小寒、餅の件

七草もスーパーの棚で萎れている。独り分には多い量に躊躇っていた。「せりなずな、ごぎょうはこべら仏の座・・・」、義兄が自慢気に諳んじていたことが想い出される小寒の夜に、雑煮を食べる。結局、七輪も火鉢も買わずにフライパンで焼いた餅は、姉が送ってくれたもので、キチンとあの頃と同じ味と香りがした。
「七草セット」は買わずに、大根葉だけの雑煮を作った。記憶の中では、ネギしか入れないのが母親の雑煮だった。父がそれを好んだのか、代々そういう風にしていたのか、極めてシンプルだった。雑煮というよりも餅のおすましのようなものだった。
餅を喉に詰まらせて亡くなる人が毎年でるのだけれど、機械で、それも究極なほどにきめ細かく搗いてしまう市販の餅のせいではないのだろうかと思った。喉にマトワリつく。しかし臼と杵で、人の手によって搗いた餅だと、もっちりはしているのだけれどキレがあるので、喉に詰まらせるようなことも少ないと思うのだ。
今日や明日から仕事の人も多いのだろうね。街はまだ正月の気だるさの中にあっては重い時間が流れている。人はまだ酔いざめの気恥ずかしにゆっくりと歩を進めている。空は鉛色。街路樹のイチョウもやっと散り終えた。全くの冬。そうして冬色。
雑煮

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