熊本にいた頃 – 6年目の祈り 2022年4月20日 タクシー物語 熊本にいた頃。湯らっくすがまだ、今ほど有名ではなく、運行代行をしていたKちゃんがそこをねぐらにいていた頃、ボクはまだ、人生をそれほど難しくも考えていなかった。 通算で10年ほど住んでいた。愛知県へは熊本から来た。そして期[…] 続きを読む
豊橋カレーうどんで考えたこと。 2017年6月28日 タクシー物語 こんな雨の日にも後藤さんはやって来て、 「K、ちょっと頼むよ」 「いいですけど、またパチンコにでも負けたんですか」 「いいや、ちょっと」 「ちょっと?」 「まあ、飲みに行くか」 「良いですよ」 「この金でさあ、まあ、オレ[…] 続きを読む
血煙荒神山 2017年6月4日 タクシー物語 なにが面白いのだろうか、なんて思っていた。 父は浪曲や講談を聴くのが好きだった。ラジオから流れる「ヘンテコリンな声」を、ボクたちは不思議に感じていたし、なにが面白いのだろうか、なんて言っていた。 「吉良の仁吉」なんて名前[…] 続きを読む
雪だるま 2017年1月17日 タクシー物語 霜も降りない土地で育ったものだから、雪だるまを作ったという想い出は、・・・、しばらく想い出していたのだけれど、どうもないようだ。何度か雪が降ったことは記憶しているのだけれど、黒潮が流れる暖かい海からの風が、積もることを邪[…] 続きを読む
成人の日に 2017年1月9日 タクシー物語 成人になる前から酒を飲んでいた。20歳になったら、少し堂々と酒を飲むようになった。 玉ちゃんやGさんに出逢ってから、それにくたびれた恋愛をするようになってから、斜めに構えて酒を飲むようになった。いつも小銭を抱えて、カウン[…] 続きを読む
色酉鶏 2017年1月4日 タクシー物語 「あの中には何が入ってるの?」 まだ子供だった姪がトランクの中身をたずねてきた。ボクが「ライオンが入ってるぞ」なんて言ったもんだから、逃げ出し母親の後ろに隠れて泣き出した。もうずいぶんと昔の話、大きめのトランクは成田から[…] 続きを読む
希望 2016年11月3日 タクシー物語 いいえ、ボクたちに必要なのは希望なのです。 そうして、この国が失くしてしまったものも希望なのです。 豊かさとは、どれほど希望がポケットに入っているか、あるいは、入るか、ということなのです。その希望には、根拠なんてものは全[…] 続きを読む
観覧車 2016年9月7日 タクシー物語 雨の降り始めた観覧車でボクたちは霞む景色を見ているだけでゆっくりと流れる時間とは反対に閉園の時間と見つからないコトバに胸の鼓動を早めていた16時の誰もいない遊園地に夏の終焉を知る9月初めののんほいパークにいた。デキゴトは[…] 続きを読む