ほっとタイムが疲れを吐き出してる
人の多さまでがものめずらしげに見えて
田原工場事務館の人ごみの中
ひと群れの若者たちがいる
真新しい作業ズボンをはいて
集団就職で今着いたらしい
妙にニヤケタ男が先頭にたって
いかに広い敷地かなんてことを説明している
家を出る前の晩は赤飯など食べて
家族そろって泣き笑いしたのかい
里心だけはまだ田舎の家に置き
それでも大企業という魅力に負けて
どうですかトヨタって奴に会ってみて
どうですかトヨタって奴の御挨拶の仕方は
みんな押し黙ったままのこの人ごみは
そうこれがトヨタって奴の御挨拶の仕方なんだよ
初めからトヨタに出ていかなければ
いつまでもトヨタでなくてすんだのに
きれいに暮らしてゆけるところは
どこか他のところのような気もするよ
今はまだ驚いていることだけですむけれど
もうすぐ判るさ驚かなくてすむさ
駆け引きのうまい男ばかり出世して
きれいな腹の男はもう拗ねてしまっている
これからきみは休日だけを待つんだね
悲しみの唄がなぜ街に流れているかも判ってきて
思ったほど多くない手取り金額
そんな給料の苦さも知ってしまうんだろうね
原作：「制服」岡本おさみ作詞
吉田拓郎 制服 歌詞 – 歌ネット
もともとの詩は天才岡本おさみさんの「制服」、吉田拓郎さんが唄ったけれど、期間従業員の姿が重なる。
お盆明け、いよいよ大量の期間従業員の着任が始まったらしい。田原工場でも１００人なんて久々のバス２台分の前途あるこの国の財産が投入された。
こき使われ、使いまわされ、そして使い捨てられる、そんな奴隷層のような人たちがこの国に増えることが良いことなのかどうか、ということはみんなが考えればいいこと。どんな自由だって保障されているこの国ではそんな奴隷になる自由だって保障されているのだから。
「制服」に描かれた女の子たちは、期間従業員とは違って夢や希望なんてものがその先にキチンと揃っていて、まだ「金の卵」なんて扱いを受けていた。今は同じ仕事をしても同じ給料もくれなければ、同じ扱いもされない、まるで使い捨ての道具程度の扱いで、５万１０万とオークションにかけられているようなもの…。
まあ、いい。何もしていない人たちは働くべきだ。近所のコンビニよりは条件は良い。日本の明るい未来のためには人柱も必要だ。回天や桜花に乗る特攻兵は常に必要だ。欲しがりません勝つまでは、それほど経済戦争は緊張している。日本の軍部、いや企業は疲弊している。軍人、いや社員を見殺しにしないために民間兵、いや期間従業員は今こそ必要なのだ。
まあ、そんなこともいい。とにかく、身体にはじゅうぶん気を付けて、痛かったらすぐ診療室へ、辛かったらすぐGLへ、けっして「社員になれるかも」なんて夢は見ないで、ボチボチいい加減にゆっくりのんびりやるんだよ。

かすかに福