冬ごもり

「この冬一番の寒気」とか「数十年に一度の強い寒気」なんて窓の外では騒いでいるようなんだけれど、空は晴れていて暖かい豊橋市内。雪は降らないにしても、きっと夜にはぐっと気温が下がるんだろう思って、だって最近の天気予報の精度は高いし、ベランダで蕾を着けたサボテンを室内に取り込む。

今年はいつもの培養土ではないもので鉢土を替えたので、夏の根腐れが心配だったのだけれど、無事に夏を越した。と思ったら数十年に一度の寒波で、今度は凍傷が気になるもんだから、急いで冬ごもり。

20年も一緒に暮らしているサボテンたちで、普通は「愛情」なんてコトバで関係性を綴ると、まあ、カッコいいのだろうけれど、なんとなくボンヤリとそこにあるって感じなのがボクたちで、そんなに一生懸命世話をすることもなく、かなり放任、人間の子どもだったらネグレクトとかDVなんてことで問題になるのだろうと思う。

たまに邪魔に思うこともあって、きっといつかは捨てられる運命にある彼/彼女たちのことを思うと、なんだか不憫でならない。じゃあ一生面倒見れば良いじゃないかと思うのだろうけれど、こっちのほうが寿命が尽きてしまうだろうし、たぶん、ボクではない誰かが育てると、50%の確率で枯らしてしまう。それも過保護によってだ。(なんて思うのは親ばかみたいなものか)

なんの因果か知らないけれど、海を渡って住み慣れないこの国でボクのような薄情な男に育てられるサボテンの哀れなこと。ほんとうは嫌々生きて「もう殺してくれ」なんて叫んでいるのかもしれない。そうして自ら命を絶てないことを嘆いていて、数十年に一度の強い寒気に凍死してしまう絶好の機会がやってきたのに、それさえ奪われてしまったことに絶望しているのだろうと思うと、哀しくなった。

2016年 シャコバサボテン冬ごもり

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