雇用情勢

相変わらずハローワークに行くのが趣味だったりするし、あの雰囲気がなんとなく落ち着いたりする。失業者ではないという安心感みたいなものが手伝ってそういう気分にさせるのかもしれないし、人びとの持つ絶望感みたいなものが場所を神聖化していてまるで宗教施設のように感じるせいかもしれない。差し込む冬の陽がボクや彼らの体温と混ざり合い、エアコンの設定温度以上の暖かさになり部屋の上のほうに溜まっていて、逆に下のほうの空間を重苦しくさせているさまなんてのは、まるであの四国の霊場そのもののように感じさせる。
思わず「無上甚深微妙法」なんて開経偈を小さくつぶやく。そこにいる人びとは、例えば巡礼のように、なにかに傷ついている。なにかに悔いている。そして救いを求めている。画面の向こうに救い主が現れるのを待っている。
平成25年11月の有効求人倍率は全国平均1.00倍で、前月に比べて0.02ポイント上昇したそうだ。愛知県に限ってみれば1.44倍、0.05ポイントの上昇、東京都に次ぐ高い数値となっている。(都道府県・地域別有効求人倍率(季節調整値)(新規学卒者を除きパートタイムを含む)(PDF:45KB)
3月4月の繁忙期と消費増税前の駈込み需要が重なって自動車関連の期間従業員も相変わらず募集が続いている。メガソーラー建設の求人も数十人規模で行われていたりして、ハローワークの求人だけではなくて週末の折込求人広告も増ページして発行している。どちらも、あの頃、ボクが失業していた頃とは比べ物にならなぐらいの求人数で、“テンションが上がる”。
「一般(フルタイム)、月給16万円以上、年齢40歳以上、勤務地豊橋市」で検索をかけると1578件もの募集がある。月給を20万円に上げて再検索しても1265件ある。「パート、時給800円以上、年齢40歳以上、豊橋市」で検索しても976件ある。あのリーマンショック後には行列にできていたハローワークの空席が目立つ検索パソコンに座っていると、1.44倍というよりも、その千件ちかい数字が全て自分への求人と錯覚してしまいそうになる。
確かに「ある」のだ。それも半端な数ではなく、それをいちいち閲覧していたら一日では足りないぐらい「ある」のだ。
それでも、応募するとなるとその一割も満たない数、いや1%ぐらいの数、10社程度しか残らない。その10社とて採用される確率となると、これまた分からないのだから、結局1.44倍なんてのは魔法の数字みたいなもので、0.0144倍なんてものが実数だったり、実感できる数字だったりする。
自動車関連企業のように、業種、そして雇用形態によってはその人手不足が深刻だとしても50歳なんて大台になった人たちにとっては、1.44倍なんて数字は幻でしかなくて、ボクが感じている0.0144倍以下なんて絶望的な数字なんだろうと思う。
募集・採用における年齢制限の禁止されているとはいえ、求人倍率は年齢と反比例する。「若さ」というのが、なによりの資格なのだ。国家資格や経験はその若さの前では色褪せてしまう。
ボクが感じている求人倍率0・0144倍は、きっと20代の人には3倍なんて数字で実感できるだろうし、30代の人たちにだって2倍なんて感じがするのだろうと思うと、「ああ、やっぱり“青年よ大志を抱け”なんだろうなあ」なんて思うし「“中年よ耐我を抱け”なんだろうなあ」なんて思う。
タクシー業界は相変わらず募集していて、それも複数単位10名なんて数でその求人倍率増加に貢献している。それに福祉関係なんてのも、雇用政策の優等生なのだ。たぶん、毎日ハロワに通っていたら、たまにボクが行って「ある」なんて感じる昂揚感なんてものはこれまた色褪せて、「いつもの」なんて、もう消費期限の過ぎた求人ばかりがその千数百の大半を占めるのだろう。
仕事っていったいなんなんだろうなあ、なんて思いながら、そして働くっていったいどういうことなんだろうなあ、なんて思いながら、ボクはハローワークの自販機のコーヒーを飲んでいたんだ。
ハローワーク求人
ハローワーク求人40歳
雇用の流動化とセーフティネットの整備 – 辻元

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