ハゲの問題
「ハゲに胃ガンなし」なる言い伝えが医療関係者の世界ではあるらしい…。(「女は男の指を見る」竹内久美子著、新潮新書)
結核、気管支ガン、肺気腫にもなりにくいそうだ。そう考えると、彼氏の父親や祖父の頭髪チェックが結婚相手を選ぶ時の必須条件になりそうだ。逆に老後はゆっくりとおひとりさまを謳歌したいのならば、髪ふさふさの男を選ぶべきなのかもしれない…。
ハゲにデブ、そんな男にはなりたくないと思っている。思っているのだけれど、ハゲだけはどうしようもないようにも思う。石鹸シャンプーで洗髪して、リアップを塗って、プロペシア剤を服用する、なんて涙ぐましい努力をしたとしても、ハゲる人はハゲる。それはもう宿命、神が与えた試練、あるいは孔雀の羽のごとく「ガンに強いですよ」とメスにアピールするためなのかもしれないけれど…。
でも、やっぱり「ハゲは嫌だ」と多くの男は思っているに違いない。そして多くの女も思っているに違いない。思っているからいろいろなハゲ用の商品が開発、販売されているのだ。
一番困ることは、というと、ハゲの上司を持つことだろう。だって上司の前では「ハゲ」という言葉が禁句になる。それどころか「つる」とか「すべる」なんて関連キーワードも言ってはならない。中には爆笑問題さんの話題もNGという職場もあるかもしれない。「大正製薬」もダメだったり…。
豊橋カルミアで営業していた「ハゲ天」が撤退した。利益の問題なのか、あるいは他の問題なのかは分からないのだけれど、たぶん、きっと、カルミアの主客層であるサラリーマンの利用数が少なかったのだと思う。
昼間の豊橋駅のタクシー利用者もサラリーマンが多い。トヨタ自動車、ベンツ、自動車関連企業、ミツビシレーヨン、トピー工業、…大きな企業が多い。
そんな企業のビジネス利用客は単独で来ることは少ない。だいたいペアだ。それも上司と部下。もう中年の域にあるその上司の身体的最大の関心事はというと、「頭髪」と「メタボ」なのだ。いや、もうキテイる人もいる。そんな上司に向かって、例えば「課長、お昼はハゲ天にしましょう」なんて言えるはずもなく、また上司とて部下が気を使って「ハゲ」関連を忌諱していることぐらい認識しているので、わざわざそういう所に行くということはしない。
上司のほうから「君、お昼はハゲ天にするかね」なんて言って、気まずい空気なるのも避けたい。なんせKYというのが普天間問題よりも、ふたり旅における重要な案件なのだから。
それにメタボ。天ぷらなんて禁断の果実なのだ。ハイカロリー、塩分、あぶら物、グルメの三要素には常に危険がつきまとう。特に運動不足になりやすいホワイトカラーのサラリーマンたちにとっては、出来るだけ避けたい食べ物なのだ。
脂ぎった顔でお得意様企業を訪問するなんてのもなんだか憚られる。口元にお昼に食べた天ぷらの油がキラリ、なんてちょっと嫌だ。
そういうふうに忌諱、忌憚される。いや、銀座のようにキャパシティが大きいところならば良いのだけれど…。
いや、ハゲが悪いのではない。上述のように、ハゲは遺伝子的に優性「胃ガンなし」という体質なのだから、気にする必要はないのだ。ただ、日本人のKY思想が、異常とも思える「空気を読む」という文化が、あるいは外見を気にしすぎるという精神構造が悪いのだ。
ハゲという遺伝子的優性な特徴を「悪」と決めて、それを防ごうとか、カツラを付けて誤魔かそうとかしなければならない、そういう意識を定着させたことが悪いのだ。きっと製薬会社、化粧品会社、カツラ会社の陰謀に決まっている。老若男女、皆ハゲになれば、それだけ消費が冷え込む。一部帽子を作る企業が儲かるだろうけれど…。
ということで、ハゲ天が撤退したのには、そういう理由が(理由も)あると思うのだけれど…。どうだろう?
入梅なのか、雨だね。
豊橋駅、雨、夜