「のってこらい」過疎地専用タクシー

夕方のニュース番組「イッポウ」で熊野市五郷(いさと)町の過疎地専用タクシー「のってこら」の特集を見た。
過疎地有償運送制度というのは「タクシー等の公共交通機関によっては住民に対する十分な輸送サービスが確保できないと認められる場合において、特定非営利活動法人や公益法人、農協協同組合、医療法人などの法人が、実費の範囲であり、営利とは認められない範囲の対価によって自家用自動車を利用して当該法人の会員に対して行う輸送サービス」だそうだ。
要するに過疎地における移動手段確保のために、実費の範囲(運送の対価については「当該地域におけるタクシー料金のおおむね2分の1の範囲内であると認められること」と定められている)の対価によって自家用自動車を使用して運送するサービスなのだ。
このサービスを始めたのがNPO法人「のってこら」の峪口さん。一日の利用者は4~5人、月の売上げは5万円程度ということを番組で言っていた。非営利どころか損益ビジネスなのだ。「使命感」と何度も峪口さんはおっしゃっていたのだけれど、まったくそういったボランティアスピリッツがないとやっていけないことだと感じた。
日本全国で移動手段の貧困化が進んでいる。高齢化の進む過疎地においては運転できない人たちも増えてきているし、施設の集約化などから、さらに陸の孤島化に拍車がかかっている。郵便局が近所から消えてなくなり、人口の減少から近所にあった商店も閉店した。移動商店が週に2回来てくれるのを待つという老人家庭も多いのだろう。
コミュニティバスを運行している自治体もあるのだけれど、それとて一日2便なんて本数で、何をするにも、その郵便局へ、買い物へ行くのも一日がかりということになる。
そして過疎化がさらに進む。消滅する村も増えてくる。人々はさらに都市部へ集まる。となると、国土の居住率とか利用率が低下する。日本という領土の利用率は年々減少しているはずだ。それはどういうことかというと、食料の自給率との問題にも関係してくる。
TPP参加で食料自給率の問題がとりざたされている。日本の農政は米作農家に対しては過度の保護策を施してきたのだけれど、過疎地の小規模農業についてはどうだったのだろう。あるいは食料自給率なんていうのならば漁業に対してはどうだったんだろう、なんて考える。あるいは尖閣問題。もし島に人が住んでいたら、と考えると、過疎とか僻地なんてことでその土地が見捨てられていいのだろうか、思うのだけれど。
自給率自給率なんて言いながら、どれだけの農耕地が過疎化によって打ち捨てられているかということも問題なのだと思う。
話はばらけたのだけれど、モータリゼーションというのは確かに人の生活を豊かにしたかもしれないけれど、なにかここにきてとても残酷なことだったようにも感じる。自動車を運転できるとういう前提の下に構築された社会は、それなしでは生きていけないということなんだろうし…。そう思うと、峪口さんの取り組み方は、なにも過疎地だけではなくて、今後都市部にもそういった仕組みが適応されるのかもしれないなあ、なんて思った。ご近所タクシーとか地域タクシーとか。
ココラアベニューの看板
過疎地有償運送制度について

4件のコメント

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    過疎の住人さん、どうも。
    そうですね。税金を使っている以上、またこれも破たんするもののひとつなのかもしれませんね。
    いずれは姥捨て山のように、地方を棄てて都市へ移住を強制されるようになるかもしれないと。
    ぽつんと山の一軒家、って番組を見ると、住み慣れた家とか生まれた家、故郷ってのは重要だと思ったり・・・

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    税金をじゃぶじゃぶ使ってのコミュニティバスやオンデマンドタクシーはいずれは破綻する。年金のようにね。分かっているんだが誰かが負担しないと、という仕組み。

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    シバヅケさん、こんばんは。
    そうですね、田原も広いですもんね。お年寄りなどは「何時間でも待つから来てくれ」とおっしゃる方もいます。福江などはタクシーも不便ですもんね。
    そうした生き方をしようとする人も多いのかな。林業とかも募集しているみたいだし。
    ボクも過疎地域の出身なのですが、不便さというよりも、人間関係の難しさが嫌で出たのですけれどね。

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    田原も結構車無いとキツイ土地だよね
    ぐるりんバスがあるからまだマシだけど
    モータリゼーションの功罪はともかく約20年間経済成長ゼロ人口増加率マイナスだとどんな国でも末端から衰退するよね
    ホントの過疎地は取り残された島みたいになってて最早身動き取れない老人は死を待つばかり
    話変わりますが私も期間工何年かやっておりましたが車は運転したことがないどころか免許すら持ってません
    車がないと生活出来ないといった環境は耐えられないので田舎出て行くしかないのです
    地方衰退は政治的な要因とライフスタイルの変化どちらにもあると思いますが田舎に住み車が買えて農業で食べていけるならそうした生き方がしてみたいですね~

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