稲葉神社:境界を守る塞の神と美しい童子の伝説
豊川市御津町金野の稲葉地区。かつての村の入り口にあたる場所に、古くから地域を見守り続けてきた「稲葉神社」が静かに鎮座しています。
境界を守り、災厄を遮る「塞の神」としての歴史
稲葉神社には貞享4年(1687年)をはじめ、江戸時代の古い棟札が残されており、そこには「道祖財御神」「道祖神」の名が記されています。
道祖神は「塞(さい)の神」とも呼ばれ、村の入り口や辻(交差点)に祀られる境界の神です。かつてこの地が「灰野村」と呼ばれていた時代、ここはまさに村の境界であり、外部からの疫病や悪霊といった災いを防ぐ重要な守り神として崇められてきました。
祭神「太田神」と猿田彦神の繋がり
現在の祭神は「太田神(おおたのかみ)」として祀られています。太田神は伊勢の地主神であり、天孫降臨の道案内をした「猿田彦神」の末裔、あるいは同一の神格とされています。
「道開きの神」である猿田彦神は、同時に最強の塞の神としても信仰されており、道祖神としての歴史を持つこの神社にふさわしい神徳を備えています。
美しい童子が告げた「道祖神」の霊験
この神社には、承応3年(1654年)に伝わる不思議な伝説が残されています。
ある年の10月、水のしたたるような美しい童子が突如として現れ、「この森に祠を建てて我を祀れば、無病息災と子孫繁栄を約束しよう。我こそは道祖神である」と言い残し、西へと消え去ったといいます。村人が早速祠を建てて祀ったところ、その霊験はあらたかで、多くの参拝者で賑わったと伝えられています。
古社の面影を留める静かな境内
現在は、北の山中に位置する白山神社の飛地境内社となっています。かつて「老樹が鬱蒼(うっそう)と茂る」と評された社叢(しゃそう)の大部分は失われましたが、今も残る老木が、往時の古社の面影を静かに現代に伝えています。
- 御祭神 太田神
- 例祭日 12月28日




稲葉神社の地図・行き方
「金野 稲葉神社」神社を中心としたる宝飯郡史 – 国立国会図書館デジタルコレクション.
「地図」御津町史 資料編 – 国立国会図書館デジタルコレクション.