ガンブリア宮殿見たよ

「タクドラクオリティ」なんて言葉がある。タクシードライバーのサービス業としての品質というのは、低いと思う。サービス業という業態での比較だけではなくて、人間としても低いという人も少なくはない、というのが中にいるボクの感想なのだ。

そのタクドラクオリティが低い原因はいくつかあるだろうけれど、雇用時と社員教育の二つに重大な問題があると考えている。慢性的な人手不足の業種なので入社条件が甘いということと、そういった甘い条件で入社した人たちをなんの教育もしないで、そのまま野放しにしているということなのだ。

入社条件の甘さが雇用のセイフティネットになっているというプラス要因があるのだけれど、それがそのままなんら教育も指導もされないものだから、さらに劣化してゆき、これまたタクドラクオリティを慢性的に低下させている。そもそもサービス業であるという認識すらない人たちもいて、運転できるからタクシードライバーになる/なった、という人も多い。

運転できるからタクシードライバーになった人たちが、今度は「売上」の高低で会社から評価されるようになる。「足切」なんて言われるノルマによって足どころか思考まで切られてしまっている。「足切」を作らなければならない理由は、タクシー業界自体がドライバーたちを信頼していないからである。性悪説によって「こいつらノルマを課さないと遊んでくるに決まってる」なんて考えているからに違いない。「品質」という足切については不問にしているのに、「売上」という足切には厳しい、どんなにクレームが多くても売上の高いドライバーが良いドライバーなのだ。

古今東西「雲助」なんて言われる職業ではなるのだけれど、他業種が差別化やCS活動なんてことで顧客満足度をあくなく追及しているのに、タクシー業界だけがなにか一歩も二歩も遅れているというのが業界の現状なのだ。売上の高い運転手が品質の高いドライバーという評価を受けるってのも、雲助の時代からなんら変わっていないのだろう。

7月25日放送のガンブリア宮殿「「30分待っても乗りたい」 驚異のリピート率90%“幸せ”サービスで客の圧倒的支持を集める 長野発タクシー革命!」は、そんなことを改めて考えさせられた番組だったかな。

個々のドライバーがどう考えていて、賃金はどうなっているのか、なんて問題はあるとしても、トップの考え方としてはその革命は正しいのだろう。「ワンメーターばかりで売上が伸びない」という一個のドライバーの考え方よりも、ワンメーターの顧客が企業の増益につながって賃金アップにつながるという思考が出来る人を育てればいいだけだし、夢を見させることが経営者の実力だと思う。その夢がほんとうに夢に終わる場合があるとしても、「当たりが良い、悪い」なんてギャンブラーのような毎日を送るよりもずっと人間らしいと思うのだけれど。

というか、ワンメーターのお客様に対して不機嫌な態度をとるってこと自体、人としての品質を疑ってしまう。それがタクドラクオリティと卑下される所以かなんて考えたら、なんとなく世の中全体でそのことを認めてしまっていては、どうしようもない業種なのかなあ、なんて諦めたりもするし、そういう経営者も多いのかなあなんて思って、まあ、タクドラなんだから勘弁してやれ、なんて実はボクもそれを認めているひとりだったりする。

たぶん、こういうタクシー会社が現れたとしても、この国の90%のタクドラのクオリティってのは変わらない。きっと100年後も「雲助」なんて言われて「勘弁してやれよ」なんてレベルなんだと思うのだ。

利益を最優先しない、それは歴代ゲストの共通点だ。では、何を優先するのか。必ず挙がるのが、「顧客の満足」である。ただ、「満足」では少し足りない。

中央タクシーは、客を感動させ、幸福にすることを、サービスの軸とすることで画期的な成功を収めた。だが、それは意図的な演出、マニュアルでは生まれようがない。街を走る中央タクシーを見るだけで幸福になるという客がいるらしい。中央タクシーは、幸福の「象徴」になっているのだ。

客への思いは、簡単には伝わらない。客の幸福に関与することが自分の幸福につながるという自覚と、こんなことをされると自分はうれしいと思うことを他者に対して行い、それを維持、継続すること、それ以外に、方法はない。

カンブリア宮殿:テレビ東京

長野 中央タクシー

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