タクシーとライドシェア

タクシーとライドシェアの対立について考えてみます。

「タクシーがない、来ない」という問題から、ライドシェア解禁論議が始まりました。不足しているだけではありません。運賃が高い、サービスが悪いという問題になり、対立が激化しています。ついには「個人タクシーってなぜ許されてるのか意味がわからない。あれがOKでライドシェアがNGな理由ってなんですかね?」という個人タクシーにまで飛び火しています。(必至なのですが)

需要と供給の不均等

タクシー業界の問題の中心は、需要と供給の不均等です。それは、運転手不足による実働率の低下が主な原因です。不足した理由は、コロナ禍での大量離職から回復できないことです。台数規制ではありません。

ただ、運転手が増え、実働率がコロナ禍以前に戻ったとしても、需給ギャップ解消は難しいでしょう。なぜならば、ピーク時の需要に合わせると供給過多になるからです。そのピークも突然現れます。災害、天候、イベント、電車やバスの運休、1日の内でも2倍ものギャップが生じます。1

時間帯別タクシー供給量グラフ タクシーとライドシェア
時間帯別営業回数グラフ 資料を元に田原作成

運賃と労働条件の懸念

運転手の反対理由は、ライドシェアの解禁による競争が、賃金の低下や労働条件の悪化をもたらす可能性があるためです。前回述べたように、出来高制歩合給の賃金制度は、需給に大きく左右され、過当競争が賃金の低下をもたらします。

業界や事業者も同じです。過当競争による廃業倒産が予想されます。

利用者の視点

利用者は、便利で手頃に価格の移動手段を求めることが多いでしょう。しかし「タクシーがある」ということが前提ではありませんか?公共交通機関、移動インフラがあり、交通権が守られている状況下で、さらに便利で廉価な移動手段が欲しい、ということではないのでしょうか。

交通権と人権問題

しかし、ボクたちが考えなければならないのは、移動サービスを受ける権利、つまり交通権という人権問題です。タクシーのない自由競争の中で、交通権を確保し、安全性や継続性を守ることが出来るのか、ということです。ライドシェアだけで、交通権が守れるのか、ということです。

安全に交通権が確保できるのなら、ライドシェアでも良いのです。どの交通手段が提供できるか、ではなく、提供そのものができるかどうかの問題なのです。

最適解を見つける難しさ

最適解はタクシー業界を維持しながら供給不足を解消する方法でしょう。しかし、運転手と事業者の収益に関連する問題があることは、これまで述べた通りです。

最終的に、タクシー会社によるライドシェアしかありません。すでに運行されている「交通空白地自家用有償運送」の制度を利用することになります。

需要と供給の調整、適切な規制、労働条件の保護など、多くの側面を考慮に入れながら、公共交通機関としてのタクシー業界を維持しつつ、ライドシェアを含めた移動オプションを導入する方法を検討することが求められると思います。

いえ、すでに国も業界もその方向なのです。2

事業者協力型自家用有償旅客運送の活用促進概略図 国交省 タクシーとライドシェア

出典:ラストワンマイル・モビリティ/自動車DX・GXに関する検討会3

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タクシーの賃金制度とライドシェア

旅客運送の制度改善12策 – タクシー業界 – 道中の点検

自家用有償旅客運送ハンドブック

  1. ライドシェア論議で出ている利用者の不満を放置するのではなく、解決する姿勢も求められます。解消が困難でも、やらなければならないでしょう。
  2. 事業者協力型自家用有償旅客運送の活用促進
  3. ラストワンマイル・モビリティ/自動車DX・GXに関する検討会

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