田原工場のバス停、あの梅の木の花は咲いたかしら…。
景気がよくなれば、あの頃の喧騒、ボクたちが暮らしていた頃、給料日にはミマス前のATMに行列ができ、ぐるりんバスは超満員、タクシーなんてのは一時間待ち、なんてことにまた、もう一度なるのだろうか？
ボクは、二度とそこに住むことなんかないだろうし、あの梅の木を見ることもないだろう…、そう思うと、なんだか別の世界のように、遠い異国のように、ちょうどあのアフリカの大地のように感じる。これほど近いというのに。思い出の中の風景はツンとなにか焦げ臭い。バタフライ男はどうしているだろうか？冬でも半袖男は正社員になることが出来ただろうか？Yちゃんはあの北の街で暮らしているのだろうか？パチンコ好きのTさんは相変わらず借金ばかりしているのだろうか？……。
ボクたちはいつも哀しかった。そしていつも疲れ果てていた。
期間従業員の募集が再開されたね。特別手当10万円付きの募集だ。「３月中旬から４月中旬にかけて約３００人を採用する」予定らしい。今週、来週と愛知県内でも選考会が毎日のように開催されている。きっと、あっという間にそれぐらいの人数は確保できるだろう。
あの頃は、田原工場だけでもバス２台分の期間従業員が毎週やってきていた。寮も足りなくなって、今はアイシンの寮になっている野依寮なんてものまで建設した。リーマン前夜、ボクたちは哀しかったのだけれど、そして疲れ果てていたのだけれど、まだ何か最後の望みみたいなものは持っていた。
ひさしぶりに期間従業員の募集の広告を見ると、なんだか懐かしくなった。ボクはもう希望なんてものは捨ててしまったし、もう半分リタイヤしたような人生で、応募しようとも思わないし、たぶん採用もされないのだろうけれど、なんだかあの始業ベルがなってラインが「ゴトリ」と動き出す時の緊張や、ラインダンスを踊るときの汗なんてものが懐かしく思えて、やっぱりあの風景を思い出すと焦げ臭い感じになる。
みんな元気にしているんだろうか？
というか、幸せになったのだろうか？

トヨタ自動車、期間従業員の採用再開　昨年６月以来 – SankeiBiz（サンケイビズ）