期間工にとって愛知とは

街に住むということは、その土地の文化や伝統に触れるということで、例えば食事や言葉、建物や植物など、よするに風土や歴史によって街というのは随分と違った姿をしていますから、それを感じること、いえ、その街に抱かれること、触れ続けることが「住む」ということなのだろうと考えています。
感覚が未知のものに触れるということ、それが旅だったりしますが、毎日触れ続けることが住むことだろうと思うし、帰る場所がどこかということが旅と居住との違いなのだろうと思います。

期間工の人たちにとって、愛知県とはいったいどんな場所なのでしょうか?
トヨタ期間従業員をはじめとして、数万人の人が愛知県に住んでいるのですが、ほとんどの人は雇用先企業の寮やアパートに集団的に住んでいます。例えば田原市ですとトヨタ田原寮、吉胡寮、滝頭寮、に数千人が住んでいます。多くの期間従業員は、ひっそりと生活していて、平日は工場と寮の往復、休日も寮で過していたり、ジャスコで買い物するだけといった過し方の人が圧倒的に多いように感じます。
お金のために期間工としてトヨタで働いているのですし、給料は仕送りや貯金に回すひとがほとんどなので、夜の街が賑わうということも、休日の飲食店に行列が出来るということもなくて、ほとんど街と触れ合うということなしに半年なりの期間を終える人がほとんどです。お金の在り所パチンコ屋は賑わっていますが、そこで街を感じることはないでしょうからね。
ですから、トヨタ期間従業員にとっての愛知は、やはりトヨタの街以外のなにものでもなくて、そのトヨタでの日々が愛知に住むということなのだろうと思います。例えば田原市は渡辺崋山の街でも、風車の街でも、蔵王山の街でも、凧まつりの街でもなんでもなくて、ただトヨタの街なのだろうと思いますし、ほとんどの人がそう感じているのだろうと思います。
前に書いた記事ふたつにそのことを書いていますので、もう一度掲載します。

Sくんの再チャレンジ
ひと昔、いえもっと昔は、職を得るために東京へと上京していました。それはあくまでも「職」を得るためであって、Sくんのように「金」を得るためではなかったと思います。夢や希望が東京にはあって、例え挫折しても新たな夢や希望を見ることが出来たのだと思います。安いアパートでの若者達の夢や希望を書いた小説や漫画や歌はかなりありますよね。そして貧しさが自慢話になったようですし、出世物語には貧乏というキーワードが必ず必要でした。
現在は、若者は東京の手前、あるいは東京を通り過ぎて名古屋までやって来ます。いえ、名古屋というよりも、トヨタのある町にです。夢や希望とはほど遠い契約期間の町です。愛が芽生えることもなく、何かが生まれることもなく、そして挫折したら終わりの町です。歌になることもなく、恋愛小説の舞台になることもなく、まして思い出にもしたくない町。
「二度と来ない」という言葉をよく聞きます。そういった人の多くは、トヨタのある町のことも嫌いになってしまっているのでしょうね。いったいトヨタの創始者豊田佐吉氏は、豊田喜一郎氏は、今のトヨタをどう思うのでしょうね。造った自動車の好き嫌いはあってしかたないと思います。でも、その会社がある土地までもがこれほど嫌われるとは想像もしなかったのではないかと思っています。
世界を代表する企業になったトヨタが真っ先にしなければならないことは、品質の向上もでしょうが、それよりもこの国の人から嫌われない企業にすることではないかと思っています。売国奴なんて言わせない企業造りのほうが、車造りよりも先のように思ったりします。

期間工の恋(3)
思うんですが、期間工として働いている間に恋はしないのでしょうか?例えば、ジャスコのレジのお姉ちゃんに一目惚れしたり、メグリアの店員さんが大好きになったり、そうそう、ミマスのあの「もう期間工とは恋はしないもんね、もんね」という娘さんに恋したりしないのですか?
人を好きになり、恋する気持ちが募って、もうどうしようもなくなっても、いつものように「どうせ半年だから」とか「半年の我慢だから」なんて誤魔化しているんでしょうか?そうそう、トヨタでの仕事や、人間関係のようにね。
半年ならば、それも良いかもしれませんが、1年とか2年、3年なんてことになると、やっぱり好きな人のひとりやふたりは出来て、その思いを伝えてしまいたいという欲求に駆られるのもんで、そうなるとその恋を成就させたたいと考えると思うのですが…。
やはり毎日工場と寮の往復という生活では、出逢いも少ないですからね。毎日の生活もそうですし、休日は疲れ果ててあまり外に出かけることもないし、出たとしても買い物だけという人が多いですよね。ぐるりんバスに乗っている人たちの行動を見ると、だいたいそんなもんですよ。パチンコもするか。

出会いがないのが悪いとか、街を歩かないのが悪いとか言っているのではなくて、それが出稼ぎであってお金を貯める目的で来ている期間工であるということです。ずいぶんと禁欲的な生活を送っていると思います。それも悪いことではないと思います。街に出ればお金がかかりますからね。そしてなによりも「幸せ」という形を見てしまいますからね。
あまり良い思いでもないまま、期間満了して帰郷する人が多いのだろうと思います。そしてトヨタが愛知が嫌いになった人も多いのだろうと思っています。それでも、毎週数百人の期間従業員が豊田市にやって来ます。
仕事が辛いのはしかたないとしても、せめて夢や希望が持てる、そんな世の中であってほしいと思うのですよ。逆に夢も希望も捨ててしまう人が多くて、下流を志向してしまう人を造っているのもトヨタではないかと、思ったりしているのです。

13件のコメント

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    コメントありがとうございました。
    記事として使わせていただきました。
    それを返事とさせていただきます。
    えっと少しだけ、
    >グレート肉沢さんへ
    そんな才能はありませんよ。プロの方の文章は完成度が違いますから、それはボクが一番良くわかってたり…。
    >歩さんへ
    ええ、歩さんって、いったい何歳なのだろうと、とても思っている現在ですが。
    マハラジャってディスコ?
    豊田市って女子も少ないような?どっか避難してるとかなんだろか?そんなわけないか。ボクも岡崎は好きです。
    金龍ラーメンもあるし。
    >衣浦父さんへ
    お久しぶりです。
    たまには近況などお知らせ下さい。血圧は薬とかじゃダメなんでしょうか?それとか飲料なんてのが販売されているようですが。
    たぶんお試しにはなっているのでしょうが。
    とにかく、衣浦父さんの夢がかなうといいのですが…。
    >とこさんへ
    お久しぶりです。その映画見たいと思っています。
    >もっちんさんへ
    鍼灸の学校ってどこにあるんだろう。って、調べてみますが。
    そうですね、考える余裕がなくなって、そして楽な方へと流されて、気がついたらここに来てた、って感じだなあ。
    何も考えないで楽なことは楽なのですが、カードも作れない身分ですから、そのことはきっちりと解っていないとと思っています。

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    アルファード

    こんにちは。
    始めまして(^^)
    私もブログやっていまして、ちょうど関連の話題だったのでTBしました。
    ブログにも紹介させて頂きました☆
    もしよかったら私のブログにもTBよろしくお願いします。

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    おひさしぶりです
    ちと仕事が忙しくてロム専になっておりました
    期間工にとって愛知とは・・・・ですか
    期間工となった動機がお金を貯める事にある人にとっては
    その場所は単なる通過点に過ぎないでしょうし、生活の為に
    期間工となって人にとってもある意味仕方なしの選択肢
    (家族や故郷と離れてしまうなど)なんでしょう
    そういう人たちもいれば、故郷が嫌で、田舎が嫌で
    でもしがらみで都会にでるチャンスがなかった特に若い人たちには、この期間工生活はエンジョイできる物であるかも知れませんね(本人の適応能力にもよりますが)
    実は知人が福祉関係の仕事を退職して、現在は鍼灸の専門学校に通っています。その学費を稼ぐ為に、ホンダの鈴鹿工場に期間工に1年と半年ほど勤務していました。
    その知人と何度か話を聞く事があり、期間工にも色々と
    タイプがあると話しをしてくれました。正社員を目指す人も
    いますが、そのほとんどはここ数年の生活の糧を得る為に
    仕事に来ているとの事でした。
    スパイラルされている方も多く、そんな中には夢があっても今の生活に押し流されている感じな人たちもいたそうです。夢とそれを実現する努力と、本田で働く事で得る賃金やらもろもろの待遇を天秤にかけて、それに年齢をプラスしてそのリスクをたたきだすと以前に、きついライン作業で体も頭もクタクタで、そんな先の事を考える余裕がない現実。
    知人も1年目は専門学校の受験を考える事がなかったくらい、流されていたそうです。2年目は半年で契約を切り
    受験に専念したそうです。
    そんな知人は鈴鹿の街は住むにはいい街だと言いますが
    しばらく行きたくないとも言っていました。
    夢が埋もれかけた経験がそう言わせてるのかも知れません。
    期間工の話にしても、具体的に話始めたのはつい最近ですしね。
    なにやら意味不明な書き込みになってしましましたが、
    言いたいことは、期間工として働く事自体に自身の将来と夢がない以上、刹那的な楽しさの思い出以外はその働く土地での愛着は湧かないのは当然かもしれないという事です。
    どんなに働いても『期間工』としてでしか評価されなければ、どんなにがんばっても、どんなに努力しても報われなければね・・・・・・・・
    それを

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    先日、ドリームガールズと言う映画を見てきました。
    ダイアナロスとシュープリームス及びモータウンレコードの
    創業をテーマにしたミュージカルなんですが、モータウン(モータータウン)は豊田と姉妹都市のデトロイトで生まれた音楽レーベルなんですね。
    自動車産業の勃興期のデトロイト、黒人労働者をはじめとする出稼ぎ労働者と見渡す限り広い道路と工場ばかりで何の魅力もない町・・まさに豊田市そのものにだぶりました。
    そんな中で黒人労働者たちがR&Bを歌い、R&B専門のレコード会社を作り上げて独自の文化を作っていくのですが、豊田というトヨタを抱える都市はこれからそういう文化が生まれる兆しがあるのか?それとももしも生み出さないのならトヨタという企業は利益を出しても本当につまらない会社だと思いました。

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    「満了近いHさんの事とか・・・」
    管理人様。本当にご無沙汰致しました。ずっとブログ読ませて頂いておりました。血圧がどうも下がらずーっとアルバイトをしながら再トライの機会を伺っていました。以前同じ組でお世話になっていた四つ年下のHさんが、六月で満了で退社される事を知りました。通算2年いらしたシニアの方で、なかなか戻れない自分の愚痴にメールなどでお付き合いして頂いてくれていました。同じ世代の期間工の方が居ない事も加味して、いつも「待ってるから頑張って!」と励まして下さってくれていました。元々飲食系のお仕事をされていた様で、郷里で友人の手伝いをされるとか・・寮部屋の窓から見た夕日とか、工場の窓から見えた、海とか走馬灯の様に消え掛けて行きました。Hさんとの再会や街の風景との交わりは未だ叶っていませんが・・・何としても帰りたいです。長文と私的な事でスペースを使わせて頂き申し訳も・・・また、書かせてください・・では。

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    こんばんは
    またダラダラと長文いきますんで生暖かく見てやって下さい^^;
    実は、自分は愛知に来るのは4回目なんですよ。若いときに2度派遣で来てるんですよね(どちらも岡崎)
    その2回の時は若いせいもあってか遊びまくってましたよ。何の目的もなく来てましたしね。
    似たような奴はいっぱいいたし、社員なんかも気が合う奴らが多かったんで、そいつらとナンパもすりゃ毎日のように飲み歩き、週末はパチンコor名古屋ですよ。
    余談ですが、遙か昔に岡崎にはマハラジャがあったんですよ(笑)
    あ、自分は無かったんですが、恋なんかもありましたよ。派遣だと女の子も多いんでカップルが出来やすいんですよ。
    最初に来た時は6人タコ部屋だったし、かなりハードな事件もたくさんあったんですが、楽しい事件や周りの楽しい人間に恵まれてたんでめちゃくちゃ楽しかったですね。
    そんな感じなんで自分は岡崎にかなり愛着があるんですよ。がしかし、豊田は…
    えー、ダラダラと書きましたが、要は管理人さんも書いてる通り、街自体に大した魅力がなくても楽しい思い出や経験があれば、自然とその街を好きになると思うんですよ。
    が、トヨタ期間工の場合、これもまた管理人さんが言う通り、貯金なんかが目的の人が多いですよね。そりゃ、そんなストイックな生活してたら嫌にもなりますって。豊田市内の店はどこもトヨタ価格ですしね(笑)
    ダラダラ長く居続けるシニアなんかは、そこらの感覚がマヒしちゃってるのかも知れませんね。恋もしなけりゃ何もやらないのが俺ら、だと。
    もしそうなら…なんか悲しいですよね
    あ、関係ないんですが、東レの岡崎工場の女子寮はまだあるのかな。若い頃は結構お世話になりましたよ。
    派遣同士で大した問題ないんだから、トヨタも少しは気を使って女の子が居るような場所に寮を…って世界一体裁(だけ)を気にする企業に何を言っても無駄ですね( ´ー`)

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    自分の場合は、単に、「背に腹は代えられぬ。」から行き着いた場所ですね。人間誰しも生きていくためイロイロと選択肢がある訳で、まっ、最悪だけど、ある意味、最良の選択肢だったかもしれない?今はトヨタの期間工じゃあ無いけど、またお世話になる可能性はあるからね!やっぱり愛知県イコール、「背に腹は代えられぬ。」しゃ~ね~行くか~、って所ですかね。

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    返事ありがとうございます。僕は北海道のものですが田原で前働いていて今も三河の工場で働いていています。やっぱりいろんな経験をしていろんな世界が見えるんでしょうね。田原は仕事では行きたくないなと思ったんですが、観光では行きたいなと思いました。僕は夏の赤羽根ロングビーチが大好きです。

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    余計なお世話かもしれないが管理人さんは文章力とか語学力とかすごい才能を持っているのだから期間工をしているのはもったいないと思う。
    本とか出版したら絶対売れると思うのだが…。
    気を悪くしたらすまない。

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    グレート肉沢さん、こんばんは。
    豊田市は…なぜなんでしょうね。あの公共交通機関が未発達な状況からでしょうか?土橋駅の寂れ具合からでしょうか?街の色のなさからでしょうか?
    それに豊田市ってのはトヨタが付けた名前だし…。そういう意味では、地名という伝統文化を奪い去ったということで、どうしても日本人として受け入れがたい感じがあるのではないのかと思っています。

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    いや全くだ。愛知県は良いところだが、以前トヨタの期間工にいた頃を思い出すと嫌な思い出ばかり浮かんでそれがどうしてもその土地とリンクしつしまう。俺は高岡工場だったが。
    トヨタ満了して次にデンソーの期間工になり、岡崎市の工場に勤めていたが、豊田市だけには遊びに行かなかった。土地柄が嫌とかでは無いのだが、何故か体が受け付けなかった。
    今でも『トヨタ』って言葉を聞くとちょっと不快な気分になる。
    会社の利益優先と人権無視(期間工と派遣)が凄まじい会社だという事実は少なからず定着していることだろう。

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    たけさん、こんばんは
    そうですね、田原、豊橋、豊川はボクも、ま、好きです。このブログでも田原や豊橋のことを書いていますしね。豊川は稲荷のことだけですが…。
    ま、トヨタに来たんだからってことなんですがね。ですから普通は働くってことは、住むところとセットみたいな感じなんですが、期間従業員の場合はすこし違う、いえ、かなり違うように感じます。ま、目的が違いますからね。
    軽い気持ちだけじゃないでしょうね。就職がなかったり、お金のため、家族のためなんて理由が多いと思うのですが、一部そのような人もいるとは、思っています、が、果たして、その一部の人には勉強になるかどうか?

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    田原は良い街ですよ?仕事しに行ってるんだから街とかは関係ないと思いますよ、軽い気持ちでエンターテインメント的にトヨタに入ってると思うんですよ。だから良い勉強になると思いますよ?

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