老人売買

超高齢化社会になる、なんて話はもう数年前から勝谷誠彦さんが言ってた。自宅警備なんて自嘲気味に言う親の収入によって生活している人たち、ニートや引きこもりの人たちが、その収入源が断たれた時(親が死ぬということなんだけれど)、死亡報告をしなくてそのまま彼ら/彼女らの収入である年金を受給し続ける、という内容のことを勝谷さんは話していた。
所在不明高齢者の続出というニュースを聞いたときに「ああ、やっぱりあったか」なんて思ったし、今後も増え続けるのだろうと思った。厚労省は「日本年金機構を通じて年金を受給している110歳以上のお年寄りの所在を個別に確認」なんてことを発表したのだけれど、年金受給者全員の所在確認をしないと、たぶんかなりの数の「親生かし」が行われている可能性だってあると思う。
親殺し、子殺しではなくて「親生かし」ということについて今後いろいろ考える人が出てくるだろう。あの弘法大師空海だってまだ生きている。高野山の奥ノ院御廟で生き続けていると信じられていて、維那(ゆいな)と呼ばれる仕侍僧が衣服と二時の食事を給仕している。そうなると高野山が年金申請をすれば御大師様の年金も受給できるかもしれない。聖域なのでいかに厚労省の職員であろうと、長妻大臣であろうと「面会」など恐れ多くて出来るはずがないのだから、きっとうまくいく。
「宗教」という名のもとに「親生かし」や「親隠し」を行う。あるいは肉体が滅びたならば違う肉体に替える「親替え」も行われるに決まっている。その「確認」が行われる時にだけ必要とする家に親として出張する「出張老人」という商売も始まるに決まっている。
あるいは老人売買が行われる。中国の山奥から老人が輸入されるかもしれない。言葉や文化の違いなんて年金受給には関係ない。とりあえずそこにいればいいのだから。そして日本語をしゃべれないとしても「ボケてまして」の一言で片付く話なのだし。「若いころ満州に行ってまして」なんて付け加えれば十分信憑性のある話になるはずだ。
少し前までの人身売買は女子供が中心だった。老人は捨てられるというのがこれまでの相場だった。人類史上初、いや生物史上初の「親生かし」「老人売買」が始まった。そして出張ホストやデリヘリならぬ「出張老人」というものが始まる。その需要もたっぷりある。景気は回復傾向にあるけれど、雇用は相変わらず最悪のままだ。それでも無職の若者たちには親の年金という収入がある。
親が平均寿命の年齢になるころには彼ら/彼女らも年金受給者になる。国民年金6万数千円だとしても親の残した家や資産でなんとか生きていけるだろう。そして親が100歳まで生きてくれれば、あるいは100歳まで生きていることにしたら、左うちわで生きていける。
働くなんてことの意義や意味なんて考える必要もない。こういった仕組みをうまく利用すればいいだけの話だ。汗水流して得たお金も、そうやって得たお金も同じお金なのだから。
出張老人、老人売買、きっと「父貸します」とか「レンタル母」なんて広告が出ることだろう。わざわざ中国から老人を輸入しなくてもホームレスのオジさんオバさんを雇用して、どこかの家の「父」や「母」にするかもしれない。空き缶拾いではなくて、毎日「出張老人」として目面を掴む日々を送っているかもしれない。そういったニュービジネスを彼らホームレスの人たちが立ち上げているかもしれない。
超高齢化社会だと言いながら老人不足になる。若者は結婚はしないけれど、老人と養子縁組するかもしれない。そのほうが金になる。そうか、養子縁組ビジネスもきっと流行る。老人天国、この国の未来は明るい。めでたしめでたし…。
石仏
(画像:「うちの父です。石仏になりましたが何か?」なんて言うヤツもきっと出てくる)
ソフトバンク 父犬
(画像:これはお父さんです。)

1件のコメント

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    素晴らしい発想力です。
    これ、小説になりますよ。
    わたしがここを読み続けられるのは、類稀なる文才を感じるから。

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