Hさんからの便り
「期間工同士のつきあいなんていうのも、期間限定なんだろうねえ」と、ボクは思っていて「てか、オレってそんなに魅力もないのかねえ」なんて少し自己嫌悪に陥ったり、「用済みになったら話もしたくないのかねえ」といじけたりしています。
Hさんとは休憩所でよく話をしたし、仕事の帰りは待っていてくれてバス停まで一緒に行ってました。少し前に満了になったのですが、パチンコ好きのHさんはそれまで負けた分を取り返すと言って、その資金としての満了金や慰労金が入金されるまで田原のビジネスホテルに滞在していました。
実はHさんはトヨタ期間従業員経験者で、前回も田原工場勤務で、やはり今回と同じように満了後ビジネスホテルに泊まってXO（パチンコ屋の名前です）と勝負したそうです。毎月の給料をほとんどパチンコで負けて、そしてその悔しさから更に満了金や慰労金までつぎ込んでしまうというようなことは、なにもHさんだけではなくて多くの人が経験したことなのかもしれません。
多重債務者の何割かはパチンコによるものだということを聞いていますが、こういったHさんの行動を見ると「なるほどなあ」と思いました。
最終日のバス停でHさんはボクにそのことを宣言して「満了金が入ったら焼肉でも行きましょうよ」と、入金するだろう予定日の次の土曜日に逢う約束をしました。このブログで「約束があるので」とか「約束が延長になった」とだけ書いたことがあったのですが、実はそれがHさんの約束のことで、「約束があるので」と書いた日がその満了金入金予定日でした。しかし急遽「来週に延期してくれませんか」との連絡が入って、「約束が延長になった」のでした。
そしてその延期された約束の日にボクは約束の場所に行きましたが、結局Hさんは現れませんでした。ボクはだいたいのことは想像できました。Hさんの性格から恐らく満了金慰労金すべてを摩ってしまって、ほうほうの体で田原を去ったのだろうと。
ボクはHさんへの怒りなどは感じませんでした。むしろ「どうしてそれぐらいのことで逢おうとしないのかなあ」「焼肉ぐらいならオレのほうが奢ってやったのに」なんて思っていました。そうしてボクはHさんの期間工としてのすべてをつぎ込んだパチンコ屋に行きました。「もしかしたらかかっていて…」なんて考えたのですが、やはりそこにも姿はありませんでした。
「牛すじカレー」「かきカレー」は特に美味かったよ。
そのことがあった次の週にHさんから荷物が届きました。手紙なんかは入っていませんでした。無言の荷物の中身はレトルトのカレーとお菓子でした。ボクは「Hさん、手紙ぐらい入れとけよ」なんて思ったのですが、きっと何度か書いては捨てたのでしょう。そして「Hさん、もうパチンコなんか止めて、いつも話してくれた温泉に行こうよ」と思いました。それは、Hさんが昔、会社勤めをしていた頃に慰安旅行で行ったという岐阜の温泉なのですが、その頃のHさんはまだパチンコも知らず、夢もある若者で、そして今のような生活を送っているとは思いもしなかった頃の話で、その話をするときのHさんが、今思うと一番楽しそうだったように思います。
「どこでどう間違っちゃたのかなあ」
そんなもんかもしれないですね。
みんな「だらしないヤツ」とか「ダメなヤツ」なんて思っていたのかもしれないけれど、ボクは最後のプライドを捨てなかったHさんにまた会いたいと思っているんです。「きっと間違ったのはHさんじゃないかもしれないよ」なんて思っています。
今時は手紙、ラブレターなんてあまり書かないかもしれないですね。
きっと言い訳みたいな文章になるから入れなかったのだろうと思っています。給料が出たらすぐにパチンコ屋に行って、負けたら工場と寮の食堂だけで生きていましたから。休日は食堂が開くのを待って食べて、閉店前に食べるという、一日夕食２食という生活でしたからね。
それにあまり人つきあいもうまくなかったので、それがなんだかねえ。
そうですね。映画になりそうですよね。人の数だけドラマがって、期間工なんてのは内容が濃いですからね。多くの人たちは「腹一杯食えてパチンコできりゃ、それが幸せだ」なんて言っているかもしれませんね。
＞きっと何度か書いては捨てたのでしょう。
感傷的な人間なんで、ぐっと来ました。昔、女の子からもらった手紙に、何度か書いて、やっぱりやめて、3ヶ月くらいたってから、出さなかったその手紙と一緒に、送られてきたのを思い出して。
勝ち組とか負け組みとか、ワイドショーや週刊誌で躍っているような、薄っぺらくて単純な二項対立じゃなくて、人の数だけドラマがあるんだよなぁと、しみじみ感慨に耽ります。
なんか山田洋次監督あたりに映画化して欲しいですね。うちらの悲哀を、塀の中の懲りない期間工とかなんとか、そんな前時代的なタイトルで＾－＾；
farrellさん、こんばんは。
ボクもね、書きながらなんだら辛くなりました。「バカなヤツ」ですまされないような感じでね。
「誰もが通ってしまう道」かもしれないですね。自分の信じた道をまっしぐら、そして挫折して…。生きているうちには、こんな「負け」がいくつかあって負けのこんだ人生だってあるのだろうと思っています。
一発逆転、もうそれしかないと思っている人も居るでしょうね。そして、そんな生き方しか出来ない人もいるのだろうし。
人の表現方法ってのはいろいろあって、悲しいときに泣かなければいけないということもなく、楽しいときに笑わなければいけないということもないのだろうと思っています。
ボクの知り合いは、父親の葬式にも出なくて、回りからはずいぶんと非難されたのですが、それでも本人は随分と悲しんでいて、ボクに「これがオレだから」と言ったことがあります。
余計なことを書きましたが、ボクたちってどれだけ隣の人を理解しようとしているのか、なんて考えたのですよ。言葉ではなんとも言えるのだけれどね。
なんだか今までで一番グッとこみ上げてくるものがありました。どこでどう間違ったのか。奪われたもの、奪い取ったもの、それは一体なんなのか。
かつては希望に満ち溢れていたのに・・・。
それはギャンブルじゃなくても、誰もが通ってしまう道なんでしょうね。その無言の荷物にＨさんの気持ちがこもっていたように感じました。
＞モルトさんへ
お久しぶりです。そうでしたか。健康診断で引っかかる人も多いと聞きます。それだけ他のメーカーより身体に負荷がかかるのがトヨタなのかもしれないですね。
ホンダは良いと聞きますね。もう一度期間工になるのなら、九州のホンダ熊本製作所が募集していたらそこに行きたいと思っています。
職場によっては満了まで身体の痛みが取れなかったという人もいるようですし、ボクも週末が近づくと痛みが出てきます。それが仕事だと言ってしまえばそれまでなんですが…。またコメントして下さい。
＞combiさんへ
そうですね。資金提供しているようなもんですからね。トイレを借りに行くとか、寒い日は暖を取り、暑い日は涼みに行くというぐらいにしたいですよね。ま、それでもあの騒音はきっと何かの効果があるのではないかと思っています。
＞keiさんへ
パチンコ屋に負ける→借金する→女性なら風俗、男なら期間で終わるのなら良いですけれどね。秋田の連続児童殺人事件のように自分の子供まで殺してその災害保証金を狙うということまで起きたり、多重債務者となっての強盗事件や横領事件など、パチンコに端を発する事件は枚挙の暇がない状態ですよね。
ま、ただ給料の範囲内でやっている分には破滅もないかもしれませんが、それもちょっとしたことで変わるかもしれないですからね。
自分はパチンコを含むギャンブル全般をキッパリやめてしまったクチですが、「勝つまでやる！」という気持ちも判らないではないです。射幸心の煽り方が尋常ではないですから･･･
今ではパチンコ屋の前を通っても毛の先ほども興味が沸きませんが、やっぱり嵌ってた時期は「勝つまでやる」って気持ちがあったように思います。
楽しみの範囲でならパチンコ等のギャンブルも良いとは思いますが、給料全部つぎ込んでしまっては辛いですよね･･･
他に楽しみを作ることが出来れば良いんでしょうが。
そんなにお金がかからない趣味だって色々ありますしね。
Ｈさん、キッパリとパチンコやめられるといいですね。
パチンコのために働くというのは、イコール、北朝鮮に貢いでいることになるねですが、つぎ込んでいる人たちにはわからないでしょうねぇ･･･。
まぁ、自分で稼いだ金を、どう使おうと本人の自由ですが、むなしくないのでしょうか?
全てのギャンブルに言えることですが、遊びと割り切れる範囲内なら、別に構わないと思います。でも、それそのものが目的になり、勝つまでやる、というのは、遊びではないですからね。
遊びのついでに、時々勝ってしまう、というのが理想のような気がしますけどね。
まぁ、これを、うまく操作して、カモの｢次は勝つ!｣という闘争心を心理的に演出しているんでしょうけど、テラ銭が遊ぶ前から差っ引かれている仕組みを理解すれば、やるだけ無駄と割り切れるのですが･･･。
久しぶりに書き込みます。
以前、トヨタに行くと書き込みましたが健康診断で引っかかり２日くらいで名古屋を去りました。
残念でしたが、今ホンダで働きはじめ、落ち着いてきた所です。
体力には自身があったつもりですがやはり仕事に慣れるのにもう少しかかりそうです。
もし、トヨタで働いていたら仕事が勤まっていただろうか疑問です。
とりあえず３ヶ月がんばってみます。
またHPのぞける機会があったらきます。