うちなんちゅ

前の席には沖縄出身の女の子が座っている。
沖縄の雇用状況も深刻で平成19年の完全失業率が7.4 %(全国平均は3.9 %)で、若年層になると12%台となっている。そんな状況なので、故郷を離れて就職、、派遣労働や期間工で働く人も多いのだろう。
故郷を捨てるのだろうか、故郷を離れるだけなのだろうか、いずれは帰るという気持ちはいつも、どこにいっても、持ち続けているのだろうと思う。それが故郷というものなのかもしれない。本当は故郷に住んで、本当は親や兄弟の近くにいて、住み慣れた場所で、暮らしたいとほとんどの人は思っているのだろうと思う。家族が引き裂かれる状況にあるのが沖縄なのだろう。いや家族全員が沖縄を離れて、職を求めて移住している場合もあるのだろうね。
沖縄出身のYちゃんも、仕事を求めて故郷を離れた。そして派遣の仕事を辞めて職業訓練を受けている。もうこっちに住む覚悟を決めて、自分でアパートを借りたのだろうと思っている。正社員での仕事を探している。
若い女の子が遠く故郷を離れて暮らすこと、それも失業者として暮らすことは、どれほど大変なことなのだろうか。就職して、あるいは、入学して地元を離れて暮らすのとはかなり違っていて、上司や同僚、学生課や同級生なんて仲間はいないし、緊急時に親が駆けつけてくるにはあまりにも離れ過ぎている。
思うのだけれど、そんな沖縄出身の女の人が、いったいどれほどいるのだろうか?
沖縄だけではなくて、九州でも北海道でも東北でも四国でも、その数の違いはあっても、状況ってのはほとんど同じようなものなのだろうか。生まれた土地を離れて、住み慣れた街を離れて、そして誰も知らない街で、暮らすということは、いったい、そのことは普通なのだろうか。
自らの意思で「離れたい」と思ったのとは違うということで言っているのだ。
就職で離れるのとも、また違う。結婚して離れるのとも、違う。たまたま、派遣社員として働いたことがきっかけで、その土地に住む、ということ、そしてその土地が沖縄よりは雇用状況が良い、という理由で、故郷の次に住み慣れた街に住もうとすること、そういう決心をまだ20代の女の子がしなければならない、ということは、ほんとうに普通のことなのだろうか。
外は雨が降っている。秋の雨は、気だるくて、たっぷりと雨を含んだ空気が身体を地面のほうへと押さえ込もうとする。体内の水分濃度が飽和状態になるのだろうか、身体も重い。低い気圧だから、かもしれない。
学校の近くのスーパーで、この街では安いと言われているスーパーで、Yちゃんと会う。ボクも彼女も自転車で、外の天気が気になっている。雨宿りなのか買い物なのか分からないほどの時が流れる。それでも人の多さがそれを許してくれる。ボクたちは、その「時」と「人」との間の中で外の天気を気にしている。確実に雨は降るし、時間も確実に過ぎてゆく。
幸せということは、いったいどういうことなのか、それが分からなくなっていて、例えば、そのスーパーで外の天気を気にしている、その時間が幸せだと感じてしまう、ことは、良いことなのだろうか、と、考えていた。
Yちゃんがメールをしていて「誰に?」って聞くと、学校の友達にボクと会ったことを報告していると言う。幸せそうな顔をしていたし、いつものように楽しそうに笑っていた。
どんな空間にいても、人は幸せを感じるように出来ているのだろうと思う。それが人なのかもしれないと思う。
ボクは小降りの雨の中を帰ってきた。そして栗羊羹を食べた。少しだけ泣けてきた。

5件のコメント

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    派遣の現実さん、こんばんは。
    お勧め出来ないのは、分かっているのですが、食えない状況になっては、と言うことも考えています。
    派遣の仕事もなかったら、という恐怖感もあっては、派遣の仕事があったとしたら、うれしいと思い、感謝するのかもしれないと、思ったりもしています。
    強気でいられるうちは良いですけれどね。
    失望の前に絶望もあったり・・・。

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    派遣で働くのはお薦め出来ないです。社員や契約社員もしくは準社員から人間扱いされないです。事務にしろ、軽作業にしろ酷い。仕事選びはあきらめない、失望しないことです。ワーキングプアにならないためにも。グッドウィルは酷かったです。フルキャスト、おしまいかも。テイケイ、横浜、横浜西支店閉鎖しました。

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    >うみんちゅさんへ
    派遣を必要としている人もいるのは確かですよね。ま、製造業に派遣されるようになってから、少しおかしくなってきたということもあるのでしょうか。
    やっぱり派遣とかで働くしかないのかなあ、なんて今日も話ました。保証人とかもいるし。ちゃんとしたところは、「どうして」なんてことが多くなるし、疑問に思う事が多くなると、採用も難しくなるのかなあ。
    >まことさんへ
    そうですねえ、帰ったところで仕事がないのなら、こっちに住んで探すほうが得と考えるのだろうし。まだ派遣の仕事でもあるだけ、ましなのかもしれないとも、考えています。
    弱気になるかなあ。
    弱気になるというか、そんなに求めなくても良いかなあ、なんて考えています。家賃光熱費、そして食べるだけぐらいなら、なんとかなるかなあ、なんて考えると、少し気が楽になります。
    たまに、ま、旬なものを食べたりするだけでも、幸せかなあ、って。

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    地方求人格差というかもうこれは普通の事じゃないですね。
    誰も知らない土地に期間雇用として来て住み
    仕事がないゆえに失業しても残る不安
    でもこの記事を読んでいてとても心温まるものがありました。
    幸せとは個人の価値観です
    幸せとそう思える瞬間があることが幸せかと。
    そしてこの写真のような青空が雨の中、幸せに思えたりとか。
    何気ない日常がとてもいいです。。。

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    派遣会社は今は大変です。私がいた派遣会社は、今年に入り2箇所閉鎖しました。辞めてもお知らせメールが届いてびっくりしたけど。故郷を離れて仕事を探すのはとても辛いことですね。

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