派遣労働者の雇用安定とキャリアアップ
改正労働者派遣法案が13日閣議決定され、今年9月1日施行される。「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案」というのが正式な名称なのだが、今度の改正で本当に派遣労働者が「保護」されるのだろうか?
内容は以下の通りだ。
1.派遣事業の健全化
○ 特定労働者派遣事業(届出制)と一般労働者派遣事業(許可制)の区別を廃止し、全ての労働者派遣事業を許可制とする。
2.派遣労働者の雇用安定とキャリアアップ
○ 派遣労働者の正社員化を含むキャリアアップ、雇用継続を推進するため、以下の措置を講ずる。
(1) 派遣労働者に対する計画的な教育訓練や、希望者へのキャリア・コンサルティングを派遣元に義務付け。
(2)派遣期間終了時の派遣労働者の雇用安定措置
(雇用を継続するための措置)を派遣元に義務付け。(3年経過時は義務、1年以上3年未満は努力義務)
1.派遣先への直接雇用の依頼
2.新たな派遣先の提供
3.派遣元での無期雇用
4.その他安定した雇用の継続を図るために必要な措置
派遣元の義務規定への違反に対しては、許可の取消も含め厳しく指導。
3.労働者派遣の位置付けの明確化
○ 厚生労働大臣は労働者派遣法の運用に当たり、派遣就業が臨時的・一時的なものであることを原則とするとの考え方を考慮する。
4.より分かりやすい派遣期間規制への見直し
○ 現行制度では、専門業務等のいわゆる「26業務」には期間制限がかからず、その他の業務には最長3年の期間制限がかかるが、分かりやすい制度とするため、これを廃止し、新たに以下の制度を設ける。
(1) 事業所単位の期間制限
派遣先の同一の事業所における派遣労働者の受入れは3年を上限とする。それを超えて受け入れるためには、過半数労働組合等からの意見聴取が必要。意見があった場合には対応方針等の説明義務を課す。
(2)個人単位の期間制限
派遣先の同一の組織単位(課)における同一の派遣労働者の受入れは3年を上限とする。
5.派遣労働者の均衡待遇の強化
○ 派遣元と派遣先双方において、派遣労働者と派遣先の労働者の均衡待遇確保のための措置を強化する。
6.検討規定
○ 施行3年後の見直し検討に加え、
(1)正社員と派遣労働者の数の動向等を踏まえ、能力の有効発揮と雇用安定に資する雇用慣行が損なわれるおそれがある場合は速やかに検討を行う。
(2)均等・均衡待遇の確保の在り方を検討するため調査研究その他の必要な措置を講ずる。
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案(平成27年3月13日)
派遣元も利益集団なので、商品である派遣社員をタダで手放すわけがない。派遣社員の利益よりも集団の利益を優先する。派遣事業は慈善事業ではない、ピンハネ業なのだ。だから、「2.派遣労働者の雇用安定とキャリアアップ」なんてことを言われても、「1.派遣先への直接雇用の依頼」なんてまともにするはずがなく、結局は「2.新たな派遣先の提供3.派遣元での無期雇用」なんてところでおさまる。それも「3年経過時は義務、1年以上3年未満は努力義務」なのだから、2年11か月ぐらいで契約を終わらせて「努力」したということにすればなんの問題もない。
「4.より分かりやすい派遣期間規制への見直し」では、全ての業務において最長3年の期間制限が解かれ、「過半数労働組合などからの意見聴取」をすれば際限なく、派遣先企業で派遣労働者として労働することになる。「派遣先での無期雇用」が「労働組合」への「意見聴取」だけで可能になるので、正社員化どころか非正規の固定化に繋がる。そもそも労働組合が派遣労働者の味方ではないのだから、制限がかかるどころか無制限化を助長することになる。派遣労働者の全業種無期限化ということではわかりやすといえばわかりやすい。
「5.派遣労働者の均衡待遇の強化」なんて言うけれど、同一労働価値同一賃金かというと、この春闘でトヨタ自動車が期間従業員の日給300円アップを「勝ち取った」ぐらいなもので、結局は「均等待遇」なんてことは「派遣」とか「期間」なんて枠での雇用制度がある限り同一にはならない。
せめて派遣労働者を撤廃してジョブ型正社員制度にするようにでもしなければ、こんなザル法では「派遣労働者の正社員化やキャリアアップ」なんてものは望めるわけがなく、「派遣就業が臨時的・一時的なものであることを原則とするとの考え方を考慮する」なんて言うけれど、「考慮」しただけで、結局は臨時的・一時的ではなくて恒久的に安い賃金で、中間搾取されたていの良い人身売買という形の派遣労働者が増えるだけだ。
臨時的・一時的なんて言いながら、例えば「期間従業員」も「期間」なんて臨時的・一時的ではなくて、低賃金の常用代替従業員になってしまっていて、そのことが格差や非婚化、犯罪の狂暴化、そして国家の衰退を招いている要因だということを分かっていて、陳腐な法改正で問題を先送りする。
塩崎恭久厚生労働相の言う「多様で柔軟な働き方として派遣制度を使えるようにする」と法案の意義というのは、結局は雇用する側の「多様で柔軟な働かせ方」であって、国民を非正規労働者に固定化し貧困を固定化するための法案のように映る。
せめて国家国民のためならば、その最長3年間は正社員と賃金・賞与を含めて同じ待遇で雇用すべきで、その延長について労働者のために存在する組合の意見聴取を行って、さらに正社員として雇用を延長するような仕組みにしなければ、国民労働者はほんとうにテロリストになって暴徒化する、あるいは無敵の人の増加が治安の悪化を招く。そんなことよりは、ナショナリズム精神を喪失した国民国家に未来なんてものがあるはずない。
ジョブ型正社員ですが対する概念であるメンバーシップ型正社員=現行の正社員と比べて人によっては働きやすく有利な環境にはなると思うので個人的には一応賛成です。
今後問題になってくるであろう60歳以上の方の働き方としての提案も出てくるでしょう。
賃金は現行の正社員よりやや低い水準になるかもしれませんがそれでも本人が納得であれば許容範囲でしょうか。
正社員になると給料が下がるとの理由で拒む方も状況によっては受け入れないといけない場面はあると思います。もしくは自分で独立するか。
派遣は段階的に縮小し将来的には廃止が一番よいでしょうか。当面現行の派遣を存続させるにしても会社側の取り分の上限は設けたほうがいいかな。
民間による職業紹介事業、求人情報誌やサイトなどはこれによる労働者側の不利益が少ないだろうし一応現状のままでいいのかと思ってたりします。
さといもさん、どうも。
#「少ないような気が」するだけですよ。ついでに「意見も一部にはある」というのは、どんな意見にも、あるでしょうね;)
労働者の保護ではなくて、企業を保護するような目的なのが問題です。それに専門的であるか否かによって、働き方を制限するというのもよくないかと。
なにをもって専門的な職種なのかも不明で、職業はすべてにおいて専門的であるのだから、全てか0です。(例えば、現在の派遣法のさだめる専門26業務に医師も看護師も弁護士も入ってません。将来的には今の「専門的な職種ではない専門的な職種」なんてなにか変じゃないですか?)
まあ、労働者のためではなくて、派遣法なんて企業のほうばかり向いてるでしょ?そこが問題かな。
製造業への派遣が解禁になったのはたかだか10年前です。「将来的には」ではなくて、過去には労働者が保護されていたのです。
「均等・均衡待遇の確保の在り方」、そうなるとジョブ型社員なんて方法なのかなあ、なんて思います。
派遣には色々問題点があるのは確かだけど全面禁止を求める意見は少ないような気がします。共産党でさえそこまでは提言していません。
将来的には一部の専門的な職種以外はなくすのが一番いいような気がします。
あと中には正社員より待遇がよい派遣の方も居るからそういった方々にとっては今のままの制度でいいといった思いはあるかもしれません。
期間従業員のような形態に関してですが期間の定めがある不安定な雇用形態自体は現状で構わないから正社員よりはるかに上回る給料をもらえる仕組みになればそれはそれで納得できるといった意見も一部にあります。
元2塗装さん、こんにちは。
現在の26業務というのは、派遣という形態で雇用されても、そこそこの賃金はもらえる業務ですものね。
そのことも分かりにくかったと言えば分りにくかったのですが。
常用代替なのに臨時だ、一時的だ、なんて欺瞞もなんだか。トヨタの「期間」なんて常用代替もそうですが。
まあ、企業からは政治に献金、組合に飴、で、結局大企業が儲かるシステムなんでしょうが。
政府が言う派遣労働者は、いわゆる派遣切りのような派遣じゃなく
専門技術を持った派遣の事ですね。
「派遣労働者とは、既に会社と無期雇用で契約してますので、
派遣されていない期間でも無給になりません。
(会社は高く売るために、)そのような期間に教育を受けさせて
キャリアアップを行っています。
派遣先が幾ら払っているかも伝えていますし、プロですので、
金額に見合った仕事を致します。」
ってな事を、大手人材派遣(技術系)の営業が売り込みの際に
言ってました。
少なくとも客に言える程度には、大手は既に行っているようです。
そんなのと、単純労働派遣とを一緒に議論するような法案は
無茶があるように思います。