チンチン石
2026年2月18日
八幡社の境内に鎮座する金山神社には、「チンチン石」と呼ばれる巨大な石がご神体として祀られています。叩くと「チンチン」と澄んだ金属音が響くことから、別名「金鳴石(かななりいし)」とも呼ばれます。現在は稲荷神社や津島神社などと共に合祀され、直接触れることはできませんが、かつては屋根のみを設けた簡素な場所に金槌と共に置かれ、誰でもその音を確かめることができたと伝えられています。
村境の争いと「動かぬ石」の伝承
この石には、五井村と近隣の牧山村、平田村による所有権争いの歴史が色濃く残っています。もとは国坂の村境にあり、「叩くと金持ちになれる」との噂から、牧山村の者が盗み出し八王子社や沼に隠した、平田の人が持ち帰ったなどの逸話も残ります。実際、享保4年(1719年)には五井村と牧山村の間で山境や入会地(いりあいち)を巡る争論が起きており、石を巡る伝承はこうした実情を反映したものと考えられます。
先人の知恵と時代の移り変わり
物理的に「動かせないほど重い」この石は、単なるご神体としてだけでなく、変えてはならない「村境のルール」を象徴する役割も果たしてきました。先人たちは、石の重さを「動かぬ裁定」として利用し、境界争いを収める合理的な知恵としていたのでしょう。 明治22年、各村が合併して豊岡村となり、境界を巡る争いが必要なくなった現代。石はかつての役割を終え、今は静かにご神体として鎮座しています。




地図・行き方
参考文献
五井町文化財調査委員会編.2023.『五井の歩き方』.三恵社
伊藤天章著;蒲郡新聞社編.昭和51年.『蒲郡風土記』.再版.蒲郡青年会議所
蒲郡市誌 本編「五井・牧山 弍給の山論」- 国立国会図書館デジタルコレクション
