、昨年妥結額を５００円上回る組合員１人当たり８４００円の賃金引き上げを要求することなどを正式決定した。

ひと月８４００円昇給して、なおかつ「一時金（ボーナス、夏冬合計）は「基準内賃金５カ月分＋７９万円」を要求。組合員平均で２５８万円となり、０５年の獲得実績を１４万円上回り、過去最高の水準となった」のですから、すごいですよね。
ま、すごいといっても、世の中にはもっと高収入の職業もあって、一概にすごいとも言えないし、トヨタの収益を考えると「それほどでもない」のかもしれませんね。いざなぎ越えの景気と言っても、それが実感できないのは労働分配率が抑えられているからだという声もあり、確かに労働者に利益を分配することによって、更なる景気拡大が望まれるでしょうから、賃上げはあってしかるべきだと思います。
しかしトヨタのような高水準の賃金に支えられている愛知県とは違って、北海道・東北、九州など、トヨタ期間従業員の出身者が多い道県では平均月収が減少していて、愛知県の３１万２７００円と最も低い青森県との差が約９万円もあるのです。（もっとも高い東京都とは約１５万円の差）

asahi.com： 地域間の賃金格差拡大　東京が最高、最低は青森　厚労省 – 就職・転職
厚生労働省が９日発表した０６年の賃金構造基本統計調査（速報）で、賃金水準が最も高い東京都では平均月収（残業代を除く）が前年より４９００円高い３７万５０００円に上がったのに対し、最も低い青森県では１１００円少ない２２万１７００円に下がっていることが分かった。景気回復が続くなか、地域間の賃金格差が拡大している実態が浮き彫りになった形だ。

それら賃金水準の低い県の平均年収と、トヨタのボーナスの平均額が同じというのも、なんだかそこで働く人びとのやる気を喪失させているのではなかと、思っています。就職活動をしていると、この２２万円というのも高く感じていますし、実感としては１８万円というところですね。そうなると、地元で働くというよりは期間従業員としてトヨタへというほうが、「安定」するということでしょうね。
なにもトヨタが、賃金の地域格差を作り出していると言っているのではありません。その高賃金が人びとの恨みを買っているというのは、別問題ですからね。
ただ、その賃金格差によって期間従業員や派遣社員といった非正規雇用の多くが集まってきていて、格差があったほうがトヨタにとっては好都合であるということが、見え隠れするのですよ。それを薄々、トヨタ本体で１万人、関連企業を含めると数万人という非正規雇用者が感じていると思うのです。いったいどれくらいの非正規雇用の人たちが「賃金や就職難以外」で働いていますか？２割いや３割ですか？登用試験を受ける人たちとて同じことですよ。
そして一番の問題は、「闘争」という実に綺麗に聞こえる言葉を使って既得権益しか守ってこなかった労働組合にあると思うのですよ。今までその社内格差を取り除く努力もしなかったのではないのでしょうか。

一方、３万人が働く製造現場で約３割を期間従業員が占めるなど非正規社員の増加を背景に、社内のコミュニケーション向上を目指した職場改善も要求。労使が専門委員会を立ち上げ、今年半ばまでに具体策をまとめるよう求めた。

今まで「労働者」として扱ってくれなかったのですよね。そして社会問題になったからと言って、組合員化なんて騒いでも、もうみんな、組合なんていうのに不信感を持っていて、「『闘争』もできないくせに偉そうなこと言うな」なんて笑っているのですよ。
労使労使って言うけれど、実はどっちも嫌われていて、そしてそのことに気付かずにいて、「期間従業員は別」なんて考えて、長いこと「楽」に座ってきて、労使共々社内格差、地域格差なんて今まで一度も考えることもなかった。期間従業員は１万人なんていうけれど、通算したらどれぐらいいますか？その人たちの不満はなかったのですか？
車を造って利益も生み出したのですが、それに関わった多くの人たちの悲しみや苦しみを分かってあげる優しさがなかったんだと思っています。そうした人びとの悲しみ苦しみをも生産していたとしてきたのだから、トヨタ嫌いはかなりの数がいて、そして増え続けているのです。