健康ランド難民のことを先日記事にしたのですが、問い合わせがありましたので、この機会にもう一度考えて見ました。健康ランド難民

ネットカフェ難民が注目されていて、何度かテレビでもネットカフェで寝泊りしてそこから仕事に行く人たちのことが放映されました。ネットカフェが増えたのは最近のことで、非正規雇用者やホームレスが社会問題化していき、それらの人びとが増加していくとともに、受け皿としてネットカフェの出店も増加していったように思います。ネットカフェが簡易宿泊所としての役割を果たしてきた、そして果たそうとしているということです。

ネットカフェ以前にも、難民と言われる人たちがいて（恐らくバブル後にそれらの人びとは徐々に増加していったと思うのですが）、そういった人びとの簡易宿泊所として健康ランドが利用されていました。地方の町でさへ、10年前には健康ランド難民がいましたし、健康ランドの駐車場には風呂だけを利用する車中泊難民がいたということを聞いています。

愛知大学前下車、徒歩２０分、やっとゼビオが見えた

簡易宿泊所というのは、

かつては通称ドヤと言われていた。これは宿（やど）を「人が住むところではない」と自嘲的に逆さまに読んだのが始まりといわれる。日雇い労働者が多く、彼らが寝泊まりする簡易宿所の多く立ち並ぶ街は「ドヤ街」と呼ばれた。こうした場所には労働者を求めた日雇いの求人（手配師）が毎朝多数やってくることから寄せ場とも言われ、横浜の寿町、大阪の釜ヶ崎（あいりん地区）、東京の山谷が三大寄せ場として有名である。こうした街は、戦後から高度成長期の間に全盛期を迎えた。他にも名古屋の笹島、神戸の新川、京都の九条南部、福岡の築港、広島の駅南口、川崎駅周辺にもドヤ街が形成されたといわれているが、現在では都市再開発や区画整理などによりほとんど消滅している。
簡易宿泊所

であって、その日雇い労働者の多くは建設業に従事する人たちで、高度成長期後も1980年代にはまだ仕事もあったようで、1990年に入りバブルが崩壊すると仕事もなくなり、多くの日雇い労働者が簡易宿泊所に泊まることもできなくなり、路上や公園などのホームレスになったといわれている。2003年の調査では全国で２万５０００人、その約６割が建設業が前職だったという結果が出ています。

ですから、簡易宿泊所には手配師がやってくる労働市場があって（寄せ場）、そこに住んでいれば、なにかしらの仕事にありつけたのでしょうし、仕事がなくても場所があるという安心感や、仲間との連帯感もあったのだろうと思います。

それが簡易宿泊所というものだったのですが、そういった場所が「ほとんど消滅している」状態で、そこを利用していたひとたちはどこへ行ったかと言うと、年齢的にもホームレスにならざるを得なかった人が多かったと思います。寿町や釜ヶ崎、山谷という三大寄せ場は姿は変わったとはいえ残っていて、地方のほうがそういった困った状況になった人が多かったのではないかと思っています。

そのような中には、バブルの頃から出現し始めた健康ランドという簡易宿泊所へと転居していった人もいたことでしょう。また初めから簡易宿泊所として健康ランドを利用し始めた人たちも現れたのだろうと思います。

２０００年代になってからは、自由市場主義こそが全てというように規制緩和が行なわれました。その犠牲者であるタクシー運転手や、その競合相手である代走運転手が、健康ランド難民になって、深夜勤務に従事するという姿を、前回の「健康ランド難民」に書きました。その頃にはまだまだネットカフェというのは少なくて、そしてあったとしても簡易宿泊所として利用する人も少なかっただろうと思います。そういった需要も少なかったでしょう。

そのような難民、ワーキングプアと呼ばれる人たちはいたのですが、まだまだ問題になる以前の時代です。総務省の調査では、1997年には517万世帯であったものが2005年には800万世帯前後と発表しており、全労働者における割合は33％とも言われています。新自由主義が難民を大量発生させた時代だと言っても良いでしょう。

ちょうどウィンドウズ98が発売され新しい時代の幕開けです。そしてあっという間にネット時代は拡大していきました。うまい具合に、なんとも奇跡的に、時代が生み出した難民を受け入れる場所である、ネットカフェの開店ラッシュです。年々増えるワーキングプワと言われる人びとの数と比例するようにネットカフェが増えていったのです。みんなが分からないように、ごく自然に貧困層は場所を確保したのです。

ほんとうならばドヤ街に溢れている難民は、ひっそりと健康ランドやネットカフェに暮らすようになり、あまり人目につかない生活を送ることになったのです。ドヤ街が全国に分散されて出現した瞬間です。どのドヤ街を利用するかは、その地方の店舗数や交通の便で違ってくるでしょう。それに前回書いたのですが、深夜勤務ならば健康ランドを利用したほうが安上がりになるでしょうね。両方を使い分けるという難民もいるかと思います。

そしてドヤ街に付きものだった青空労働市場と手配師は、携帯電話へと姿を変えただけなのです。ネットカフェや健康ランドを舞台に人身売買にちかい、日雇い派遣が行なわれているのです。手配師のバックには国が付いていて、企業とぐるになって国際競争力とかなんとか因縁をつけては、ピンはねしているのですよね。

ネットカフェ、それも都心のものだけがクローズアップされていますが、実は全国にドヤ街が分散されているだけのことなのです。そして、健康ランドというドヤ街にはすでに１０数年前から難民が住んでいて、もう誰も把握できないほどの国民がちょっとしたことでホームレスになってしまうような生活を送ってることが、良いことなのか悪いことなのかということを「格差があるのであれば」なんてすっ呆けてないで、国民に答えるのが先だろうと思っているのです。