Jakuchu’s here!

鷲が遠くを見ていた。その視線の先には花や木や動物たちみんながいた。世界ってのは、あるいは、プライス氏の言うNatureというのはそういうことなんだろうと、思った。そうしたらもう動けなかった。
福島へどうしても行きたかった。そして18切符で行った。新幹線や飛行機なんかではなくて、鈍行でゆっくりと移りゆく風景を、ちょうど鷲図と鳥獣花木図屏風のように、見て行きたかった。それがとてもふさわしいように思った。本当は歩いて行くのが礼儀のようにも感じていた。
「若冲が来てくれました」東日本大震災復興支援展覧会に行った。今回の福島行きの目的だった。
芸術の持つ力、なんてものがどういうものかということは解らないとしても、例えばボクを福島まで運んだ、ということはそれだけでスゴイことだと思うし、人の持つ想像力というのは、絵とか音楽とか、いや花とか草とか、自然を見たり聞いたりすることで研ぎ澄まされるのだろうし、それがそのまま人としての意味になるんだろうと思う。
誰かが書いていたけれど「来てくれたのは若冲だけではなく、なにか大きくてあったかい何か」だった。その「何か」というのは、ボクだけではなくて大勢の人を東北に行かせた力、それは優しさなんてものだったりする(それが人としての意味だったりするんだろうけれど)のだろう。
あるいは夢とか希望なんてものだったりする。真逆の失望なんてものを感じることも必要なことで、その失望という場所から夢や希望なんてものが出発するのだろうし。
そういうことなんだろうと思った。解らないにしても芸術の持つ力なんてのは、何かを感じること、なんだろうと思った。
ひとりとみんな、あるいは、みんなとひとり、なんてことを最後に考えた。震災にあったところだけではなくて、ボクたちは瓦礫の中にいる。将来なんて夢や希望なんてものを失ってしまっている。瓦礫の中にあるんだけれど、心は豊かであり続けないといけないのだろうと思う。
うまく言えないのだけれど、最後の展示室であの鷲図と鳥獣花木図屏風を見た時には、ボクはずいぶんと泣けてしまった。東北の人たちのことを思ったし、ああ、それに比べればボクのいる瓦礫などはたいして平和なものだと情けなくもなった。それにボクは随分と疲れていたし、寝不足でもあった。ずいぶんと忘れかけていた感覚みたいなものが蘇った。まずはもう少し自分を大切に扱おうと思った。
若冲が来てくれました

1件のコメント

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    田原笠山さん
    初めまして。
    と 書かせていただくのが
    申し訳ないほど
    田原笠山さんが田原市で
    お仕事されている時から
    ブログ拝見させていただいております。
    時に感銘
    時に私の根底にある闇部分に同調
    時に「足るを知る」匙加減を
    考えさせてくれたり・・・
    ありがとうございます。
    福島への
    プライスコレクション
    いい旅なさってこられましたね。
    鳥獣花木図屏風は
    みずみずしく躍動感ある生命の図
    と伺ってます。
    涙されたご自身
    そして
    ご自身を大切にされようと誓った
    素敵な感性は
    芸術の持つ力なんて
    私にもわからないけれど
    少なくとも
    田原笠山さんの「何か」の
    引き出しを開けて下さったんだなぁって
    嬉しく感じました。
    一度きりの人生
    こんな風に
    豊かなお時間を過ごせることに
    今日は乾杯。
    これからも
    ずっと
    楽しみに拝読させて下さいね。
    夏疲れ出てくる時期ですが
    どうぞお体ご自愛されて
    素敵な初秋をお迎えくださいませ。

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