タクシー怖い
タクシー怖い。少し前の話なんだけれど、深夜のタクシー乗り場に若い女の子が二人、その前には個人タクシーが2台停車していた。2台とも黒塗り、夜目にはそれがタクシーではなくて、黒ヒョウとか黒猫なんていうネコ科の俊敏な動物のようにも見える。それほどの黒、そして磨かれたボデーがきらりと光る。
その女の子たちはボクが近づくと、小走りにやって来た。ドアを開けると、ふたりとも溜息をついて乗り込んだ。
行き先を聞く、と、少し遠くの場所を告げた。
黒塗り黒のスモーク、カーテン、タクシー怖い
「2台停まっていたのに、どうしました?」
「いえ、わたしたちあまりタクシー乗ったことがないもので…。それで少し怖くて」
「怖いというと?」
「黒塗りで、ガラスにもスモークを貼っていて、1台はカーテンまであったもので…」
「ああ、そういう個人タクシーありますね。でも大丈夫ですよ。日中は日焼けしないし、車の中で何やっても分からないし…」
と言った後にボクは「ああ、そういうことか!」と思った。「何をやっても分からない」という状況は、お客様が「何をやっても」ではなくて、運転手が「何をやっても」と警戒する人もいるだろうなあ、そう思った。
それでボクは
「なるほど、怖かったのですか?でも大丈夫ですよ。個人タクシーの人たちはベテランの方ばかりで、資格を取るのも厳しい条件があるのですよ」
と言った。
「でも、顔も怖かったし…」
「・・・・・・」
パンチパーマ怖い
中にはパンチパーマの人もいることはいるのだけれど……。確かに怖そうな人はいる。怖そうにしていないと酔客からなめられるということもあるのかもしれない。
なんせトラブルがあってもボクたち会社タクシードライバーのようにセンターのトラブル係がかけつけて話をつけてくれることもないだろうし、助けを呼ぶ無線室もないのだから。
なにもかも一人、個人でやらなければならないのが個人タクシーなのだから、そういった緊張感が怖そうな表情になるのかもしれない。
それに長いキャリアの中で、ずいぶんと怖い目にも遭遇しただろうから、表情がそれこそ黒ヒョウのように精悍になってしまったのかもしれない。(そうなると職業病的で、タクシー運転手の顔が怖い…。)
パンチパーマは趣味だろうけれど。それでも心的にそういう「怖そう」な外見のほうが安心するのかもしれない。きっと。それはやっぱり「なめたらいかんぜよ」と無言の表現なのだろうし……。
女の子たちにそんな話をした。そして個人タクシーになる条件を話した。
「でも、やっぱり……」
というので、もうそれ以上は話さなかった。
密室が怖い
タクシーってのは密室になるから、若い女の子にとっては(若くない女の子もだろうけれど)タクシーの車内が怖い場所かもしれないね。運転手が襲われたという事件は、一昨年のリーマンショック直後にはかなりあったようだけれど、客が襲われたという事件は、どうなんだろう、あまり聞かないけれど……。
あ、それでも、あるか。
タクシー接客めぐり口論の客引きずり逃走 – 社会ニュース : nikkansports.com
大阪市中央区南船場の路上で10日夜、接客態度をめぐって客と口論となったタクシー運転手が、車にしがみついた客を約50メートル引きずって逃げた。 40~50歳くらいの男性運転手で、南署では殺人未遂容疑で行方を追っている。
口論となって気の弱い運転手だとお客様と無理心中、なんてこともないとは限らないし……。やっぱりタクシー怖い?
豊橋駅タクシープールにて
広島タクシー運転手連続殺人事件 – Wikipedia