派遣切り、タクシー運転手へ転職

そう言えば、あの頃、2008年のリーマンショックの秋から翌年の春にかけて派遣切りや雇い止めで解雇され、タクシー運転手になった非正規社員たちはどうしているのだろうか?
そのほとんどはトヨタ自動車などの自動車製造業やその関連企業で働いていて、地元ではない愛知県内(多くは名古屋だったのだろうけれど)でタクシー運転手になった人たちだった。雇用危機、それは今も続いているのだけれど、ハローワークに行って正社員として求人のあったのはタクシー業界と福祉介護業界が多かった。
それまでの「非」正規という不安定な雇用から逃れたくて、「職業」としての魅力というよりも 「正規社員」という魅力だけで転職した人もかなりの数いたのだろうと思う。
自動車業界の活況が彼らの不幸をつくり出した。そして今度は彼ら自身が造った車に乗って仕事をすることになった。それが幸福への転職であれば良いのだけれど、きっと多くはそれまでの収入よりは少なくなり、右も左も分からない地理に戸惑い、客に罵倒され、時には暴力を振るわれることもあり、精神的にも肉体的にも参ってしまって離職した人も多いのではないかと思う。
自動車業界の不況がタクシー利用者を減少させた。それはそのまま彼らの更なる不幸をつくり出すことになった、ということなのだろう。良くも悪くも自動車業界の好不況にダイレクトに振り回されてしまったのだ。
それは非正規社員たちだけではなくて、例えば豊田市や田原市なんて自動車業界に財政を依存している自治体とて同じことなんだろうけれど…。いや、経済という発展しなければ呼吸困難になってしまい死滅する病を抱えて生きていかなければならない人類の悲劇なのだろうけれど…。

タクシー業界は02年の規制緩和で新規参入や増車が進んだ。さらに愛知県内は好調だった製造業に人手を取られ、大手は運転手不足に悩んで北海道や九州・ 沖縄に募集に回っていた。

自動車業界が好況だったからタクシーも忙しかったのだし人手不足だったのだ。規制緩和で過剰気味になったタクシーが、自動車業界の不況によってさらに過剰気味になる。発展している時とは逆に、不況の連鎖が起こる。エコカー減税でプリウスだけが売れたとしても、それは焼け石に水といった状況なのだろうと思う。
ボクも期間工からタクシー運転手になったのだけれど、なんとか生きている。就職活動しているときに「運転免許があればタクシーにでも乗れるだろう」なんて言われたことがあった。そんなに簡単なものではない。「今はGPSやナビがある」 なんて言うかもしれない。お客様を乗せて行き先を聞いて、それからナビで調べて…。そんなことを笑って許してくれる悠長なお客様ばかりではない。スタートした時点で逆方向に走ったら…。瞬時に場所を判断できるぐらいの地理勘は必要なのだ。
ナビのことはあらためて書くけれど、運転手はみんなが言うほうど簡単ではない。不規則な生活もそうだ。 だから離職率も高いのだろう。いつも求人があるということは、逆に言えばいつも辞めているということなんだから…。
あの頃、「派遣労働者は一斉に切られたから、かなりタクシーに集まってきているはずだ」と就職した人たちは元気にやっているのだろうか。もう1年以上過ぎたのだけれど、地理にもなれて収入もそこそこあれば良いのだけれど…。

深刻 な景気悪化の中、自動車関連の製造業からタクシー運転手に転職する人が名古屋で目立っている。不景気で売り上げは落ちているものの、タクシー会社にとって は街中で車を走らせることが客を得る重要な手段だけに、大手各社とも「正社員」という安定した立場を強調したり、職業教育を提供したりするなどして人材確 保を目指している。

(引用は2008年12月11日付朝日新聞の記事を「 行列のできる?法務ドクターの小部屋: タクシー運転手、不況下の人気 派遣切られた人材どっと (朝日 08.12.11)」から又引きしました)
新川交差点から駅前大通
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