運行管理者の質 – その事故、管理者に責任はありませんか?

タクシー事業には、車両と運転手、そして運行管理者が必要です。その運行管理者について考えてみます。

運行管理者になるには、国家資格である「運行管理者資格者証」の取得が求められます。その役割は運行の安全確保、というとても広範囲なものとなります。そしてそれは、事故で逮捕されることもある1、とても責任の重いものです。

運行管理者の仕事(タクシー編)近畿運輸局

運行管理の業務の中でも「点呼」が重要なものになります。その内容には次のようなものがあります。

  1. 車両の日常点検の実施結果の確認
  2. 酒気帯びの有無の確認
  3. 運転手の健康状態の確認
  4. 安全運行上の必要な指示

運行管理者の資質

体調不良・異常を見つけられない

中でも、3の「運転手の健康状態の確認」には専門的知識、経験も必要になります。それに、確認方法が点呼、つまり聞き取りだけでは不十分な場合もあります。

聞き取りだけでは難しいので、検温や血圧検査を行っている会社もあります。しかし、体温や血圧が異常値を示さない限り問題にはしないでしょう。ということもあって「確認」だけになりがちです。つまり、体調不良や異常が見過ごされることが多いということです。

自己申告しない、隠そうとする人たち

さらに、自身の体調不良を隠そうとする傾向がタクシー運転手、特に高齢者に見られます。理由は、次の3点です。

  1. 高齢者の雇用問題
  2. 出勤停止時の補償問題
  3. 職場の人間関係

1については、定年後からパートや期間契約社員ということから「契約を切られる」「勤務変更になる」という思いが、隠す動機になります。加えて「雇ってもらってる」と言う高齢者特有の心理状態も加わります。さらに、病院受診、その後から治療になると、良くて傷病手当、からの退職勧奨、解雇…。

2については、休んだ場合の賃金の問題です。「年休扱い」だとしても、その年休額が少ない会社もあります。さらに、出来高歩合給での「足切り」問題もあります(出勤しないと賃金が下がる)。

3は、先輩だから、あるいはベテランだから、という人間関係から起きることもあります。「人情」「温情」からの、なあなあ点呼になってしまうと言うことです。

タクシー事業がやらなければいけない3つのこと

これまで述べてきた課題を解決しない限り、真の意味での運行管理は難しいのではないでしょうか?その課題解決のために、次のような施策が考えられます。

  1. 運行管理者への教育(衛生管理者取得など)
  2. 運行管理者の権限(出勤停止命令)
  3. 体調不良を訴えられ、休める職場・労働環境、賃金制度

特に3については、体調不良を隠してまで働かなければならないような労働環境をなくすことです。つまり、体調不良を訴えることができ、休める労働環境があれば、防げる健康起因事故もある、と言うことです。

出勤停止の判断

このような環境が揃えば、運行管理者が出勤停止を出しやすくなります。運転手は不安があれば休める、管理者も帰宅を指示しやすくなる。こういった関係が必要ではないのでしょうか。

(もちろん、定期健康診断を人間ドックにし、脳ドックを加える、ということも必要でしょう)

運行管理者の質

結局、事故(特に健康起因)を起こさないためには、少しでも体調に不安がある運転手を出勤させないことです。そのためには、運行管理の方法、質、そして雇用の問題の整理が必要でしょう。そして経営者がケチらないことも重要です。(いえ、社長がケチだから起きている事故も多いはずです)(さらに、人間ドックの費用。義務付けて国の補助という方法もあります)

タクシー運転手が起こす交通事故の原因に、運行管理上ものもあるはずです。そして、事故の何割かは運行管理で防げたはずです。

そう考えると、運行管理に必要なのは「なんか変だな」と感じたら、出勤させないことができる仕組みです。そして、運行管理者に必要なのは止める勇気です。そのためには、その重圧や重責に見合った賃金も必要ではないでしょうか。

事故の原因が運行管理にあるのだから、管理者の(生活の)質を上げることも必要かつ不可欠なのです。事故が減らない理由には、管理者の質と生活の質が悪いということもあります。なぜならば、優秀な人材が集まらない、そして逃げていくからです。

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