宝円寺のシダレザクラ:街道一の銘木が彩る山里の春
2026年4月8日
豊川市上長山町に位置する宝円寺。その入口には、時の流れを静かに見守るように、樹齢400年と伝わるシダレザクラが佇んでいます。この桜は、宝円寺の開山和尚である三巘有玉(さんけんゆうぎょく)和尚が手植えしたものと伝えられ、現在は愛知県指定天然記念物として大切に守られています。
志賀重昂が称賛した「街道一の銘木」の風格
この桜が広く世に知られるようになったきっかけは、明治38年のことでした。当時の高名な地理学者であり衆議院議員でもあった志賀重昂(しが しげたか)が、この地を訪れた際に「街道一の銘木なり」と称賛した記録が残っています。
このシダレザクラは、高さ4.7メートル、枝張りは東西15メートル、南北9メートルにも及びます。そして、歩道や車道を優しく覆うように枝を伸ばしています。そのおかげで、参拝者は可憐な花びらをすぐ間近で愛でることができ、春の息吹を五感で楽しむことができます。
荒波を越えて生まれた「異形」と「可憐」の対極美
宝円寺のシダレザクラの最大の特徴は、その独特な幹の形にあります。かつては一本の太い主幹でしたが、昭和54年(1979年)の台風16号によって倒伏するという試練に見舞われました。しかし、その後に形成層が力強く発達。現在は主幹が二つに裂け、東西に分かれて倒れ込むような力強い姿へと変貌を遂げました。
見る角度によって表情を変える「異形」の幹と、風に揺れる繊細な花や葉。その対極にある美しさは、訪れる人々の心を捉えて離しません。また、隣接する松源院の桜とともに、本尊の阿弥陀如来が鎮まる静かな山里を、桃色の霞で優美に染め上げています。






宝円寺の地図・行き方
「宝円寺」新訂三河国宝飯郡誌 – 国立国会図書館デジタルコレクション.
愛知県指定文化財調査報告 第3集 – 国立国会図書館デジタルコレクション.