離愁(2)

最後の日はニ直、そして残業1時間。
ロッカーの鍵、従業員証、保険証を返す時の、なんというか、少し張り詰めた気持ちのは、少し緊張している時と似たような感じもしたのだけれど。
最後の日にPコンをしてもらうのは、うれしいもので「もう残り半日かあ」なんて少しだけ気持ちが哀しみの方向へと傾く。もう1日あったりすると、なんとなく「さよなら」の感じが薄らいでしまうと、思う。
それでも、終わったとか、という達成感はなくて、ただただ明日のことを考えていたんだ。
みんながね「お疲れ様でした」なんて言ってくれて、Cくんは握手までしてくれて…。GLと前のGLもいて、そんで「ご苦労様でした」って言ってくれて。
この3年間は、無遅刻無欠勤だったのだよ。
それだけが、ボクの出来ることで、仕事もそれほど出来る男ではなくて、後工程のTさんにはかなり迷惑をかけてきて、それでも気を使ってくれて…。
年休も、みんなには「権利だから」なんて書いているけれど、前回は6日も使わなかったし、今回も5日残して、そして今回はGLから「残してもしかたないから」と貰ったようなもので…。
期間工なんてね、半年とか1年だけなんだから、そんなもんだと思っている。
痛みもずいぶんと我慢してきたんだ。診療室にも行かなかったしね。それは本当はダメなことなんだけれど、それはボクの美学でもあるのだけれど…。

離愁
窓の外にはいつも見ていた風景で、そのことがなおさらボクの気持ちを悲しくさせるようでした。もう何百回も見たその風景も見ることができないと思うと、ボクが想像していたよりも最後の送迎バスは悲しいものになりました。
Sくんと一緒に帰りました。Tさんは寮が違うのでバス停で別れました。Mちゃんは年休でした。あのね、別れるのってのはけっこう後からくるもんなんだよ。

ニ直のバスは、も少し悲しいものだったのだけれど…。
ただ今回は期間従業員としての離愁とは別に、この街から離れることもあって、そのふたつの別離という「悲しみの素」から逃げられないでいるのだけれど…。そしてそれは、かなりの疲労感を伴っていて…。住む場所がまだハッキリしないことや、それでもここを明日には出て行かなければならないこと、そんな苛立ちみたいなものが重なり合っているのだよ。もう何もかも投げ出したくなるような、気持ちだったり…。それは、ボクの将来というかなり不確かなものからの、容易な逃走をも意味していたりしているのだけれど…。

ボクは寮の部屋に戻って、そこもいつもの風景で、思い出だけがそこいらに散らかっていて、そのひとつひとつ、例えばあの寒い日の笠山や、桜が散りそうになった春の雨の日、夏が来て同期の人たちがいなくなったあと、夏休みの18きっぷ、その後の長野や糸魚川までの旅なんてことが、まだまだ声をかければ返事をしてくれそうなぐらいで、そしてその思い出たちはこの部屋の住人となっていて、ボクの後を追いかけるのではなくて、ボクにさよならを言う役回りになってしまっていることに今頃気付いているのです。
ボクはその部屋の中で、何をすることもなく、実は、少し恥ずかしい話なんだけれど、かなりの涙を流して、そしてその涙の中に嫌なことだけではなくて楽しかったことまでも入っていて、別れの悲しみもなんだけれど、なにかが終わった瞬間の悲しみというか、ちょうど紅葉していく木々の終わりのような離愁に打ち震えていたのです。
多分ね、もう二度と出逢わない瞬間てのがあって、それは送迎バスの中で見た夕陽とか、二直の昼食の時に工場の上に出ていた月の姿なんて風景だけではなくて、その日その時のボクの心もようなんかで、別れるために出逢うような期間工たちの関係もそうなんだろうと思っています。
実はボクたちは「悲しみの素」ってのを嗅ぎ取る能力を持っていて、それを避けるように生きようと思えば生きられるようにできるのだろうと思います。それでも悲しみや淋しさというのが人の心にある限り、その「悲しみの素」から避けられないようになっているのも確かです。
出逢いなんてのも、その「悲しみの素」の一要素なのでしょうね。
「花に嵐のたとえもあるさ、さよならだけが人生だ。」

離愁」を再度掲載するかたちになりました。
そしてまた哀しみは訪れる。
きっと、その繰り返しなのでしょうね。
それは、呼吸のようであり、胸の鼓動のようであり。
じゃあ、また。ありがとうございました。

また終わったよ、まるお。

26件のコメント

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    管理人さん、遅くなりましたが本当にお疲れ様でした。m(__)m
    >タマさん
    はじめまして。
    俺の田中糞寮での経験では国家試験勉強との両立なんかは
    かなりの強い意思がないと難しいと思います。
    寮と隣人が当たればOKなのかもしれませんが。
    良い可能性は低いと思います。

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    今日、自分の住んでいる街で選考会があるのですが。もし、トヨタ期間従業員になって知らない県に行って国家試験勉強が出来ると思いますか?今のアパートに、いられなくなるので…恐れ入りますが、よろしくお願いします。

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    期間満了…お疲れ様でした。
    花に嵐の…さよならだけが人生だ
    ボクはこの言葉を寺山修司の文庫で知りました。別れるのはつらいけど、それ以上の出会いも、このブログを通して有ったと…
    トヨタって…(人によって感じ方が違いますが)期間工生活もまんざら悪くないかと。
    このブログ…出来ることなら続けて欲しいです。キット皆そう思ってますヨ!
    いろんなことに疲れたら…また赴任して下さい!
    管理人さんに幸あれ!

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    コメントがたくさんで書きづらい…。
    一期一会?いや、一期一別。皆、最後はひとり。
    それだけです。
    トヨタは…疲れますね。
    全く新しい道もよし、四度目のトヨタもよし、死ぬその時まで生きればいいのですよ、考えすぎず。
    おもしろき
    こともなき世を
    おもしろく(東行辞世)
    それじゃあ、またm(_ _)m

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    以前に一度だけコメントさせてもらったprimajiです
    いつもあなたの写真をみて
    物悲しく、それでいて前向きな印象を持ち
    拝見していました
    また、素敵な写真を見れる日を楽しみにしています。

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    僕の心の支えになりました。本当にご苦労様でした。

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    お疲れ様でした。
    このブログでいろいろ教えてもらいました。
    僕はまだ期間従業員で頑張って行こうと思います。

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    お疲れ様でした。

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    なにはともあれ・・・・
    『Good Luck!』

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    満了まで頑張るぞっ

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    笠山さん。あたし、ブログ始めました。

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    突然長男が会社を辞め「トヨタに行く」と家を出、田原に住んで二年、どんな所でどんな仕事をしているのか田原笠山さんを通して息子を感じていました。毎日ここへ来るのが日課でしたから、寂しいです。
    いつもいつも頑張っているあなたをギュッと抱きしめてあげたい、今どこにいるの?信州へおいでよと声をかけてあげたい。
    半世紀生きてきて幸せを感じる日は本当に少ないですが、それでも生きている。神様は苦しみと同じだけ幸せも与えてくれると信じて・・・私は生きている。健康で生きている事が何より幸せなのかもしれないね。元気でいれば、またあなたに会えるかな。

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    以前日経ビジネスかなんかで読んだけど、トヨタという会社には創業一族の豊田家家訓みたいなのがあって、「社員を簡単に辞めさせない」という項目があるらしい。
    期間工の再延長期間を2年11ヶ月にしているのも「3年」になると労働基準法で「3年を超える臨時(派遣)社員は正社員にしなければならないという」という一項目があるからだと
    思う。
    いったん雇い入れた正社員は他の会社のようにリストラなどで辞めさせる事ができない為、好景気で仕事が増大した場合は期間工や派遣の臨時雇用で調整弁にしている。
    逆に言えば一旦正社員になってしまえば、ほとんどリストラの可能性がない安定した職場ということもできるけれど、その分、終身雇用の風とおしの悪さに悩んで心の病気になる社員も多いのだろうな。

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    >>期間従業員kさんへ  期間従業員の就職斡旋の事について、教えてくださりありがとうございます。3年働いても途中数ヶ月間が有ると、カウントが1からになるのですね。 数ヶ月のブランク位・・・・その方の、仕事振りや人柄で判断して正規従業員にふさわしいか考えたほうが企業はまともな社員を得られるのにナー  私のつたない質問に答えてくださり嬉しかったです。

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    いいお天気だよ。
    人生なんて、二度と出逢えない瞬間の繰り返しじゃん?
    管理人さん自身がきっととてもよく知ってると思う。
    哀しさも淋しさも、喜びも怒りも、どの瞬間も
    過ぎちゃったら二度と同じものには逢えないもんね。
    だから、生きてるときっと無闇に淋しくなるのね。
    一瞬一秒が喪失の連続のような気がしてくる。
    でも、一瞬一秒が何かを得ている連続と考えようとすれば
    それもまぁ、不可能ではないかも。
    哀しみも喜びも楽しさも、ずっと繰り返し訪れるよ。
    じゃ、また。

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    2年11ヶ月の満了予定者へは、満了の3ヶ月前位から、関連会社等への正社員斡旋のシステムがあります。
    ただし、デンソー アイシン ダイハツ なんてのは、ないに等しく、孫請が多いです。そして、確実に就職できるわけではないようです。あくまでも紹介です。
    田原笠山さんは、2年と1年の期間のようですから、該当されてないでしょう。

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    お疲れ様でした。
    僕がこのブログを知ってから、早2年。笠山さんに送った、僕の愚痴とも取れるような内容を記事として取り上げて頂き、また真正面から受け止めて論じて頂き、感謝しています。
    工場は違えど、同じトヨタの期間従業員として笠山さんのブログは元気の源でもありました。
    いつかまた、お会いできる日を楽しみにしています。

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    私もすっかり離愁感に浸ってしまっています。もうかれこれ2年はあなたの文章と一緒に暮らさせていただいていたので・・・・・。明日からはなんだか一人取リ残されるような寂しさに襲われています。でも、自分の事ばかり考えないで管理人さんの、新たな出発を祝います。ずっと期間工で居て良い訳ではない方なので。それにこのまま続けられると、身体を間違いなく壊されそうですし。世界に通用する素晴らしい製品を作り出された事に、誇りを持って下さいね いくらラインの一員と言っても、その誰か一人でもおかしなことをしたら絶対世界の一流品は生み出し続けられないんですから。心にジンと触れるブログに出会え、インターネットのよさを知りました。私の知らない世界も教えていただきました。管理人さんを「人間として付き合いた人」と多くの方が感じてこのブログを読まれていたことが分かり、なんだか日本もまだ捨てたものではない!!と嬉しい。他の期間工のブログには下らな過ぎてどうしようもないものも見受けられるので。疑問を一つ。どなたか教えてください 管理人さんは3年勤められたのに、なぜ関連会社へ社員として就職の斡旋されないのでしょうか?ご本人が希望されなかったのでしたらよいのですが (管理人さんには他の仕事のほうが似合っているとは思いますが、それでも努力はその場でも認めて欲しい)どんな形でも良いので、落ち着かれたらみんなに連絡を下さいね。ありがとうございました。感謝しております。

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    お疲れ様でした。
    このブログを拝見し多分、2年と少しでしょうか。
    管理人さんの、写真とコメントに何度救われたことか。
    どうかお元気で。

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     往く川の流れは絶えず・・・、胸を張って良いと。

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    お疲れ様。
    手が痛いのに良く頑張りました。
    きっと大きなタコがあるのではないでしょうか?
    自分の満了まで明日からまた頑張ります。
    心で泣いて顔で笑って・・・。
    いつでも帰ってきてください。
    本当にお疲れ様です。

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    お疲れ様でした。
    本当に本当にお疲れ様でした。

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    ・・・お疲れ様でした。
    自分にはそれだけしか言えません。
    では、またお会いする日まで。

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    満了お疲れさまでした。
    このブログに救われてきた身なのに、
    今の管理人さんに何も手助け出来ないのが悲しいです。
    でもしかし!今後管理人さんの身に起こる幸せを、心から祝福出来ることは確かです!
    皆がお互いに、生きる支えが見つかる事を心から祈ってます。
    本当にありがとうございました!!
    #日記は当然のように再開してくださいね。
    お待ちしてます!

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    お疲れさまでした。
    ゆっくり休んでくださいね。
    このブログが続くこと祈っております。
    どうか、「空」を恐れずに…
    全て埋める必要など、ありませんから…
    田原笠山さんが、しあわせになれますように。

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