ひきこもれ-木漏れ日の引き蝙蝠

「生活保護?そんなもの恥ずかしくてもらえないよ」
とひとりの中年男性がハローワークのロビーで大声で話していた。

ほとんどの人が満開の時期が好きだね。あれがどうもボクには分からないんだけれど…。
男性は「そんな金貰ったら最後、車はダメ、エアコンはダメ、貯金はダメ、ソープはダメ、は~ダメダメで、貧乏たらしく生きなきゃいけないぐらいなら、時給700円で6時間のバイトをして正々堂々と生きていたいもんな」と言った。
なるほど、旅行もダメなんだろうし、ましてや結婚もダメなんだろうなあ、とにかく金がかかることはダメなんて思うと、それは人間失格という宣告を受けたようなものなのかもしれないと、考えた。
だって自由に消費できないんだよ。パソコンもデジカメもダメなんてことになると、図書館で30分ネット繋いで、ピンホールカメラか日光写真でも撮ってろってか、という話になったり…。それも楽しいか?
そして思った。派遣村が教えてくれたこと。それは負けたもん勝ち、ということを。あるいは努力はまったく報われないという事実を。少しだけあった努力への信憑性なんてのは、あの時点で壊滅してしまったのだろうと。
その男性が言う「そんな金」というのを貰う基準、要するに生活保護受給基準というのが「どれだけ貧しいか」ということならば、あの年末にテレビに放映された「全財産500円だけなんです」という人たちは、年間200万円だかを受給する権利を、その「500円だけ」で勝ち取ったわけなんだから…。
「あいつら良かったよな」とその男性が言う。ハロワ友達なのだろう、連れの男性も「まったく、おれ達のように失業保険も切れて無収入でこうして毎日ハロワに来てる人から見れば、うらやましいよな」
「いったいあの300人近い派遣村村民のどれだけが就職したのだろうか」とボクは考えていた。もしかしたら「1割…以下かも」あれからのことが情報として入らないし…。「いや、この四月から職業訓練を受講するかもなあ」…。
ボクはなにか不思議な感じがしていた。失望感、いや、喪失感、いや、その「負けたもん勝ち」という社会に移っていっているという虚無感というか脱力感というか…。
ボク(たち)のように、非正規労働者と働きながらも、ストイックと言われるような生活をして、それは重労働から必然的にそうならざるを得なかったとしても、給料の半分を貯金に回して、やがてやって来る雇い止めや満了という日のために、備えていたことが、何の役にも立たなかった、というか、少しばかり持っているために生活保護も受給できないじゃないか、ということ。
あるいは、人間関係が希薄になる労働環境、生活環境にあったとしても、人との関わりがないとアパートも借りることが出来ない、仕事の保証人もいる、なんて思って、人と付き合ってきたことが、逆に生活保護を受給するには邪魔になるじゃないか、ということ。
また、すこしばかり、退職時期が早かったために、そうした失業対策の対象者にもなれないで、もう少し遅ければ安い家賃のところに、あるいはタダ同然のところに住めたんじゃないのか、ということ。
そして、派遣社員よりは直接雇用のほうが安全だと分かっていたから同じ非正規雇用でも、期間工という選択をしたことも、それはまったく安全ではなくて、このような状況になってみると選択ミスだったかもしれないと思うし、派遣切りということの埒外にあっては冷遇されているのではないか、とも感じる。
努力は報われないかもしれないけれど、それでも努力してきたのだけれど、結局はそれも無駄になってしまって、無駄どころか努力が足枷になってしまっては、あ~、あの時、親兄弟の縁をさっぱり切って、宵越し金は持たないというような自堕落な生活をしていたら、毎月十数万のお金が入ってきていたかもと考えると、なんだ虚しいというよりも、怨恨みたいな感情も少しあって、ああ、こういうのってきっと逆ルサンチマンなんていうのかなあ、なんて考えていたりする。
そして今後はきっと、どうせ仕事もないのならセーフティネットを使い倒すか、なんて人も多くなって、それどころか、負けたもん勝ちの世の中なんだから、いかに弱者になるかなんて人が街に溢れるかもしれない。逆格差社会になるのかもしれない。弱者の強者、負けは勝ち、というモラルハザード。
わかった、学校を創設するよ。『「弱者育成スクール」いかに働かずに(セーフティ)ネット社会を生き延びるか、人生サバイバルだ』なんてのでね。講座内容は、ま、そのセイフティネットをいかにして使いこなすか、というネット生活だね。ネット中毒とか、ネット販売とか、出会い系ネットとか…。そっちのネットで。
学校名も決まった。「ジャパネットとよた」だ。ふん。
#なにもしないで明日から毎月十数万円が転がり込む、って、よくスパムメールが来るんだけれど、あれはいったいどんな方法で「転がり込む」のかねえ。中には数百万円なんておいしい話もあったり…。あの方式で、「5000円で教えます」とかすると、1000人ぐらい加入しないか?
(セーフティ)ネットリテラシーをなくすという社会貢献という目的なのだから、きっと学校法人として認められないか。あるいは宗教法人として…。
これからは貧乏の時代。貧困2.0だ。だから何もしないで書を捨ててひきこもれ。

勝った負けたとさわぐじゃないぜ
あとの態度が 大事だよ
すべる ころがる立ち上る
歩く たおれるまた起きる
どうどうどっこのひとり旅
どうどうどっこの唄 – 水前寺清子
作詩:星野哲郎

すべる、転がる、また立上がって歩く…
要するにずっと繰り返しなら、勝ちは負け、負けは勝ち、ジャパネット、ジャパネット、夢のジャパネットとよた♪

4件のコメント

  • blank

    mさん、おはようございます。
    本当はね、自分の生活に余裕があれば、こんなこと書かなくても良いことなのかもしれないと思っています。
    ただ、おっしゃるようにコツコツとやってきても、ほんと報われないんだなあ、と思うことが多いというか。
    お金を配る政策が花盛りです。ベーシックインカムなんてのもそうだけれど。それとか職業訓練とか。でも、仕事を配るようにしないと、そしてどうして働かなければならないのかを考えないと、と思っています。
    年金も破綻、雇用保険も、健康保険も破綻、国も破綻、ってことになるだろうし。

  • blank

    結局、世の中不公平と言うか、どこか間違っているような。
    あのテレビに映っている人たちを見て、知人が言っていたのを思い出す。
    タダの寮に住んで、働いているんだからちゃんと給料は貰っていて、普通ならある程度の貯蓄は有るものだ。ああして文無しなのは普通でない奴ら。
    そんな人たちに考えれば優遇などする必要も無いみたいなのに。目立った者勝ちというか、政府もそうした非常時にこれだけしているというアピールの道具にしたというか。
    どちらにしろ、文無しなのに、優遇で毎月十万は越える金が?本当に恵まれた人たちで、それが何処から出で居るという事を考えると、憤懣のみですね。
    そして、同じ職でも、普通に、生活しその中で自らののために貯蓄を蓄えていた人が一番割を食っているという事ですね。

  • blank

    クロさん、こんばんは。
    そうですね。よく言えば甘え上手、悪く言えば…、ま、いろいろ。利用したもん勝ち、ってことなのかもしれませんね。
    「そんなもんもらえるか~、(ノ-_-)ノ ~┻━┻」なんて人もいるだろうけれど。たつやみたいに、さっさと働くほうが、カッコ良いと思ったり。
    ワンコインTシャツ、流行るかも。価格も500円だとさらにいいだろうけれど・・・。

  • blank

    甘え上手ほど得なんでしょうね、世の中って。
    同情を売ってお金になるなら、なんて。
    「全財産500円だけなんです」Tシャツ
    なんてのを着てみたり・・・

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA