井月

伊那へ行ったのは井月の墓参りが目的だった。
伊那市美篶 井月の墓
井月も山頭火も孤独だったに違いないが、ほとんどの人は孤独の中で死んでゆく。人としての才能を見出されることもなく、野垂れ死ぬ。ホームレス、本当の乞食は飢えや餓えの中、命を落としてゆく。井月のように酒を飲める余裕もなく、山頭火のように病に助けてくれる者もいない。
自己責任と打ち捨てられる命は空缶ほどの値段でしかなく、正方形に押し潰されて溶炉の中へ。「一丁上がり、これが経済でござい」と次の工程へと運ばれる。
井月の墓前で「あなたは幸せ者ですよ」と手を合わせた。持ってきた酒はそのまま持ち帰った。

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