タクシーの配車について、ルールと合理性と恣意性の間で

これからのタクシー配車は、スマホによるアプリ配車とオペレーター受電によるアプリ配車になります。

タクシー利用者が

  1. アプリ配車を直接スマホで行う
  2. 電話をかけてオペレーターにしてもらう
  3. 病院などの乗場のタブレットで行う

ということです。

地方の現状

地方のタクシー事業者が自社無線(配車)から離れられない理由は、例えば都市部のように「流し」ではなく「車庫待ち」という営業形態だからです。(流しても人がいないのですというのもありますが)

都市部ではGOやSRide、UberやDiDiといった配車アプリが主流になっている時代です。しかし、いまだに音声による無線配車をしている地方のタクシー事業者もあります。理由はシステムが高額だからです。

「車庫待ち」とは

その前に「車庫待ち」とは、会社の車庫や乗り場で待機して無線配車を受ける営業形態です。事業者がその業態で認可されているので、運転手が配車を受けない、という選択肢はありません。

ですから、配車率(配車回数/実車回数)が高くなります。例えば、配車率100%という日もあります。

そうなると、運転手も会社も配車が全てになります。運転手は配車を受けないという選択肢がない、とともに、配車が売上を左右します。要するに、生きるも死ぬも配車次第、ということになります。

映画 タクシードライバーに登場した東京タクシー?
映画『タクシー運転手 約束は海を越えて』より、東京のホテルと東京タクシー

複雑な配車ルール

無線配車が主体になるので、各社様々な配車ルールがあります。例えば、迎車場所の近くに空車車両がある場合でも待機場所から配車されます。ルールが優先され、迎車走行距離が長くなると言った、合理性を欠いた配車になります。

また、キャンセル優先、運転手の経験年齢での係数順で配車される場合もあります。利用者の利便性やコストより運転手の利益を優先させたルールも少なくはありません。

このようにルールが複雑化した理由は、配車が運転手の売上を左右するからです。不合理であったとしても、公平・公正さが求められたからです。

恣意性の排除

公平性のために、ルールが複雑化し厳格化されました。それは人による配車の恣意性を排除するという理由もあります。
(そもそも、恣意的な配車の代表例である、配車係の「お気に入りの運転手」に「良い仕事」をまわすという行為は、不正です。配車係と運転手の間に不正が行われて良いわけがありません。)

この複雑化し厳格化した配車ルールの設計は、恣意性の排除だけではありません。合理性を欠きながらも、同じ運転手ばかり配車されるという偏向性をも排除しました。恣意的な配車を偽装する行為の多くをも排斥できます。

(ややこしいですが、タクシーは動いているので、配車を受けた時間と配車をする時間をずらすことによって、ルールが適応される、その時間や場所を意図的に調整する、ということです)

例えば、距離順に配車するという合理性に基づく配車は、同じ運転手ばかりに配車される、ということが起きる原因にもなります。そして運転手の売上が偏ってしまうという結果になります。

そのことで、儲からない運転手が「恣意性」を疑うようになり会社に不信感を持つようになります。さらに他の運転手の待機時間を伸延させるということにもなり、全体のモチベーション低下につながってしまいます。

運転手の売上が偏ってしまうということは、会社の運営にとっては好ましくないことなのです。

無線係、配車係の専門性

音声無線の時代は声だけが頼りでした。つまり、配車係には専門性が求められました。地理に詳しくないとできない職業でした。そのことは運転手にも言えることでした。

この声だけ、見えないということで、善悪いろいろなことが起きていました。IT技術やGPS技術の進歩が、専門性を不必要とし、タクシーや地理の知識がなくても、出来るようになりました。ただ、専門性を必要としない、業務が見えるようになったことで違う問題も起きるようになりました。

見えなかった時代は、管理者や配車係の鶴の一声で終わっていたことも、運転手の不正も可視化され記録されるようになりました。

新しい専門性の登場

それ(可視化と記録化)により、さらにルールの公平性、いえ、ルールそのものを求めるようになりました。無線の時代は「そんなことはない」で終わっていたことが、「GPS」や「ドラレコ」なんて証人が出現したのです。

現在のGPS-AVMのような配車システムで配車が簡単になると思われて、いえ、その方向に進んでいたのですが、(人を介する)配車の見える化と業務の見える化が、配車をする人の正義を一段と希求したのです。

専門性を必要としなくなった分、人の気持ちが介在し始めたのでしょう。それは利用者も同じで「ナビがあるんでしょ」とか「電話番号が出てるでしょ」なんて、新しい正義の登場をみました。

利用者と運転手の配車に対する厳しい声によって、新たな違う専門性が求められるようになりました。専門性というよりも、思いやり、そんなものも含めた人間らしさの排除です。

人間らしさの排除、それこそアプリによる自動配車です。

配車ルールの廃止

複雑な配車ルールをなくし、人の感情を排除し、単純化したほうが良いのでしょうか。例えば距離順に配車するという方法です。ルールがあったとしても、待機順に配車してしまう、という単純な方法が、実は恣意性を排除し、専門性を求めないものになります。

倒産の原因

GPS-AVMの配車システムは数千万円という設備投資と、その維持管理費を必要とします。上述した人間関係に起因する問題も含めて、現行のGPS-AVMシステムから脱却しアプリ配車と外注化によりコストとリスクの軽減をしたいと事業者は考えるはずです。

それは地方の中小零細タクシー事業者も同じです。無線配車にかかる設備投資とランニングコストが経営を悪化させ、設備の更新時期に合わせて倒産・閉業・譲渡する、という事態が起きています。

 

豊橋駅東口 タクシープール
JR豊橋駅東口タクシープール コロナ渦の2022年8月。タクシーがいない駅、と言っても利用者もいない。

無線業務の外注化と一元化

このような倒産の原因になるコストとリスクを含みながら多額な無線配車の設備やその維持に投資するよりは、無線配車業務を外注化したほうが安全です。

もうひとつ考えられるのは、大手のタクシー事業者、例えば名鉄タクシーHDのように、愛知県内にいくつもの会社が散在しているような事業者は、無線業務の一元化にむかいます。名古屋一括方式や、すべて外注化する、という方法です。

あるいは、すでに行われていますが、一社だけではなく、タクシー会社数社共同で配車センターを運営する、という方法です。

北海道の配車を九州で受ける

外注化も、国内の企業に委託するのではなく、海外で受けるようになります。そうなると、さらに専門性の排除が必要になります。自動運転でタクシー運転手がなくなるよりも、その前に、配車係の仕事がなくなりそうです。

これからのタクシー配車

地方では駅や病院、繁華街のタクシー乗場からと、配車が主なタクシーの利用方法です。それは変らないにしても、電話による無線配車の比率は低くなるでしょう。

都市部では、タクシーは停めるものから、アプリで呼ぶものになっています。アプリ配車が主流になります。優先配車なんてもので、必ず乗れるものになっています。地方も都市部も配車コストの削減に注力し、収益率を上げようとします。

このように、今まで以上にアプリでの配車が主流になります。

配車代行業?

ただ、アプリが主流になったとしても、電話での配車はなくなりません。となると、スマホからのアプリ配車とオペレーターアプリ配車(オペレーターが受電し、かわりにスマホ配車をする)になります。結局、配車アプリを使用することになります。

これまで以上にアプリを制したものがタクシー事業を制するということなのです。

大手は、受電による配車だけでも、自前のもののしないと、手数料だけではなくて、顧客情報も、すべて持ち出される、という事態になります。企業として顧客情報の流出は避けたいでしょう?

そのことは「国防上の問題 1」でもあるのではないのでしょうか。すでにUberもDiDiも入ってるし、なんて考えています。中小零細は配車を捨てるという方向もあるでしょう。

いずれにしても、今、そこにある配車センターはなくなります。だって、そういう流れなんだもん。

ということで、自動運転の前に、そして遠隔点呼の前に、配車センターに異変あり、なのです。

タクシーを配車する2つの方法!今すぐ呼ぶにはどうするべき? | withTAXI(ウィズタクシー) | タクシー情報メディアタクシーを配車するには、タクシーアプリの利用や電話などの方法があります。本記事では、タクシーの配車方法やそれぞれの特徴、気になる運賃・料金や注意点など詳しく解説します。タクシーを利用する機会が多い方は、ぜひ参考にしてください
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  1. タクシー協会川鍋会長がライドシェア(Uber)反対の理由としてあげた「国防上の問題」をさす

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