五井の大シイ:水不足の苦難と共生が生んだ巨樹の群生

蒲郡市五井町の八幡社北側から大池西側にかけて、シイ(椎)の巨木が立ち並ぶ群生地があります。巨木が人里離れた深山ではなく、市道沿いに悠然と枝を広げています。その姿は、古き良き街並みに深い奥行きと歴史の重みを与えています。中には幹周りが7メートルを超えるものもあり、その存在感は訪れる者を圧倒します。

水不足の歴史とため池の造成

蒲郡は三方を山に囲まれ、海に向かって傾斜が続く地形のため、雨水がすぐに流れてしまう「乏水性」の高い土地柄です。かつての人々の水不足に対する切実な思いは、聖山や二つ岩に残る雨乞の神事からも伺い知ることができます。

五井も例外ではなく、正徳元年(1711年)の記録によれば、村中の困窮を救うために用水ため池の掘り起こしが行われました。この時に造成されたのが、現在も残る大池、八幡池、中島池、新池です。(大池については、徳川幕府の造成した「三河の三池」のひとつです)

人々の苦労が育んだ「共生の証」

五井の大シイが今も健やかに生育しているのは、これらため池の近くであり、土地に豊かな保水力があったからに他なりません。いわば、水に苦しんだ先人たちの治水の努力が、結果としてこれら巨木を大きく育てたとも言えるでしょう。

また、五井山中には大杉や大山桜などの大木も現存しています。これらは、地域の人々が数百年前から自然の重要性を深く理解し、山と人との共生意識を育んできた確かな証です。厳しい自然環境と向き合いながら、守り継がれてきた豊かな緑がここにはあります。

五井の大杉 – 五井町山田 – 蒲郡の旅

五井の大シイの動画

五井の大シイ(大池)の地図・行き方

長泉寺(八幡社)北側の群生地は、五井農場由来碑の道路反対側です。

八幡社(五井) – 安達盛長が再建しました
長泉寺 – 三河七御堂の一角です

参考文献
五井町文化財調査委員会編.2023.『五井の歩き方』.三恵社.
蒲郡市誌 本編 – 国立国会図書館デジタルコレクション

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