セーフティネットとしてのタクシー業界

親に捨てられ児童養護施設で育った「ただのホームレス」で「捨て子ザウルス」のマユは17歳で、家もなければ仕事もない。同じく母親に捨てられ施設で育った佐知は、スーパーの深夜のバイトをしている20歳。同じような境遇のふたりが出会い、というか、マユが佐知のアパートに転がり込むところから始まるドラマ「佐知とマユ」を見た。

たぶん、こういう貧困女子が世の中にはたっぷりといるんだろう。佐知のようにスーパーで働くだけの能力を持っている人は良いのだけれど、マユのようにそれさえない女の子は、「まるで野良猫」のように生きなければならない。その結果二回しか会っていない彼氏と「でもやったじゃん」と妊娠、そしてその彼氏からも「邪魔なんだよ」と捨てられる。

マユはその二回しか会ってない彼氏との子供を産み育てる決心をする。でも17歳のホームレスの女の子がひとりで子供を産み育てることは簡単ではない。マユの子も「ただのホームレス」になり「まるで野良猫」のようになる可能性のほうが高い。マユの決意は貧困の連鎖、いや最貧困の連鎖の始まりでもある。

ドラマは出産したところで終わる。

ボクたちは知っているようで、たぶん、こんな貧困なんてものを知らない。年収100万円程度で生きている人たちが、たくさんいて、もがいている。

このあと、マユはいったいどんな職業に就いて子供を育てていくと言うのだろうか?この時点でもうほとんど道は閉ざされているように思う。水商売か風俗か、なんてことになるのだろうけれど、マユのようにルックスが良い女の子だと商品としての価値はあるのだろうけれど、ない女の子だと泥のように生きていかなければならないのかもしれない。

そのうち新しい彼氏と出会いそして同棲するようになると、今度はその彼氏が子供を「邪魔なんだよ」と虐待する。よくある話だ。そしてその“決意の子供”は、また捨てられる。捨てられるのならばまだいいのだけれど、殺される。結局「ただのホームレス」になり「まるで野良猫」のように生きなければならない運命なのだ。

真面目に生きたい、そう思ったところで、過去や、履歴書の空白期間を問題にするのがこの国の企業の人事だ。どれほどやる気があっても、どれほど生きたいという気持ちがあったとしても、佐知やマユの前には、何か分からない壁が立ちはだかり、その気持ちを萎えさせてしまう。学歴や資格、あるいは新卒一括採用という雇用制度自体が壁になってしまっている。

貧困女子もだけれど、中高年の雇用市場も似たようなもので、50歳を過ぎると絶望的になる。オバサンたちにはまだ売れる晩春が残っていたとしても、オジサンたちには水商売や風俗で働ける価値なんてものはなくて、売れるのは内臓とか角膜なんて臓器ぐらいなものだ。

春を売らなくても、そして臓器を売らなくても、そういった雇用難民を救ってくれるのがタクシー業界なのだ。60歳を過ぎていても新規雇用してくれるし、元気ならば70歳過ぎても継続雇用してくれる。必要なのは運転免許だけで、過去の空白なんてものもそれほど問題にならない。

それにどんな時にでも募集をしている。ボクたちが入社したリーマンショック後にも大量に募集していた。佐知やマユのような生き方をしている人たちもタクシードライバーになれば、「ただのホームレス」や「まるで野良猫」のような生き方から脱出できるかもしれない。

多くの中高年の雇用難民がタクシードライバーとして新しい人生を歩んでいる。そういう意味ではタクシー業界はセーフティネットとなっているのだ。厚労省もそろそろ「パソコン」と「介護」だけの職業訓練を見直して「二種免許」や「運送」なんて講座も増やしてもらいたいと思うのだ。

雇用難民を救済し雇用問題に貢献しているのに、その入り口である「二種免許養成」の費用を企業だけに負担させ続けて良いのかとも思う。それに二種免許だけではなくて普通免許取得なんて職業訓練もあってもいいと思う。そのほうが「パソコン」と「介護」よりは、需要があると思うのだけれど。

それとも、思考停止して、佐知やマユのような貧困女子は生活保護を受けさせるのか、ってことなんだ。

グリーンピースのおかゆ
おかゆにした。門脇麦さん、すごいね。こんな女優さんいたんだね。

4件のコメント

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    のなさん、どうも。
    まあ料理に使うのならいいか…。廃棄=消費=生産ですから、いかに食べて消費し捨てるかが経済発展の原理です。
    女性の運転は、優しい人も多いですよ。女性運転手を指名する人も多いし。
    まあ、一緒に住んでいると少なくとも家賃や光熱費はかからないので、それに家族が助け合うのが普通なんて思っているということもあるだろうし、全免は難しいのかなあ。貯蓄に対しての審査はないのでしょうけれど。
    困窮者支援制度も、家族がいるとどうなんだろうか?
    ナウでヤング、今では死語かなあ。

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     こんにちは。ワインは開けて、飲んだらちゃんと酔ったので呑めるみたいです。ただ私は、アルコールは強くないので、料理にでも使わせて頂こうかな、と…。ちなみに、チョコレートも捨ててありました。(腐ってましたが…。それはさすがに捨てました。)日本は、食糧廃棄率が高い国で、輸出にも頼ってるのに、こんな事でいいんですかね?低所得者が多いのだから、結婚式場とか、コンビ二の廃棄寸前のお弁当とか、配ってくれれば、だいぶ人が助かるのに…。タクシードライバーねえ。タウンワークに2ページにわたって求人広告だしてるの見ますけど、人手不足なんでしょうか?これは私の偏見ですが、女の人の運転て怖くないですか?先程も、近くのスーパーで、歩行者の私を轢きそうなスピードで、女性ドライバー突っ切っていきましたよ。女性に限りませんが…。今、自分がペーパードライバーなので、ドライバーに厳しいのかも…。又言いますが、朝のトヨタ系の会社員の渋滞にも、うんざりしてます。                  ちなみに、世帯収入で思い出しましたが、国民年金の免除申請に行ったら、世帯収入で計算するので、全額免除にはなりませんでした。前の職場でも、たまたま同級生がいて、(女)、悪気はないのだろうけど、「貧乏なのに?」とか、社員に「遊んでる。」とか、ちくちく嫌味を言われたので、今度は、煩わしくない職場で働きたいです。くどいけど、職種ではないかもしれませんが、人間性に、肩書きは関係ありませんね…。それと、ノルマがないところがいいです。        生活困窮者支援制度、行ってみようかしら。職安の職業相談員には、嫌な思いをさせられたし…。               ナウでヤングって、なんだか懐かしい響きですね…。   

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    のなさん、こんばんは。
    確かに男女雇用平等なんて言っても、平等ではないですからね。体力差みたいなもので差別される場合も多いのでしょうけれど。
    結婚して、というよりも、同居したら世帯収入も増えるし、それはそれでお互いのために良いのかなあ、なんて考えるときがあります。家賃も半分になるし…。
    そのワインは飲みましたか?まあ、封を切っていなければ…。引っ越しシーズンなので新品が捨ててたりしますが…。
    まだ、タクシー業界なんかだと、まだ若いほうですよ。60歳過ぎてから始める人もいるので。まだまだナウでヤングです…。
    まあ、一度タクシーも考えてみれば?相談には乗りますよ。

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     こんにちは。今年度から、生活困窮者支援制度がはじまるそうです。これは、一面的な見方で、稚拙なのは重々承知ですが、結婚した方が、幸せなのかな・・・って。貧困層は、圧倒的に女性です。なんやかんや言って、日本は、男社会です。(日本だけではありませんが…。)私は、男性の縦社会には、全く興味はありませんし、同じ土俵にあがるつもりもありません。「女の方が、楽だ。」と仰る男性は、確かにいます。ですが、女も楽ではないと思います。月一の生理はきついですし…。今日、めまいがしました。40過ぎると、容色の衰え、体力の低下をひしひしと実感します。職業訓練も、種類を増やして欲しいです。仕事は確かにありますが、低賃金が多いです。4月から、値上げする物が多いです。ため息です。恥を晒すと、近所のごみ拾いをして、紙パックのワインが落ちてたので、拾ってしまいました。今週は雨が多いです。桜は散ってしまうでしょうね。桜の名所に行ってないので、近所のお宅の桜を見ただけになってしまいました。今の気分は、柏原芳恵(漢字違うかもです)の「春なのに」といったところでしょうか…。ちなみに、42歳の春は、売れないでしょうね…。若さにしがみつくのはみっともないですが、老け込みたくはないです。くれぐれも、お体には気を付けて…。

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