コロナ感染での移動困難とタクシーについて考えたこと

乗車拒否の問題はいつまで経っても解決されそうにありません。

短距離の利用者や車椅子利用者への乗車拒否は、社会問題になりながらも結局は運転手個々の問題にすり替えられてきました。

今起きているコロナ陽性者の乗車拒否問題も深刻です。病院からの帰宅困難者を発生させています。そして、利用者と運転手を不幸にしています。移動で人を幸せに、とスローガンだけが虚しく掲げられています。

でも、それって、システムの問題ですよね?

車両、労働環境、法律、賃金制度……。

移動困窮者はなぜ増えたのか

2020年4月には、陽性者輸送用の車両が開発されています。そしてその後、陽性者輸送の問題解決に取り組んできた自治体もあります。

しかし、その取組みはこれほどまでの感染者の増加を想定することなく、そして2022年のまん防終了後には、コロナ感染症も終息したかのような感覚が私たち業界にも、そして為政者側にも蔓延したのではないのでしょうか?

その結果が今の感染拡大に繋がっています。2020年4月からコロナ感染症に対してまともな対策をしませんでした。それが感染者拡大と、今回の移動困難者の問題に発展したのではないですか?

Honda 新型コロナ感染者を搬送する車両
新型コロナウイルス感染防止にむけた支援活動について
~「感染者搬送車両(仕立て車)の提供」「フェイスシールド生産」~

飛沫シート、お粗末シート

タクシー業界は、利用者の激減とそれに伴う経営危機から補助金や雇用調整助成金による雇用の確保に注力をしてきました。運転手への感染予防としては、あの薄っぺらな飛沫防止シートだけが対策でした。

その後は、ニューノーマルと言いながら、飛沫防止シートと空気清浄機を導入しただけの感染防止強化が行われています。しかし、その間にも運転手の感染者は増え続けました。

【話題】「ニューノーマルタクシー」導入が進んでいます

この「感染防止強化」も一部の車両だけです。例えば、多くの車両は飛沫防止シートのみで営業をしています。一台も導入されていない地域もあります。ニューノーマルどころか、ニューガラパゴス化です。

要するに、何もすることなく楽観視していて、こうした移動困難者が増加することも想定できなかったということです。

「移動で人を幸せに」という掛け声は耳ざわり良く、公共交通という名の下に事業者だけが「幸せに」なっているのではないのでしょうか?まるでカルトじゃないですか?

そして、上記Hondaの輸送車両(トヨタ自動車も開発していました)を業界で受注するなどしてコロナ感染者の輸送と運転手の安全の確保を怠ってきたのではないのですか?

現在行われている、感染者輸送に使用されている車両、いわゆる陰圧車を知っていますか?

日本交通コロナ患者移送用車両
日本財団支援によるコロナ患者移送用車両を運行を開始します

危険な職場

ビニールシートで分離された運転席と後部座席、これってあまりにも安易な方法ではないのですか?

この車両は日本財団からの支援を受けてます。東京都や各自治体からも「感染者輸送」として固定費、変動費が支払われているのに、少な過ぎる導入車両数と、この程度の装備なのです。だから不足する、だから運転手も感染する、だから移動で人が不幸になる。

Hondaが開発したような車両を、なぜもっと進化させなかったのですか?なぜ陳腐なニューノーマルタクシーなんてもので誤魔化したのですか?

完全隔離した運転席側と乗客側というスタイルは、コロナ感染症対策だけではなく、インフルエンザ、今後起こり得る感染症対策にもなるのではないでしょうか?

そして、乗客からの暴行対策にもなります。これまで本当に無策でした。あの防犯ボードだけで運転手は自らの身を守らなければならなかったのです。その結果、何人ものタクシー運転手が被害に遭い、中には命を失った人もいるのではないですか?

そんな危険な職場に誰が来ますか?

ボクたちの悲しみ

私たちは、コロナ感染者、陽性者の乗車を拒否したくてしているのではないのです。

乗せるシステムがないのです。安全な車両もなければ、安心して働ける環境もありません。そして「乗せなくてもいい」という運送約款まであります。

感染を隠して乗車する人たちの、感染者と分かっていても乗せる運転手の、悲しみ。その罪悪感とか自責感情とか、その気持ちを誰が知っていますか?

こんな生き難い世の中に誰がしたのですか?

結局自己責任で終わらせる、それが正しい社会のあり方なんですか?

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