夜も夜
眠れないままに街に出る
散りばめられていた昨日の残骸は
排水溝の中へ
かなり自発的に片付いてしまったのだろうと
思っていた
そして歩いていた
午前1時25分あたりの夜のこと
どこかの国ではオリンピックが
誰一人ボイコットすることなく
ちょうど24時と0時の境界線のような曖昧さで
開催された
というニュースがボクのテレビからも流れている
という曖曖たる8月9日は
有史以来最悪の人体実験が行われた日
その排水溝ではそれら残骸とともに
かなり前前から存在している残滓がこの暑さで醗酵を始めていた
となると
ほとんどの出来事なんてものは
かなりの確率で
そしてほとんどこれまた自発的に
姿を変える
という規則性のもとに
存在している
ということを
ボクはつい30分までは知らなくて
実は夜歩いていて
いつもいるホームレスのお姉さんに欲情していたのだけれど
まさか「おにぎり一個で」なんて言い出せなくて
歩いて帰る道すがらに
その事実を発見する
ということに至った夜
夜も夜
出来事ばかりが醗酵する
そして姿を変える
なんと臆病なことかと
己を責める
欲情の果ての帰路
起きててもしかたないから寝たほうが良いのだろうけれど……
なんて思っているのは確かなことで
まさかボクの昨日までの記憶とか
その記憶のほとんどの部分は
たとえば恥というジェル状の物体なのだけれど
それもその夜のドサクサとか曖昧さに紛れ込んで
排水溝にポイ捨てするということもできずに
いる
それはきっと臆病さとは少し違っている
ようにも考えている
ボクはビールを
飲んでいる。
起きてても
ならまだいいのだけれど
もうそろそろ
たとえば秋風の頃には
生きててもしかたないから……
なんて考えなきゃいいのだけれど
なんてそろそろ朝も始まる2時32分あたりだったり……
ではさようなら