野根海岸で野宿、室戸と夕陽の見える浜辺にて(9日目の4)

野根海岸、内妻海岸、連続して海辺での野宿になった。

宍喰温泉を14時30分に出発した。

温泉に入ったからだろうか、痛みは減っていた。しかし、緩んだ筋肉が重く感じた。もう室戸岬までは40㎞という位置にいた。明日には着けるかもしれないと思った。そしてボクはいつの間にか高知県に入っていた。水床トンネルの中間地点が県境だった。

県境を越えるという感激みたいなものもなかった。そして、発心の道場から修行の道場に入ったという宗教的な胸の高鳴りもなかった。国境を越える時のような緊張感、そして煩雑な手続きも必要なかった。ボクは同じように歩いていた。

東洋町の海岸は綺麗だった。

16時に白浜海岸で休憩をした。設備の整った海岸だった。観光客だけではなくて地元の人たちもその海岸に集まっては、帳の降りる前の景色を前に今日の出来事を話しているようだった。もう何年も前から同じことが繰り返されているのだろうと思った。ボクは少し離れたところでバターピーナッツを食べた。そして立ち上がった。寝る場所としては人の気配が多すぎたし、儀式のような繰り返される風景の中に立ち入ることが憚られた。

相聞トンネルを抜けて坂道を下ると、ボクは海岸に出た。室戸岬が綺麗に見えた。闇が全てを覆い尽くしてしまうその前に、涅槃像と見まがうほどの全容を海に横たえていた。ボクはそこで立ちつくす。手を合わせた。そうすることが正しい行いのように思えた。そして高知に来たということを実感した。

野根海岸の夕暮れ 遠くに見える室戸岬

その実感とともに、涙が溢れてきた。ここに来るまでにもユリさんのことは毎日思いだしていた。ボクはそこに来ることが予め決められていたことのように感じた。運命とはそういうものだ。人は死ぬ。そして空へかえる。土のかえる。海にかえる。循環の中にボクたちはいる。宇宙とはそういうものだ、と、ボクは考えていた。

朝陽の登る方向にテントを張った。

野根海岸で野宿になった。

ボクは自動販売機で買ったパン2個とおにぎり、ブラックサンダーを食べた。それでもお腹は空いていた。闇がボクの存在を隠してくれた。闇の中にいるほうが安心できた。暗闇の中、波音だけが増幅していった。

野根海岸でテント泊

空からeyeましょう 東洋町- YouTube 東洋町の海岸線を空撮しています。野根海岸は1分27秒からです。


この日の行程と費用

  • 行程:内妻海岸(海部郡牟岐町)~ 野根海岸(安芸郡東洋町)
  • 札所:なし
  • 宿泊:野根海岸テント泊
  • 出費:1,929円(納経代、お賽銭別)
    • ローソン海陽町杉谷店
      • レタスハムサンド 245円
      • デカウマソーセージ 113円
      • おにぎり辛子高菜 110円
      • おにぎりカツオ 105円
      • おにぎり紀州梅 105円
      • おにぎり日高昆布 110円
      • ブラックサンダー 32円
      • キシリミルク飴 100円
      • 単三電池2P 289円
      • (小計 1209円)
    • 自動販売機
      • コーヒー 120円
      • スポーツドリンク2本 300円
      • 水 100円
      • 菓子パン2個 200円

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