33日で一周した遍路の話(29日目の4)
17時少し前に西予市役所そばの郵便局に着いた。間に合った。途中卯之町の町並みをゆっくり見ることもなく、走るように通り過ぎた。走り遍路…。それから国道56号線を北上、17時30分東洋軒駐車場にあるへんろ小屋宇和に着く。もうすでに暗くなっていた。夜が日毎に早くなる気がしていた。そして寒さも増している。
(43番札所明石寺にて)
荷物を置いてその先のサンクスに買い物。18時、ミニタワラランチとシーフードヌードルの夕食。日曜日のレストラン東洋軒は賑やかだった。へんろ小屋のすぐ横に、前に駐車して、家族が恋人たちが食事に向かい、そして戻ってくる。幸せがそこに溢れていた。そしてボクは静かにそんな声を聞いていた。それも修行だと思った。幸せとは、日曜日の夕方に具体化する。ひとり、サザエさんを見ていたあの頃を思い出す。サザエさん症候群と言われる、期間工たちの日曜日の夕方を思い出していた。
19時になって寝袋に収まる。と、自転車で旅をしている男がやってきた。「こんばんは、誰か来たら違うところに泊まりますから」とその男は言った。へんろ小屋に遍路ではない人が泊まることは、良いことではないのだろう。男はそのことを言っていた。
「僕も遍路だったのですよ」と男は話し始めた。「33日でまわりました」と、そしてその後に痛めた足や疲れた身体を癒して、自転車を買って、もう一周回っているとのことだった。「遍路のときは名所をみることもなく観光をすることもなく、ひたすら歩きましたから」と男は言った。
昼夜歩いたそうだ。そして納経もすることなく、とにかく寺のある場所を巡ったそうだ。それも遍路なのだろう。だから男は菅笠も金剛杖も、まして納経帳も納め札も持っていなかったそうだ。
「スタンプラリー」と表現した、そしてよく表現される巡礼への懐疑から、そういった遍路のスタイルをとる人も多い。あるいはプロ遍路の多くもそういったスタイルだ。巡礼というよりも停滞、あるいは逆に、飛ばして、とにかく四国にいることを目的とする。
男は自分のスタイルでの旅、33日間がどれほど大変だったかを説いた。そして自分がこの一年旅を続けているということを説明した。40を前にしたその男と、0時前まで話をした。というか、22時過ぎたら男の話を聞くだけで、ボクは眠くてしかたなかった。すこしうんざりしていた。男の話にも興味を持てなかった。
どういうスタイルでもいいのだけれど、その善悪を説いた時点で終わりなのだ。(そしてこうして書いているボクも終わりなのかもしれない……)
0時少し過ぎに寝た。雨が降っていた。少し寒い夜だった。そして長い1日だった。
(国道沿いのへんろ小屋では夜眠れない、外は雨……ヘンロ小屋16号宇和にて)
この日の行程:うわじまユースホステル(宇和島市大超寺奥丙)~ヘンロ小屋16号宇和(西予市宇和町上松葉)
この日の札所:41番龍光寺 42番佛木寺 43番明石寺
この日の宿泊:へんろ小屋
この日の出費:1,246円(納経代、お賽銭別)
・サークルK和霊店
ミニタワラランチ 295円
スナックパンチョコ8P 128円
(小計 423円)
・サンクス宇和れんげ店
ミニタワラランチ 295円
シーフードヌードル 168円
(小計 463円)
・自動販売機
缶コーヒー×3 360円
(上:仏木寺~歯長峠入口まで)(下:歯長峠~)
(歯長隧道あたりが通行止めのようで、地図上に示すことができませんので、分割して掲載しています)