大坂遍路道(18日目の1)

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例えば朝の気温が5度だとしても、秋と春とでは、春のほうが暖かく感じるのではないかと思う。季節が暖かい日に向かっているか、寒い日に向かっているかで、身体も気持ちもそれに対応しようとするのだろうし…。

朝露に曇るカーブミラーに写るボク

朝露に曇るカーブミラーに写るボク 大坂遍路道にて

大坂休憩所の朝は、犬の散歩(人の散歩に犬が付き合わされているのかもしれないけれど)の声で目がさめた。いつものこと、なのだけれど、なんだか決まりの悪さを感じる。と言ってのその日は4時30分だった。まだ朝の匂いもしなかった。
ボクはぼんやりしながら、小屋の側にあるトイレに行った。そして洗顔、歯磨き。それでもまだ5時を少し過ぎただけだった。寒い。パッキングを済ませる。そのまま夜が明けるまで座っていた。

6時10分、少し明るくなったところで出発した。川沿いの道路。冷え切った空気が、その川面から道路に忍び寄っていた。冷えたせいか膝が痛かった。引きずるように歩いた。

四国横断自動車道阿南中村線の橋脚の工事をしていた。その柱がまるでなにかの墓標のように見えた。その場所にはまるで馴染んでいなくて、例えば冬の日の立ち枯れたヒマワリのようでもあった。そこに造ったというよりも、そこに置いたという感じがした。

大坂遍路道はその橋脚を過ぎて奥大坂、大坂谷川が谷となり細い流れになるところで、一気に高度を上げる。地図に「降雨の歳は滝の流水で通行不能の場合がある」と書かれている滝のあたりから七子峠まで高度差200メートルを這い上がるように登ってゆく。途中竹林、キーキー」と竹の擦れ合う音に驚かされる。人の気配がしなかった。道に踏み跡はあったとしても…。

8時、七子峠着。きびしい登りだったのだけれど、フリースを着たままだった。風も強い日だった。ヤマザキスナックスティック9本入り(一昨日買ったもの)とミルクティーで朝食。カップコーヒーも飲む。少し休憩して遍路道を通って影野をめざす。急登で膝が痛みが増していた。それでも、人に見られていると思うと、キチンと歩くようにした。なぜだかそうした。それでも、変な動きになっていたのだろうと思う。

下り坂、時間とともに気温も上がっていったし、ボクも汗ばんできた。途中フリースを脱ぐ。身体が温まると、膝の痛みも薄れていった。峠で飲んだ鎮痛剤が効いてきたのかもしれないと思った。

暖かくなりそうな予感が少しだけ気持ちを軽くしていた。9時10分、影野、六十余社へんろ小屋着。休憩、というよりも、「もう歩きたくない」と日記に書いている精神状態だったのだろう。歩きたくなかった。そこに泊まろうかとも考えていたのだけれど…。

七子峠から来た道を振り返る、建設中の四国横断道

(七子峠から来た道を振り返る。建設中の四国横断道の橋脚)

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