期間工物語

期間工というのは、なにも「トヨタで車を造りたい」だとか「ライン作業をしたい」だとかいう理由なんかではなくて、ただただ生活のために出稼ぎに来ている人も多いということなのでしょう。
30後半になると、仕事を選べなくなり、また、何かを捨てないと仕事も出来ない状況になると思います。何かとは、家族と一緒に暮らすということや、プライドなんかだと思います。そして「悲しみであり、プライドであり、そのごちゃ混ぜのようなおさまりのつかない物をおそらく押し込め」ながら毎日を過しているのだろうと思います。20代の人たちとは、きっと見える風景までもが少しだけ違っているのかもしれません。いえ、年齢ではなくて、やっぱり何かを経験したかどうか、ということなのかもしれませんね。

もっちんさんのコメント、なんだかとても悲しくなりました。
以下引用します。
私も前職の大手メーカー勤務で寮に数年いた事があります。
トヨタほどではないですが、7階建ての巨大な寮に男女数百人が生活してた中で、いわゆる契約社員という人達も多数おられました。当時4人部屋を2人部屋に改装中で、勤続年数が上の正規の社員は会社の借り上げたマンションに移行するか、自分で部屋を借りるようにする事となり。
寮はいわゆる契約社員である期間工さんと、年数を経ていない社員の集合体でした。そこでよく若手社員と期間工さん達のトラブルがあり、寮の自治会で話し合いの場が持たれた時があったんです。
若手社員はロビーの電子レンジを独占したり、部屋で自炊する事を。期間工の方々は若手社員が夜遅くまで騒ぐ事をクレームに挙げて、会社の人事と寮監がそれをお互いに注意するようにと玉虫色にまとめようとした時に、社員からロビーに数台ある公衆電話を夜間に期間工が独占してるとクレームを
(10年以上前は携帯は普及してませんでしたから)
つけたんです。
その時に遠慮がちだった期間工の皆さんが色めきたって、その内の一人がこういったのを覚えています。
『俺たちゃ、お前さんらと違って外様のよそもんだ、だから一部の不心得な奴の仕業を俺らみんなのせいにされるのも我慢してきた』
『しかし、公衆電話を独占してるから期間工だって証拠はあるのか?』
これにある若手社員が
『夜中に泣きながら電話すんのは契約のおっさんか新入社員だけだぜ』
と期間工の方の琴線に触れる発言をした直後、その若手社員は臨席していた別の期間工に部屋の外に出されてボコボコに殴られて血まみれになったんです。
その殴った期間工さんはよくスーパーの店先に置いてある、パンを入れてるプラスチックケース(業界用語では番重と言うんです)を洗浄する部署にいてて、当時2年目だった若手社員の私がその箱が足りない時に、その部署に行って工面を頼むと嫌な顔一つ見せずに笑顔で工面してくれる温厚な方でした。
夜勤明けで入浴の時に何回か声を掛けてくれて、田舎から送ってきた果物を貰ったり、薄暗いロビーでよもやま話をしたりした仲でした。その時にその方の故郷は青森で元漁師さんである事と、国に小学生の子供が3人いる事、奥さんが病気がちな事、年老いた両親が留守を預かっているを知りました。
そして、夜中に公衆電話に頻繁に電話してた期間工の一人がその方である事も、実が知っていました。
公衆電話のカウンター越しに顔を隠しながら、声を潜めて泣いていた?ような場面も・・・・・・・・
その数日後にロビーの公衆電話と電子レンジが取り払われ?る大岡裁き?が下され、殴った期間工さんは翌日から姿を見せず、その後退職された事を知りました。
悲しみであり、プライドであり、そのごちゃ混ぜのような
おさまりのつかない物をおそらく押し込める為の笑顔であったのか。それを情け容赦なく土足で踏み込まれた事に対する怒りを殴ることでしか表現できないほどに追い込まれていたのか・・・・・・
今はどうしているのか、おそらく子供さんは成人していて、故郷で暮らしているのか、あるいはまだどこかの工場で働いているのか・・・・・・
しかし、ほんとに工場の寮は人生が交錯する所でした。
トヨタはその何十倍もの・・・・・なんですね。

9件のコメント

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    カラスさん、おはようございます。
    えっと、教育というか、そこは、常識問題みたいなもんなのかもしれませんね。
    えっと、ジャスコのある風景ってのは、郊外の畑のなかってのが多いですよね。郊外型SCって言うのかな。ボクの九州の家の近くのジャスコも、田原のと似ているといえば似ていますよ。今はジャスコを見て故郷を思い出すのかもしれませんね。それもなんだかなあ~って感じですよね。
    写真、ありがとうございます。圧縮しているので、少し色がおかしいというのもあるかもしれませんが…。
    30でも後半だとおじさんでしょうね。前半はまだまだ青年かも。
    えっと、ま、そんな事ですか。そんな事…って?
    20代が遠い…ボクも遠いのは遠いのですが…。

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    管理人さんは、さすが、すべてお見通しだったんですね。
    そうですか。トヨタは、ちゃんと教育をしてくれているようなんですね。それを聞いて少し安心しました。
    ブログの写真は、保存して、スライドショーにして見ています。本当にきれいで癒される写真です。
    田原の田園風景は、私が今住んでいる所の風景とよく似ています。ジャスコがバックになっているあたりは、ジャスコがどこにでもあるって事なのでしょうが、本当にそっくりなんです。息子もそんな事を思って見ていたんじゃないかなあと思っています。今は静岡に戻っています。ようやくメールも電話も来るようになりました。
    幽霊なんてトンでもないですョ。でも30過ぎるとおじさんですか?それなら天使やキュウピットでもないし、まさか神様仏様でもないですしね・・・。んーーなんと言うか・・ま、そんな事なんです。(チョッと真似したつもり)
    週末は色々薔薇色の話で盛り上がっていたようですネ。私も今日は遠い昔20代の頃の思い出にでも浸ることにします。
    では、失礼します。

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    カラスさん、こんにちは
    ああ、そうですね、職場では先輩でも人生の後輩でもあるんだから。でも、トヨタの社員の人たちはそこのところはちゃんとしていると思いますよ。年上の期間従業員には敬語を使っているようですし。
    ま、でもそういうことを厳しく教える上司ってのは必要でしょうね。やっぱり人間関係というか職場の雰囲気ってのが、人間形成に大切なのかもしれないですね。
    えっと、ボクが人間じゃないとしたら?なんなんだろう?
    えっと、幽霊?

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    コメントを頂いて恐縮です。
    まだ、こんな所でウロウロしているカラスです。
    私が思ったのは、仕事を覚える以前に、必要な社会的マナーと言うか、目上や年配の人に対する態度なんかについて、この若手社員は、今後どこかで学ぶ事が出来ただろうかということなんです。辛い仕事であっても良い人間関係があれば・・・。ナンテ思うのは甘いでしょうか。
    高卒社会人2年目の息子の事を思いながら、もし自分の子であったら、殴ってもらって良かった(でもヤッパリ怪我の無い程度に、出来れば、ちゃんと話してもらって)と思うのです。
    もっちんさんの言われるとおり、自分もこのブログを読んで
    いろいろな事が思い出されて、何度も涙する事があります。
    辛いことだったり色々ですが、でも人として忘れちゃいけない事だったり、素直にゴメンナサイの気持ちだったり。感謝の気持ちだったり。
    なんとも不思議です。顔も知らない人とこうして気持ちの交換ができると言うことが。
    時々、管理人さんは、人間じゃないのでは?ナンテ思っている、カラスでした。

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    もっちんさん、こんにちは
    あ、いえ、コメントを記事として使わせていただきました。
    ライン作業ってのは、向いている人にはいいでしょうけれど、どうもおっしゃられる通り気持ちも殺伐としてくるように思います。考える暇もないですしね。同じ動きの繰り返しだから・・・。
    そんな中、ちょっとしたことに激しく感動したり…。だから逆もあるかなあ。気持ちも疲れてくるのでしょうね、ボクはどうも木曜日なんてのは、週末病を発病するようで、イライラしてきます。
    で、ま、当たるところもないんで、メールで…、なんて毎週繰り返しで…。気持ちまでもがライン化してるのかも?

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    後、青森の期間工さんにボコボコにされた社員さん。
    彼の職場は工場の中でも一番作業が過酷な生産管理課
    (聞こえはいいがようは配送トラック毎に指定されたパンを積んでいく作業です)で、休みの買い上げは年中おこなわれているような職場でした。あまり面識はないのですが、いわゆるヤンキー系がかなり入ってましたし、職場も毎日が修羅場のような忙しさで、イライラしていたのかも知れません。
    正直時間とかラインに追われる仕事は気持ちが殺伐とするもんですしね。
    彼とはあまり面識はないので、その後どうなったかは知らないんです。ただ事件後に寮を出たのは確かなんですが・・・・

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    すみません
    記事は読ませてもらったんですが
    ちと忙しくて書き込みできませんでした。
    内容が内容な長文を長々と書き込んでしまった事を少し後悔してします。管理人さんや読んでくださったカラスさん、申し訳ありませんでした。
    どうもこのブログを見始めてから、昔の事を鮮明に思い出す事が多いんです。それも美化された奴じゃくて、清濁併せ持つ奴を。その中の一つがこの書き込んだ話です。
    書き込んだ時は実はそんなに重い気持ちではなく、思い出の一つとして書いたつもりだったんですが・・・・・・
    やはり、後から後から思い出が蘇ると、当時のやるせない気持ちも蘇ってくる錯覚を覚えています。その時も実は日々の業務に追われて、あの青森の期間工のおじさんの事は
    1ヶ月経つか経たないかの期間に頭の片隅に追いやられたような事までね。

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    カラスさん、こんばんは。
    言ってはいけないことも、言ってしまうという、それぐらい仲が悪かったのかもしれませんが。
    人を傷つけると分かっていて言うことって、ないことはないですよね。ボクたちの人生の中で。憎しみあうということは、相手の人格やらなにやらを、全て否定してしまいますから、なんとも思わなくなるのでしょうね。
    だから憎しみの心だけは持ってはいけないのかもしれませんね。
    このブログを読んで…みなさん何を感じているのかなあ、なんてボクは思っているのです。

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    ほんとに辛くなる話です。
    その期間工の方も、どんなにか切ない思いだったものか・・・。反面私は、その若手社員の事が気がかりでしょうがありません。なにも知らなくて言えたものなのか、知っていながらそうなのか。その若手社員は、今どんなふうに育っているのか。
    自分も3人の子供を持つ身なもので、誰かその子に教えてあげて!と思ってしまうのです。
    今回は人の痛みのわかる人に育てるには・・・なんて考え出してて、いつか、子供に「このブログを読んで」と言おうかと思ったり、でも、ちゃんと感じる事が出きる子になっているかナア、なんて思ったり・・・。
    またここで宿題ができてしまいました。

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