運転手不足に事前確定運賃

名古屋地区のタクシー運賃が改定されました。

外出制限がない年末の繁忙期中の値上げになり、2018年、2019年の12月度の日車営収(稼働台当たり1日の営業収入)を超える人も多くなるでしょう。というのも、名古屋地区では日車営収を含む運送実績はすでに2019年度と同水準になっているからです。

名古屋地区タクシー輸送実績対2019年度比

(Toranouva2022年11月9日号のデーターをもとに作成)

運賃が値上げされ、営業収入が回復、運転手の収入が増える。そうすると業界の懸案事項である「運転手不足」が一気に解消されるか、というとそうは簡単になりません。

私たちの職業観は賃金の多寡だけではないからです。

タクシー運転手の限界

今回の値上げの理由のひとつに「運転手の賃上げ」があります。運転手不足の原因のひとつにも挙げられます。

年齢別年収グラフ タクシー運転手 全労働者

上の図は緑色のグラフは、タクシー運転手の年齢別年収の推移です。20歳代でピークになっています。そしてその年代層では全産業男性労働者の平均を追い越しています。(単位は千円)

そして定年を迎える60歳以降に引き離された年収がまた近づきます。これがタクシー運転手の歩合制による賃金の特質のひとつです。どれだけ頑張っても、あるいはどれだけ経験値が増えても、運賃収入とその出来高による歩合制の賃金では限界があるからです。

月に130〜150万円の営業収入で歩率60%として90万円です。これが限界値になります。確かに月収90万円は高額です。ただし、これが限界です。

運転手不足の原因

タクシー運転手への入職が少なく離職が多い原因については次のことが考えられます。

( 「地方タクシーの現状と問題点」にも書きましたので参照していただければ幸いです)

  1. 低賃金
  2. 長時間労働
  3. 危険
  4. トラブル、ハラスメント・クレーム
  5. 個室での接客
  6. 社会的地位・将来性
  7. 国全体で労働者不足

しかし低賃金というのは一要因でしかありません。むしろ離職の原因はそれ以外が原因だと考えられます。

4と5については

  1. 接客態度
  2. 地理・経路
  3. 運賃
  4. 釣り銭

を起点とする利用者とのトラブルが多いようです。

接客態度が悪くなるのは

  1. 酔客(吐瀉・ハラスメント・暴行など)
  2. 短距離
  3. 一万円札問題
  4. 利用者の言行

などがあげられます。

問題点のおさらい

それではもう一度

  1. 低賃金
  2. 長時間労働
  3. 危険
  4. トラブル・ハラスメント・クレーム
  5. 個室での接客
  6. 社会的地位・将来性
  7. 国全体で労働者不足

1の低賃金、2の長時間労働は、賃金構造の問題です。歩合給ではなく法定内時間労働で固定給(生活給)で解決できる問題です。

3の危険ですが、交通事故については先進安全自動車(ASV)の導入や自動化が有効だと考えられます。

3のの利用者からの危害という危険性と4の利用者とのトラブルについては、事前確定運賃でのネット決済で大部分が解消されます。つまり、運転手不足に事前確定運賃が有効ということです。

タクシー運転手不足に事前確定運賃

その前に事前確定運賃については次のサイト、youtube動画で。

事前確定運賃について JapanTaxi Q&A

191009_事前確定_1080x1920 対応地域_TapAction
 youtu.be
191009_事前確定_1080x1920 対応地域_TapAction

この事前確定運賃のなにが良いのかというと

  1. 経路が決まっている
  2. 運賃が決まっている
  3. ネット決済にすれば金銭授受問題がない

ということです。これらのことで、b、c、dのの問題が改善されると考えられます。さらには、運転手に左右される生産性も上がります。なぜならば、配車による実車率を上げることができるからです。そうすると、生産性向上=営業収入向上、賃金も上がります。

配車は儲かる

配車迎車料金は東京では300円〜500円加算されます。したがって、回数が300万回(2022年7月度)あれば9億円規模のビジネスなのです。

タクシー無線配車回数 運転手不足に事前確定運賃

となると、配車による事前確定運賃(事前確定経路)は良いとこずくめなのです。

あとは、賃金構造を変えることと(歩合制が良いという人もいるでしょうからそれも含めて)、車両の運転手と乗客の完全分離を行えば、安全快適な職場に近づきます。

賃金だけでは人は集まらない。そして魅力的な職場と言っても、現状では危険がいっぱいなので、そのへんを整理して片付けていくことが必要なのかなあ、なんて考えています。

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