改正労働契約法とタクシー運転手について考えたこと

60歳を超えてから入職する人も多いタクシー業界、労働者の平均年齢は59歳。高齢者の働く意欲を支え、この国の雇用を支える、奇跡の業界なのだ。

いろいろな人がいる。そのことはすなわち雇用のセイフティネットとしての業界の存在意義を証明している。公共交通機関、だけではなくて、公共雇用機関、ということ、それだけでも社会的貢献度は高い。もう少し業界の評価が高くても良い、そう思う。

そんな高齢者集団の最大の悩みは、「いつまで仕事が出来るのだろうか」ということ。それは「いつまで健康で社会貢献が出来るだろうか」ということと同意語でもあるし、「いつまで社会から必要とされるのだろうか」と同義語でもある。

超高齢化社会、このような大義を持った老人が必要とされ望まれている。国家も高齢者雇用安定法などで応援はしてくれている。

ただ、「地位に恋々としがみつく」(菅義偉官房長官ではないが)人も多く、後進に道を譲ることを忘れて、私利私欲だけのために働こうとする老害がいるのも事実。高齢者が働かなくても、女性が活躍しなくてもよい社会なんて価値観はいつのまにかすり替えられて、転覆寸前の国家は、消費者と納税者を増やすことで、転覆を避けようとしている。

そもそも、年金制度と高齢者雇用安定法というのは表裏一体で、定年(年金受給)という極楽浄土の入口を喪失した社会で、その入り口を探す期間を国家が苦役(雇用安定)として与えてくれた、なんて読み方も出来る。

あ、いや、隠居できない高齢者や子育ても出来ない主婦の話は別の機会にするとして、ボクたちの業界では、とにかく働きたい人が多いのだ。

「無期転換ルールって知ってるか」
「ええ、知ってますよ」
「じゃあ、オレたちも無期転換できるのかね」
「ええっ、無理ですよ」
「だって繰り返し契約更新してるし」
「もう隠居したほうが良いですよ」
「まだまだあと5年は」
「って、75歳まで・・・」
「できればハンドルを枕に」
「ええっ、それは禁句ですよ」
「で、出来るのか?」
「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法ってのがあって、特例として『定年後に、同一の事業主または「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」における「特殊関係事業主」に引き続き雇用される有期雇用労働者』は除外される、つまり定年後の契約更新なのでダメなんですよ」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「じゃあ、違うタクシー会社に移る。なら良いんだろ」
「ええっと、たぶん、それなら良いと思いますが、5年ルールですよ」
「・・・・・・」
「70歳になって無期転換、ちょっと難しいかもしれないですよ」

ボクは心の中で、無期転換が難しいのではなくて65歳を超えての転職が難しいかも、そう思ったのだけれど、なんせセイフティネット、公共雇用機関、もしかするかもと、思った。

そんな話をしながら、65歳を過ぎたら、働かなくても安心して消費できる社会制度の構築こそが必要だと思った。消費者であるボクたちが、安心して消費できる社会の仕組みとか、年金加入者のボクたちが安心して年金受給者になれる社会の仕組みなんてもののほうが、高齢者の雇用を安定するということよりも、大切なことなのだろうと、思ったんだけれど。

高度専門職・継続雇用の高齢者に関する 無期転換ルールの特例について
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