龍光寺から佛木寺へ(29日目の2)

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彼ら、宿毛で二度目の再会を果たした年配の二人連れ遍路さんたちに、また会ったのだ。ボクが階段を登って龍光寺の境内に着くと、彼らは出発の準備をしていた。挨拶をする。するとすかさず「階段を下りたところで納経帳を忘れたことに気がついてね、また戻って来たのよ」と話してくれた。「ああ、それは大変でしたね。でも早目に気が付いてよかったですね」と言った。それから少し話して、彼らはまた階段を下りていった。ボクは本堂へと向かった。

龍光寺の石仏は優しさと強さを持ち合わせていた、そんなお顔
(41番札所龍光寺にて)

この龍光寺では思い出がある。それは納経所のお婆さんが、ボクの納経帳を見て「これからはお寺も多くなるから、下敷はもう2枚あったほうがいいから」と、新聞紙を切って下敷を作ってくれた。納経帳は一枚の髪を折った袋状になっていて、染みにくくはなっているものの、墨の量などで染みる場合がある。そのために袋の部分にカットした新聞紙を敷くのだけれど、その下敷きはもう2枚あったほうが今後は良いというのだ。1枚だと1寺から2寺分しかないので、この日のように1時間後には次の札所に着くという場合はまだ濡れている場合があるから、ということだった。

後ろには順番を待っている人たちがいた。ボクのほうが恐縮してしまっていた。お婆さんは、それでも何度かハサミで切って納経帳に合わせてくれた。そしてボクに渡してくれた。「はい、これで大丈夫だから」と、その70歳を過ぎている、いや80歳も近いだろう女性は微笑んでくれた。ありがたかった。

11時40分出発。裏山を通って県道に出た。それほど急峻でもなかったし、雨上がりではあったけれどぬかるんでもいなかった。それでも用心をしたのだろう2組ともその道を通らないで迂回して県道へ向かった。

12時10分、42番札所佛木寺着。日曜日だからなのだろうか、婦人会という感じの人たちがお接待をしていた。なんだか「ひとつ良いですか」なんてのは言いにくいものだ。「どうですか」と言われてはじめて「あ、すみません、ありがとうございます」なんていただける。その時は、人も多かったのだろう、受けられなかった。それはそれですこし哀しい気分になった。

12時40分、佛木寺出発。少し行ったところの休憩所で二人連れの遍路さんがお弁当を食べていた。ボクは「先に行ってます。また」と道路の反対側にいる彼らに挨拶をして歩いて行った。思ったとおりコンビにも銀行もATMもなかった。そうなるとお腹が空いてきた。不安になってきた。

冬は確実に近づいていて、コスモスも枯れていた
(冬は確実に近づいていた……龍光寺から佛木寺への遍路道にて)

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