タクシー乗務員の減少について
タクシー運転手の減少が問題化している。
8月2日付の東京交通新聞に「タク乗務員3000人減 5県6地域 コロナ禍1年半で」という見出しで、中部運輸局管内5県6地域(愛知県、静岡県、岐阜県、三重県、福井県、名古屋市)で、昨年2020年1月から今年6月までタクシー乗務員が3000人減少した記事が出ていた。
タクシー運転手3000人減少は多いのか?
「タクシー乗務員の実数に近いとされる」運転者証が、名古屋市を除く愛知県では341枚が減っている。そして、最も多いのは名古屋で1589枚も減少している。
その主な原因として「コロナ感染へのリスク回避で、高齢運転者からの退職希望が増えた」をあげている。そこから「若年層の定着もままならない」という分析をいしている。
確かにボクの知っている範囲においても、乗務員は減っている。この現象は数年前から問題視されていて、「高齢者(労働者年齢の高いこと)」と「若年層の定着」が業界の課題となっている。
*数字でみる中部の運輸2021 タクシー事業の推移の数字をグラフ化しました
愛知県内の現状
愛知県内ではこの5年間に1623人の乗務員が減っている。また中部運輸局管区内でも3402人減少している。確かにこのコロナ禍での名古屋市の1589人減少は多いにしても、他の地域の乗務員減少は想定内だ。
愛知県に限ると、5年間の年平均は約300人、今回の341人と比較すると、減少傾向にあった乗務員数に「コロナ禍」が多少影響した、と見るのが正しいのではないのだろうか。
退職理由
確かに、「感染リスクを恐れて退職」した人もいるだろう。しかし、高齢者の退職は「定年」や「体力的」理由が多く、年間一定数の退職者がいて、その予備軍がいる。「定着率」も悪い業界だ。労働力確保のために常にハローワークにも広告にも求人募集していた/いる、入れ替わりの多い業界だ。
(退職者の多い業界が入職者によってバランスを保つ)その入れ替わりの多い業界がコロナ禍で求人控えをしていた。コロナの感染リスクというよりも、コロナ禍での経営不振からの求人停止。それが原因で運転手が減った。さらに、雇用調整助成金で休業補償があったにも関わらず、予想以上に退職者がいた。しかし、それは年間平均程度、という見方が正しいのではないのか。
また、働き盛りの人たちや若年層は、このコロナ禍で「感染リスク」よりも賃金の激減が理由で退職した。歩合給での賃金は、コロナ禍で深刻な影響を受けた。中には貯蓄を切り崩して生活をしている人もいる。そのため他業種へ転職する。雇用調整助成金で雇用が守られたとしても、それはただ単に解雇がなかっただけ話だ。つまり、入職がなかった分、運転手が逓減していった、と言うことだ。
タクシー営収対2019年度比(2020年2月〜2021年6月)
逃げ場のない人たち
緊急事態宣言が発令される度に賃金が落ち込む。そんな生活が1年半も続いている。2019年度比50%、その2019年でさえ低賃金だったボクたちの生活はさらに悪化し、タクシー乗務員から退けず、人生からも退くことも出来ずに、エッセンシャルワーカーとして、踏みとどまっている、それだけの話のように思う。
たった3000人しかこの苦しみから抜け出せないでいる。ボクにはこの災禍の中でたった3000人しか減っていない、そう感じる。本当は抜け出したい人、抜け出したほうが良い人、も多いのだろうけれど、「高齢化」で抜け出す選択もできないでいる。
さらに、「若年層」はタクシー乗務員という貧困の沼から抜け出せなくなる。コロナが終われば幸せが訪れるのだろうか?相変わらず「貧困リスク」の高い職業として、3000人退職し3000人入職するような微妙なバランスで存在するのだろう……。