タクシー運転手の最低賃金問題について考えたこと
タクシー運転手は歩合給が多いようです。そして、私たちの賃金は「知恵の結晶」と言われるように、とても複雑です。
歩合給と言っても単純に、売上×歩率 というだけではなく、足切という基準を設けて、それを越した分にたいして歩率で加給される仕組みもあります。
歩合給制
タクシー運転手の最低賃金を考える前に賃金について概観します。賃金はおおよそ次の式によって求められます。
売上×歩率=賃金
例えば、
歩率50%の時
売上400,000円では
400,000×0.5
=200,000円(賃金)になります。
賃金制度については「A型、B型、AB型賃金とはなにか」を参照してください。
最低賃金補償
問題は、賃金が最低賃金に満たない場合です。
例えば、上の条件で売上320,000円、労働時間が172時間(所定内)の場合は、計算式に代入すると、
320,000×0.5
=160,000円
になります。しかし、最低賃金時給1,000円の地域では、172時間×1,000円=172,000円を支払わなければなりません。
172,000円-160,000円=12,000円、この12,000円を会社が補償する、というのが、最賃補償制です。
最賃割れというからくり
では、歩率60%の会社ではどうでしょう。
320,000×0.6
=192,000円
最賃割れはなくなります。
基本給の問題
歩合給制賃金のもうひとつの知恵の結晶は、基本給の金額です。
例えば、基本給が180,000円だったら、歩率50%足500,000円という同じような賃金制度でも、すでに最低賃金を基本給が満たしているので、最賃割れするということがなくなります。
180,000+{(530,000-500,000)×0.5}
=195,000円
あるいは
180,000+{(400,000-500,000)×0.5}
=180,000円
賃金制度の責任
同じ売上なのに、最賃割れしたりしなかったり、というのは、運転手の責任というよりも、賃金制度の責任なのです。
同一地域同一運賃なのに
また、この歩率も、事業者ごとに違います。
同一地域(交通圏)では同じ運賃が適応されています。(自動認可、公定幅などの違いはありますが)
運賃は同じ原価計算で求められています。(適正事業者という選定基準はありますが)
ということは、同じ歩率で同じ賃金制度でないと整合性がないのではないのでしょうか。
同一地区同一運賃なのに、各事業者の(原価構成比73%の)賃金制度が大きく違うってことが問題。最賃割れ(最賃補償)問題については、歩率と基本給が適正か、ということが問題。賃上げこそ労働組合運動。となると、歩率、基本給の増額を目指すべきです。
基本給=>最賃、なら全て問題なしなのではないのでしょうか?
賃金制度の犠牲者、それがタクシー運転手の最低賃金の問題です。